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オーバーツーリズムの目撃談と鈴木大拙館で出会った日本一周青年をナンパすべきだった話

今日、町家購入の残金決済ならびに引き渡しがあり、昨日から一泊二日で金沢に行ってきた。

12時ちょっと前に金沢駅に着いて、キャリーケースを持ってバスに乗って片町に向かう。学生時代によく一緒に安いお酒を飲んでいた、当時は教授の秘書をしていた友人が富山から金沢まで来てくれるというので、片町にあるビストロで一緒にランチをする約束だ。

バスの中には、15人くらいの、スペイン語を話す学生風の男女のグループがいた。年齢は20代前半に見えるから大学のゼミ旅行なのかもしれない。みんなガタイがいい上に、それぞれ大きな荷物を抱えているのに、バスにはそれを置く場所がなくて、結果として通路を半分くらい塞いでしまうことになった。荷物があるから、ほかの乗客がバスの奥に入れず、バス後方の席は空席なのに前方には立っている人がたくさんいるような偏った乗車状況。そしてスペイン語で「あと何駅で降りるよー」とか「バス料金は210円だから準備してね」などと大声でやり取りをしている。別にすごく大騒ぎをしている訳ではなかったけど、窓を開けたり閉めたり、バスの前方と後方で会話をしたり、どうしても15人も若者が異国の言葉で話していると存在感、あるいは圧迫感がある

金沢駅から乗っていて、途中のバス停で降りようとした地元民と思われる60代のおじさんは、彼らに対しての不満が堪えきれなかったのか、バスの後ろから前方のドアに向かう途中で荷物にぶつかった瞬間、その横にいたスペイン語の男性に対して「ヴァうぉぉボゥわーーーー!!!!」と吠えた。まるで犬かクマみたいな感じで。体をぶるぶると震わせながら。金沢市民が獣になる瞬間だ。そういえば金沢にも熊が出ると友人Kが言っていたのを思い出す。それを受けたスペイン語の青年はキョトンとして、「あれ?僕何か悪いことした?」みたいな表情でキョロキョロしている。きっと、「存在自体が邪魔」と思われることに慣れていないのだろう。

後ろの方から見ていて、こういうのをオーバーツーリズムというのだな、と思った。これ、東京都内を走るバスと同じように、市バスは中央乗り口の近くの椅子は撤去して荷物やベビーカーが置けるようにした方がいいと思う。金沢は観光で食べていくっていうのを期待しているわけで、こんな出来事を「外国人のマナーの悪さ」などと捉えている場合ではない。一番の問題は、彼らの荷物置き場がないことなのだから。

ビストロ・ユイガさんのランチ。全部美味しい

気を取り直して、10年ぶりの友人と再会し、ビストロ・ユイガさんで美味しいランチをいただく。古民家を改修した素敵な店構え。久しぶりにあった友人は、富山の時間の流れがゆったりしていて性に合っていて、子育て期間は富山にいたいという話だった。金属加工などの職人の街に彼女は住んでいるのだけど、文化的にも満たされていそう。

夕方の大拙館もまたいい


友人と別れた後、宿屋に荷物をおいてちょっと昼寝をしてから夕方はいつもの大拙館詣で。まちのり自転車で漕いで行って、閉館ぎりぎりに入る。水盤に広がる円弧が、風で起きる小さな波でかき消されるのが秋らしくてとても美しい。そう言えば水盤を作るボコンというポンプの仕掛けは何秒ごとに起きるのだろう?と気になってストップウォッチで測ってみる。多分、2分20秒おきくらいなのだけど、もしかしたら仏教界で意味のある数字の秒数に設定されているのかもしれない。煩悩の数と同じ、とか。それだと108秒で短すぎるけど。

帰り際、自転車置き場にあった隣の自転車に「狛江から日本一周中」と書いてあるのを見つける。そこには日焼けした青年がいたので「狛江湯、大好きなんです」と話しかけてみる。聞けば、彼は1.5ヶ月前に東京を出発して、北海道まで行ってから今は南下しているという。野宿をするの?と聞いたら、野宿もするけど金沢みたいな場所だとできないからネットカフェに行くとのこと。次は沖縄を目指して毎日漕いでいるらしい。えらいこっちゃ。

3分ほどカジュアルな会話をした後、頑張ってくださいね、と言って別れた。一瞬、2030年までの目標の中の「若者に一人14000円のお寿司をご馳走する」というのを達成するチャンスかも?と脳裏をよぎったのだけど、若者をナンパする気持ちの悪いおばさんと思われたら嫌だわというエゴが邪魔したのと、ランチの満腹感が残っていてお寿司をしっかり食べるほどの食欲がないのが相まって、お誘いしないまま終わってしまった。後から考えると、どう考えても誘うべきだった気がする。きっと私の知らない世界を教えてれたはずだ。

夜になって、「日本一周」「狛江」などで検索したら出てくるかな?と思って探してみたけど、全然見つからない。むしろ、彼とは関係なく、自転車で日本一周している人のSNS投稿の数の多さに気がついて若干引いた。大拙館の彼については見つからなかったのでそれ以上深追いはしていないのだけど、ある意味それですごくホッとする。彼はSNSに投稿するために旅をしているのではなく、内省をするために旅をしているのだとしたら、20代にすべきことってそれ以外に何もない気がするので。

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