お祭りの夜「浅草キッド」
私の楽しかった思い出のひとつは近所の路上で夏ごろ開催された夜店だ。
夕方になると「夜店だっせ、行きまひょか」というなぞの声が聞こえる。
そうするとワクワクする夜が始まるのだ。
親にその見たことのないの声の主を聴くと近所の障害者のおっちゃんで夜店の人たちに可愛がられて、いつしか宣伝を頼まれたらしい。
そういった、いささかの怖さやうさんくささや闇を感じながら、私は夜店を楽しんだ。
そういった夜店の賑わいが毎日あったのが浅草の夜の人々の記憶だろう。
だからこそ、浅草の夜が鬼滅の刃の鬼舞辻無惨が初出した場面だった。
故郷の下町でもにぎわいの闇に引き込まれて男に襲われたりしたと聴いたり、夜店の人の発砲事件があったりした。
映画浅草キッドは昼間の浅草の賑わいと夜の闇の対比がうまく描かれているなって思う。それは芸能の世界の喜びと悲しみに通じてる。
浅草を夜を描いた映画、浅草出身の山田太一原作、大林宣彦監督である、
異人たちとの夏が好きだけど、この映画でも主役を張っていた東京下町出身の風間杜夫がちゃんと出てくる。うれしかった。
そして、ビートたけしが師匠深見千三郎の墓を深夜洗う場面が出てくる。深見千三郎が手の指を戦争中の工場で失った障害者であったように、芸能の世界に生きる人は人外の道を生きる人であるように思う。
昔、たけしが学生運動がなかったら平凡なサラリーマンになっていたと思うって言っていたけど、彼もみんなの物語の中で生きることを選んだ人だ。
浅草キッド好きだな。どう生きてもいいんだ。ほろんでもいいんだ。
せいいっぱい生きろ。そんな励ましを与えてくれる。
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