地獄と天使
ある人は「お国のために」と
ある人は「好きな人に会いに」と
ある人は「こんな僕なんて」と
ある人は、何も遺さずに
地獄へ落ちて天使になった。
ねえ、地獄はどう?
鬼たちに体を引き裂かれて
針だらけの山を登って
鉄板で焼かれたあとに
大きな釜で煮込まれている
地獄へ行った瞬間に不死身になるなんて
こっちでの命が安く思えてしまうよ。
ねえ、羽の調子はどう?
あれだけ空を飛びたいと思っていたのに
水の中を潜っていたあの頃が懐かしく思えるの
ずっと口角が上がるから
そろそろ疲れてきたみたい
出来れば今夜は悪夢を見たいわ
綺麗な羽を生やしたあの子のもとにも
いつか本物の悲劇が訪れますようになんて
そんなことを考えてしまうよ。