”それでいい、わたしの人生”
”少しの野菜とくだものと、そしてハグとキスがあればそれでいい、
わたしの人生。”
2010年頃から長い間
掲げていた、わたしのタイトルがこれだった。
その生活は
ほんとうに
シンプルなもので
でも質素だったが
地味ではなかった。
わたしの料理のひとつのルールに
どこまでもシンプルに、
でも決して野暮ったく地味にはしないというものがある。
それはいつも、
洗練されていてほしい。
それはいつも、
美しくなければいけない。
それがあって
初めて
その一点は
ほかにはなにもいらないと思えるように輝く。
この写真は
2011年頃に住んでいた、ブルックリンのパークスロープという場所の
アパートで撮った
ある日の朝ごはん
ただ、くだものを
竹のボウルに盛るだけ
ただ、それだけ
くだものの皮をむいて
へたをとって
切って
そうしてもるだけ
そしてそれは、
わたしにとって
向こうからカメラを持ってきて
静かにテーブルの上に載せて
何枚も写真をとらずにはいられないものだった
どこかをていねいに
とてつもなく時間をかける生き方をするには、
そのほかの、すべてのどこかを
ていねいに
削っていかなければいけない。
そうしてたどり着く、
ミニマムな美しさが存在する。
そうしてその小さなくだもののボウルを抱えて
”少しの野菜とくだものと、そしてハグとキスがあればそれでいい、
わたしの人生。”
とわたしはノートに
万年筆の汚い字で、
走り書くのだ。
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