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どこへもいけない、そんな気がした
カレールーと白米、
ジャムとトースト、
ビールと唐揚げ。
文字だけで美味しい。文字だけで心踊る。
それでは『映画と音楽』はどうだろう。
文字だけで楽しい。文字だけで体踊る。
この二つのカルチャーは、切っても切れない間柄。これぞ旨味の相乗効果、と言いたい。彦摩呂と肩組みながら力説したい。だからと言って、映画好きなら音楽好きっしょ?みたいな問答無用のマウントを取るつもりはない。
ラブ映画!ラブ音楽!それって掛け算したらドリカムのLOVELOVELOVEになっちゃうじゃ〜〜ん!くらい頭の悪い私が先週の23日に足を運んだのは、渋谷TOEL。
Homecomingsとサヌキナオヤによる映画と音楽のイベント『Homecomings & Naoya Sanuki presents“New Neighbors Vol.4”』
公式ホームページより引用
過去3回は京都・京都みなみ会館で行なわれており、泣く泣く諦めてきたこの企画。4回目となる今回、なんとおいでやす東京。遠路はるばるよくぞ来て下さいました、とポスターに向かってこうべを垂れた。上映される映画は『ゴーストワールド』大感謝が止まらない。ホムカミのライブを見れるだけでなく、ゴーストワールドをスクリーンで見れちゃう。ナードババア大感謝が止まらない。
主人公イーニドやレベッカに、共感してしまうタイプの女が私だ。
ダサくてキュートなファッションセンスを持つ彼女たちが可愛い。行きつけのファミレスで世の色んなものに難癖をつけ笑う彼女たちが面白い。それぞれの時間を見つけすれ違い別の道を歩んでいく彼女たちが懐かしい。
女って、わけわかんない。めんどくさい。腕を組んで眉をひそめて考えなければ紐解けない、女特有の心情描写が至る所にあるこの作品。だから最高だった。ああ、私もだったなって、イーニドの好きなものとの付き合い方が下手くそなところとか、自分で自分の期待を捨てていないところとか、今も十分若いけれど数年前の私を思い出した。
レコードコレクターの、自分より音楽を知っている賢そうな年上の男(弱そうで頼りなささ必須)に惹かれてしまうパンク娘イーニドちゃん。赤信号、出てる。でも恋は盲目。それもいいの。毎回変わる服装の色味とリップも合わせているのが、本当にキュート。私の中の既視感を殴りつけながら、彼女が街を彷徨う様子を見ていた。
どこへもいけない、そんな気がした。
そんな気がしていながらも、彼女はバスに乗ってどこかへいった。
胸が詰まるラストシーン。女の子が羽ばたく映画は、最近でいうとレディーバードをみたけれど、こちらは別の飛び方をしたレディのお話だ。きっといつだって懐かしい。悩んでも仕方がないことにだけ頭を抱え、時間を腐らせず有りのままに過ごすことが出来なかった若者たちへ。答案用紙だけを欲しがっていたね。そんなもの真っ先に、破くような性分のくせして。無い物ねだりは一生続く。だから、ねだる事に飽き足りたら、回送バスで戻ってくるといい。旅立っていった彼女たちだって、いつかはこの街に帰ってくる日が来るのだから。私はそう思う。そうであってほしいと、思う。
90年代初期エモを聞き漁り尖っていた私も今はチェットベイカーのトランペットで泣いてる。でも、ゲットアップキッズの1stでいつまでも拳振り上げる少年心も持ってたい。優しい音楽も、凶暴な映画も、変わる時の中で変わらず好きでいるだろう。そんな事を、口を半開きにしながら考えていたらHomecomingsのライブが始まっていた。
メンバーの中で、唯一男性のリードギター福富さんが言った「ゴーストワールドの中に出て来るようなポップな女の子の曲」という話を聞いて、頷いた後にイントロで涙が出た。大学生時代、大好きなこの曲をバンドでコピーしたこと、今の自分が畳野さんの声を生で聴けること、数年ぶりにホムカミを見れたこと、色んなことが重なって口ずさみながら泣いた。
毎日毎日とは言わないけれど
嫌な事が次から次へとやってきて
なんとなくの寂しさが夜に向かってくる
失意は砂時計の中に埋まっていて
掘り起こすのに必死だよ
その時そこにいられるといいね
ちょっとした運みたいなものだから
明日はきっとよく眠れるよ
ちょっとした運みたいなものだから
彼女たちが手掛ける楽曲たちは基本的に英詞である。上記は、HURTSのミュージックビデオの中で字幕風に流れる歌詞の和訳だ。頑張れっていう馬鹿力で背中を押すような応援ではなくて、この”ちょっと”が私の心に余白をくれた。ポップなギターサウンドに刻みのいいリズムと主軸のベースライン。Homecomingsという日本のバンドを、可愛らしいなんて言葉だけで納めたくない。映画と音楽、という皆の好きなものを掛け合わせる企画を主催していただいて文字通り感謝しかない。
地元京都を中心として活動する彼女たちが、7月15.16日に東京・下北沢 SHELTERで「Better Things」というツーマンライブを行う。お相手や価格は公式ホームページに足を運んで下さい。お前急に番宣みたいなんして本人なんか?と思われそうですが私だって早くホムカミになりたいわふざけないで下さい。
ゴーストワールドという映画、Homecomingsというバンド、どちらも良い出会いをし続けてほしい。音楽も映画も、作る人がいるからそれに笑ったり泣いたり感動したり出来る。逆もしかりで、関係性が成り立っているのちょっと素敵すぎやしないか。心配。
暗いタイトル何とかならないのって感じだけれど、これでも精一杯の愛があるので後ろにインド人とピースサインの絵文字がある感覚で読んでいただければ幸い。最後に、Homecomingsの最新楽曲、映画『リズと青い鳥』の主題歌にもなっている「Songbird」を紹介して終わりのない文章を終わらせる。
明日も、よく眠れますように。
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