わたしの愛したあなた 2
あの日のことは忘れない。
「ユキって可愛いよね、前から思ってたんだ」
今思えばなんて典型的なお世辞なんだ。出会ってすぐに言われた。でもその言葉にわたしはドキッとした。
単純な自分が憎い。
可愛いって、面と向かって言われたことは何回目だろう。数えるくらいしかなかったから。
ドキドキさせるのが上手なアキト。ひとつ年上。
昔からアキトのことは知ってはいた。同級生の元カレだったから。すごく仲が良かったことも、付き合いが長かったことも、噂で耳にしたことがある。だからかな、わたしはかなりアキトに対して壁を大きく作っていた。
女慣れしてるんだろうなぁ。
そういう感情しかなかった。
わたしはアキトと同じ高校に受かっていたんだ。男友達に、アキトにユキの連絡先を教えていい?って何回も何回も言われた。でもわたしは断った。何回も何回も。
だってアキトを見てるとあの子を思い出すから。
男友達には申し訳ないけど断り続けた。
ごめんね、まだ男の人と連絡取る余裕ないから。
中学を卒業したときに大失恋をした。友達はそのことを知っていてくれてるから、うまくアキトに誤魔化して断ってくれていた。
なんだかんだで入学。
元々友達が少ないのに余計に少ない新生活。なんとか始まった。とりあえず慣れることに一生懸命だった。