番頭兼イラストレーターから、絵描きへ
こんにちは、塩谷歩波です。
5月25日付で4年間勤めていた株式会社小杉湯を退職しました。「番頭兼イラストレーター」という肩書きを卒業し、今後は「絵描き」として歩んでいきたいと思っています。
小杉湯と出会ったのは2016年末。前職の設計事務所を体調不良で休職したときに銭湯巡りに夢中になり、その魅力をイラストで表現した「銭湯図解」が話題になって小杉湯三代目の平松さんからパンフレットの制作依頼をいただきました。それがきっかけで度々小杉湯に遊びに行くようになり、設計事務所への復職を悩んでいることを平松さんに相談したところ転職を提案されたのです。思いもよらないことで驚きと戸惑いがありましたが、大好きな銭湯に関われること、何より銭湯の絵をもっと描きたいと思い転職を決めました。それからは、番台やお風呂の仕込みといった番頭業務を担当しつつ、マナーPOPやイベント風呂のポスターなどのイラストを何枚も描きました。イラストは幸いなことに常連さんからも好評で、長年小杉湯に通っている方から「あなたが描いたの?すっごくかわいいわね!」と褒められて、涙が出るほど嬉しかったことを覚えています。
小杉湯で何枚も絵を描いていく内に、子供の頃の夢を思い出すようになりました。私は幼い頃から美術館を巡るのが大好きで、ゴッホやダリの絵を前にして食い入るように見つめながら"こんな素敵な世界を描ける人になりたい"といつも思っていました。ですが、学年が上がるにつれて私よりずっと絵が上手い人が沢山いることを知り「絵で食べていける自信がない」「そもそも私なんかが絵描きになれる訳が無い」と思い、絵描きを夢として掲げる前に諦めていました。銭湯図解を描き始めてからも絵に自信はありませんでしたが、小杉湯の方々が私の絵を褒めてくれたことや、小杉湯のお客さんがポスターを見て嬉しそうに微笑む姿を見て少しずつ自信を取り戻し、幼い頃の"絵描きになりたい"という夢が胸の内に還ってきたのです。
夢を自覚してから「絵を描きたい」という想いがどんどん強くなりました。絵に専念するため絵描きとして独立することを考えましたが、こんな夢を持てるようになったのは小杉湯のおかげですので、辞めるなんて恩を仇で返すことになるのでは…と躊躇いました。ですが、色々な絵を描きたいという欲求は日に日に強くなり、その一方で小杉湯への恩を返したい思いも強くあって、2つの思いの板挟みになり、とうとう今年の2月に体調を崩してしまったのです。しばらくお休みをいただいて休養しつつ、友達やカウンセラーの先生にこの悩みを相談する内に、迷いはありましたがやはり絵描きになるという気持ちを大切にしたいと思いました。小杉湯への想いももちろんあったので、これはもう正直に小杉湯の方々に気持ちを伝えようと思い一人ずつ声をかけていったところ、小杉湯のオーナー(2代目)からこんな言葉をいただきました。
「塩谷さんは、もう十分に小杉湯に恩を返していますよ。塩谷さんがきてから小杉湯は大きく変わりました。本当に、ありがとう。」
そう言われて初めて、自分が小杉湯でやってきたこと、それを喜んでくださったお客さんや小杉湯の人々の顔がハッと目に浮かびました。「恩を返さなきゃ」という思いで頭がいっぱいになって自分を追い込んでしまって、私が小杉湯でやっていたこと、支えてくれた人が見えなくなっていたのかもしれません。
小杉湯での4年間の出来事に感謝をして、その想いを胸に幼い頃の夢であった絵描きとしての夢を叶える。その姿を小杉湯で私の絵を応援してくださった方や小杉湯の方々に届けることが、支えてくれた恩返しになればと思い、自分の夢を追うため小杉湯を卒業することを決めました。一度小杉湯を離れる形にはなりましたが、これからも小杉湯が大好きですし、今後は一人のアーティストとして小杉湯と関わっていけたらとても嬉しく思います。
---------------------------------------------
絵描きとしてのこれから
「絵描き」といっても、今までと違うことをやろうとは思っていません。これからも銭湯図解を描きたいし、エッセイもやりたい、トークイベントもやりたい。今までやってきたことを続けた上で、さらに絵の幅を広げていきたい。「絵描き」は絵を中心に活動していくクリエイターという柔らかい意味合いで捉えてくれたら嬉しいです。ざっくりですがこんなことができたらなーということをまとめてみます。
① 建築図解
銭湯図解で続けてきたことを、様々な建物で広げていきたいです。銭湯に限らないと思うので、名前を”建築図解”と広めにしてみました。銭湯のように内部を撮影できないところ、魅力がまだ知られていないところ、これからできる建物、物語上の建物、解体されて現存しない建物、、、図解を通して、そんな建築の魅力を伝えるお手伝いができたら幸いです。
(ホテル、喫茶店、住宅、お寺、博物館、遊園地など描いてみたいです…!)
