DRAGON QUEST! な酒
「幻の酒」と言われるお酒はいくつかある。あまりにも人気があって引く手あまた、極端に生産量が少ない、市販されてなかったり、販売方法が限定されている。等々、理由は様々。
そしてこのお酒は、過去に、漫画「もやしもん」に登場して人気が出る。その後、造り手であった酒蔵のご主人が急逝。しばらく生産が途絶えているうちに知る人も少なくなる。近年、ご主人の遺志を継いだ奥さんがこの銘柄を復興。昨今の日本酒ブームもあって、人気が再燃。加えて、小さな酒蔵、流通も一部の酒屋さんだけということで、一気に入手困難酒になり、「幻の酒」の一つに数えられるようになった。。
和歌山県は、高垣酒造さんの「龍神丸」。その純米、吟醸、純米吟醸だ。
「幻の酒」といっても、美味しくなければ意味はない。人気があっても、ほんの少ししか生産されていなくっても、美味しいとは限らない。また、自分の好みに合っているとも限らない。
ではこの「龍神丸」はどうか?実際に飲んでみると。。「メチャクチャに美味しい!!!」。まずは基準となる「純米吟醸」の味は、どちらかと言えばクラシックな造り、米の旨みと甘さと香ばしさを全面に感じる、ナッツやチョコレートのような風味もある。そして中盤に来るふくよかな水の美味しさ、最後にふわっとくる苦味。生原酒の18%のボリュームも厚めに乗っているにも関わらず、ついついもう一杯と盃を重ねてしまう。常温以上オススメ。冷やすと少しだがスッキリとして、淡いフルーツ感も出るので、そのような系統がお好きな人は冷やしても悪くはないだろう。実に美味しい酒。全体にスッとした爽やかさがあるのも良い。
これは私の分類による「水の美味しさを感じる酒 TYPE2」。すなわち、「飲んでいる間にじわーっと水の美味しさが広がり染み渡る感じ」である。和歌山県でも高野山の麓、「空海水」と呼ばれる名水を仕込み水として使っているからか。。お大師さんのご利益だ。
そして限定酒でもある、「吟醸」(アル添)、味の方向性は「純米吟醸」と同じだけど、アル添の効果で、全体にスッキリと仕上がっている。純米吟醸が全ての味を全体にゴリゴリと押してくるように主張するのに対し、「吟醸」はその押しが弱め、途中でスッと抜けるように軽くなる。生原酒18%のアルコール感のピリ付きが少しあるため、これは寝かせた方がさらに美味しくなると思うし、アル添で酒質が安定していると想像できるので、古酒熟成するなら、これが一番向いているかも知れない。
米の磨きを60%にした「純米」は、「純米吟醸」に酸味と雑味を足して薄めたような感じ。味の方向性は変わらない。どの酒も燗しても美味しいと思うけど、この「純米」が特に燗酒向きだと思う。これら3種類はお値段もそんなに大きくは変わらないので、最初は「純米吟醸」をオススメしたい。それが基準であり、造り手の方もこの味を求めて造っているんじゃないかなあ〜と思う、これは想像。
個人的に心配するのは、「味の安定性」。小さい酒蔵さんの少人数運営。今後もこの味をコンスタントに出していただければありがたい。
酒蔵の地元和歌山の小さな酒屋さんでも、このお酒を入手すべく全国から押しかけたお客さんが列を成すという。。ドラマチックな酒蔵のストーリーも含め、「そして伝説へ。。。」日本酒ファンが探し求める「龍」、まさにドラゴンクエストだ!
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