障害者雇用 労組の集会に参加してみる
ある日の終業時間。
なんかみなさんソワソワしているなと思ったら、隣の席の若い男性社員が席を立ちながら声をかけてくださった。
「労組(労働組合)があるんですけど、行きますか?」
おー、なんてことだ、面白そうじゃないか!
ストライキでも起こすのか!?(←単純思考)
その男性は続けて、「労組って入ってますか?」と聞いてくださったので、「入ってると思います」と答えると、目をキラキラ輝かせて「じゃあ行きましょう!」と誘ってくださった。
というわけで、ビル1階の会議室に他の社員たちと一緒にぞろぞろと向かったのだった。
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この企業は労組がけっこうなパワーを持ってるなという印象を受けていたのだけど、配布されたチラシを見てみると、ボーナス額アップを会社に訴えたらそれが通ったりとか、産休・育休を取りやすくする制度にしたとか、すべてこの組合のおかげだったのだそう。
社員が積極的に会社に訴えかけていることがありありと伝わってくる。これは面白そうだ。私の好きな人間観察には持ってこいである。
最初に直近の交渉の結果が話されて、今回もみなさんのアイディアをどんどん出してくださいということになった。
アイディアというか、不満をぶちまけてくださいの方が近い気がするが、それはそれで良いのだろう。
4〜6人ごとにグループが組まれて、それぞれのテーブルの真ん中にはA3の用紙と大きめの付箋が置かれていた。どうやら各自でどんどん不満な点を書いてペタペタと貼っていくということだった。
そんなに出てくるのかな?と思っていたら、社員たちはどんどん貼っていったり、うーんと腕を組んで考え込んだり、けっこう真剣だった。
その後も出るわ出るわ、付箋が次々と貼られていったので、むしろすがすがしい気持ちになった。
私に対しても「外部から来られたので色々指摘してください!」と声をかけてくださるくらい、みなさん熱心だった。
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あっという間に時間が経って、いよいよ発表ということになり、グループの代表者が意見を述べていった。
仕事の愚痴のようなものもあって、そのたびに笑いを引き起こしたり、うんうんとうなずく人もいた。
挙がった声としては、育休の社員の分、派遣を雇うなど対策をとってほしいとか、他の企業ではもっと在宅が多いとか、社会の潮流に乗って副業OKにすべきだとか、さまざまだった。
ふだん柴犬のように忠実に働いている姿を見ていたので、私としては彼らの心の奥にある不平不満を知って楽しかった。
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もうひとつ。今回の感想。
わいわい賑わっている彼らを見ていてつくづく思ったのだが、労組は、企業にとっても労働者にとっても、両方にとって、貴重で欠かせない組織なのだろう。
労組の集まりで彼らは普段から溜まっている鬱憤を晴らしていて、終わるとすがすがしい表情を浮かべていた。つまり労組でストレスを発散して、翌日からスッキリと働くことができる。これは会社員にとっても会社にとっても良いことだろう。
また意見を出し合うと「そうそう!それな!」と同調している場面もたくさんあった。ふだん一人で思っていたことを他の社員とも共有できて、ホッとするのだろう。さらには仲間意識を高めることもできるのだろう。これによって会社内でコミュニケーション取りやすくなるのだろうし、仕事しやすくなるのだろう。まさに好循環である。
こんな風に労組が進められていくことで、会議の機能としても良い効果が出ているのだろう。労働者集団のガス抜きとチームワークの形成が上手にできているのだと思われる。
もしこういったガス抜きをせずに労働者が一人でそれぞれ動くと、おそらく感情的になってしまったり、言ってることが破茶滅茶になってしまったりするだろう。
一方でこういう労組なら、会社に対する不平不満が上がっても、最終的にはきれいな文章にして立ち向かうから、それなりに冷静である。聞き取りやすいし、論理的に説明できるだろう。
そしてそうなると会社側も対応しやすいし、同じく冷静に聞き入ることができる。
冷静な組織と冷静な組織のあいだで、品の良い議論ができるのだろう。
そのほうが、労働者の意見が通りやすい。
そのほうが、会社も対応しやすい。
労組という、ガス抜き中間媒体があることで、会社と労働者との間でまともな議論が成立している。
その意味で、労組は上手く機能しているのである。
会社にとっても労働者にとっても、労組は欠かせない組織かもしれない。
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あとから給与明細を見たら、私は労組に入っていなかったことが明らかになった(笑)
まあでも、とても貴重な経験ができた。
社会をこうやって観察して、いろいろ考えるのは楽しい。
働くと、お金がもらえるだけでなく、こういう人生経験もできるのである。
働いてツライことばかりではないなと思う今日この頃である。
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