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金のなる木が倒れるとき

宝塚歌劇団宙組のいじめで自殺者が出たという件について、
いじめの事実は認められなかった、という記者会見が行われ、世の中は非難ごうごうである。

ヘアアイロンでやけどをするのは日常茶飯事でいじめじゃないとか、団員に聞いたら誰もいじめがあったと言ってませんでしたとか、恥も外聞もなくザ・卑怯な言い訳に開いた口が塞がらない。

あれだけジャニーズの対応が叩かれて大失敗したのを見ているのにこれはないだろ、存続したいと思ってないのか?

と思う一方で、やはりブランド力で多くの人が口に糊をしている営利団体においては、このような形で不格好に崩れ滅びていくしかないのだな、とも思う。

私たちは皆、様々なメディアを解して世の中を広く理解したような気になっているが、実際の暮らしではせいぜい2,30人程度しか直接かかわる人はいない。人によっては4,5人のこともあるだろうし、100人以上のこともあるだろうけれど、要するに自分の半径何メートルというのがそれぞれの人間の世界なのだ。

だから、宝塚だのジャニーズだのに所属していたり、直接取引をしたりしているような人たちにとっては、その2,30人の知り合いの中でどう思われるかが最大の関心事で、それにがんじがらめにしばられているのであり、広い世間や世論といったものは舞台のスクリーンにささっとアクリル絵の具をこすりつけただけの書割の遠景のようなものにすぎない。

書割はご飯を食べさせてくれたり身分を保証したりはしてくれないし、話しかけたり遊んだりもしてくれない。だから、当事者にとってはいくらSNSで叩かれようがそんなこと知ったこっちゃないし、なんなら痛くも痒くもないのである。

そんなことよりもそばにいる2,30人の人たちで身を寄せ合って裏切らずにいることの方が個人の戦略として有利なのだ。
宝塚やジャニーズといったみんなの金のなる木を傷つけるような人物は今後仕事や人を紹介してもらったりといったコミュニティの恩恵が受けられなくなる。
ヒーローでもなんでもないのだ。

でも、ジャニーズがそうであったように、いずれは宝塚も倒れるかもしれない。とても似ている団体だから。

宝塚もジャニーズ同様、特殊な世界だ。
女の人が男の人の役を演じるとか、濃いお化粧や独特な髪型。変わった歌い方。もしこれが普遍的なかっこよさなんだったら、他のジャンルでとっくに真似されて一般的なスタイルに組み込まれていると思う。
でもそうはなってない。
観客が協力して「これはかっこいいんだ」ってお約束を守ってあげているからこそ成立している世界。

寛大な観客も、キラキラした宝塚の舞台の裏側にうずまく嫉妬やくだらないイビリやいじめが明るみに出ることで
『まあそこまでカッコよくもないし、ふつうに男に抱かれたいと思ってる女のひとだよね』
っていう、それは言わない約束でしょ、っていう事実と折り合いがつけられなくなるかも。

そしたらいじめの実体を赤裸々に話す人があとからあとから出てきて、金のなる木はシロアリに食われたみたいにボロボロになって、あとは蜘蛛の子を散らすように逃げるんだろうな。

きれいなわかれ方なんかないのよ。
きたない終わり方しかないのだなぁ。

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