②本の表紙やCDジャケットなどのイラスト
本の表紙やCDジャケットの絵を担当することにずっと憧れていました。このイラストも、こんな表紙の本があったらいいなあなんて妄想しながら描いた一枚です。細部までこだわった建物の水彩イラストがとても得意です。こんなテイストのイラストが何かの役に立てたら、とても嬉しく思います。(本やCDの他にも、映画のポスターやコラムの挿絵も描きたいです!!)
③銭湯、サウナの応援
これからもずっと銭湯とサウナが大好きです。図解やイラストを通してだけでなく、私にできることがあれば応援を続けていきたいなと思っています。具体的に何とかはちょっとまだ浮かばないですが…大好きだからこれからも何かしていきたいです。
④コラム、エッセイ
これまで幾つかコラムやエッセイを執筆してきました。実は、中高時代は文芸部に所属していまして…その時の技術を活かせるのはとても楽しく感じています。これまでは小杉湯や銭湯の話が多かったけど、パーソナルな話や、絵のことも書いてみたいです。
▲ エッセイ「40℃のぬるま湯につかって」
⑤講演
小杉湯、ライブハウス、教育機関など様々な場所で講演を行ってきました。人前で話すのは少し緊張しますが、"言葉"という表現で何かを伝えることはクリエイターとしてとても楽しいひと時です。聞いている方の顔が見えるのも、すごく嬉しい。これまで働き方や、銭湯のことが中心だったけど、絵のことも話していきたいな。
ほかにも、水彩のレクチャーをやってみたいとか、掛け軸を描いてみたいとか、ラジオもやってみたいとか、色んなことにチャレンジしてみたいという気持ちでいっぱいです。絵を中心に、でも絵だけではない表現を通して、様々な人と関わっていきたいです。
最後に、これまでの実績をまとめたポートフォリオを載せておきます。もう少し詳しいことが書いてあるので、よろしければ下記のバナーよりご覧ください!
▲ 2021_ポートフォリオ
---------------------------------------------
独立に合わせて
今回の独立に合わせて、新しく2つのことを始めます。
①作品をTumblrにまとめました
これまで描いた作品をまとめたTumblrをオープンしました!銭湯図解、イラスト、エッセイ、講演、メディア出演情報などひと通りまとまっているかと思います。下記URLよりぜひご覧くださいませ!
②複製画の販売
以前より絵の販売についての問い合わせをいただいていたので、この機会に複製画の販売を始めます!複製画といっても、長野の印刷会社・藤原印刷さんによるとても精度の高い複製画です。初めてサンプルを見せてもらった時には、作者なのに本気で原画と複製画を取り間違えてしまったほどです…!紙も色の乗り方も本当に見分けがつかないです。
複製画の第一弾として「小杉湯図解」の販売を本日よりスタートいたします。詳細は下記よりお願いします!
---------------------------------------------
最後までお読みくださりありがとうございます。小杉湯での4年間、"番頭兼イラストレーター"として活動してきたこと、またずっと支えてくださった方々の思いを大切にしながら、今までの活動の幅をさらに広げるような形として今後は絵描きの人生を歩んでいきたいと思います。これからの塩谷歩波も何卒よろしくお願いします。
そしてもし、このnoteをみて何かピンとくるものがあったらお気軽にご連絡いただけますと幸いです。正直、カレンダーが白紙が続いている状況なので、お仕事のことや、その前のご相談という形でもぜひお話をお伺いしたいです。下記のお問い合わせ先より、お気軽にお願いします!
<お問い合わせ▶︎ info@enyahonami.com>
それでは、「絵描き」として今後ともよろしくお願いいたします。
塩谷歩波
(写真:三浦えり)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?