なんと呼ぼう?
ニューヨークのマンハッタン、10月末、
ハロウィンのパレードが終わった瞬間に
街は一斉にクリスマスに表情を変える
11月1日から、12月の末までの
その静かに華やいでいく時期が
わたしが一年で最も好きな季節だった
切なくて、切なくて
意味もなく包まれる胸の苦しさとか
その締め付けられるような切なさの正体が
悪者じゃないことを知っている感じとか
期間限定で聞こえてくる音色が
わたしをどこまでも”今”に惹きつけた
ストリートの脇に次々現れる、もみの木売りと
どんどん冷たく凍っていく、あたりまえに零下の世界
グレーと焦げ茶色の暑苦しい街並みが
白く 輝く時期
不思議と 寒くはない
休みのたびに
セントラルパークの南側に繰り広げられる
59丁目のホリデーマーケットに出かけて
恋人と手をつないで歩いた記憶
ホットアップルサイダーの
甘くて
優しい、スパイスの匂い
世界が愛おしくて、
ただ、涙がにじむ
意味もなく、涙がにじむ
それをわたしは、
なんと呼ぼう?
2018-9-12追記
NYの冬は、本当に不思議と寒くない。
氷点下30度で、ごうごうと吹雪いていても、いつも、その寒さが厳しくなればなるほど、私の内側にはぽっと火がともるように暖かい気がした。
新しい恋人に、どの季節が好き?と訊ねた。
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