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【エッセイ】 「くわんくわん」を知っている人、います?

私自身は東京下町で生まれ、19歳でごく東京都寄りの埼玉県に引越したので、多少の下町訛りはあるのかもしれないが、主に標準語を話す人である。

憧れ、なんである。
方言が。
羨ましい。本当に。

夫は新潟出身。実家の方々からはあまり訛りは感じられないが、親戚の面々からはいわゆる新潟言葉を聞くことができる。

だしけ(だから)、とか、しょーしい(恥ずかしい)とか、かわいいなぁと思う。
「たまご」とか「からし」などのアクセントが語頭に来るのも柔らかくて好き。ついつい真似してしまう。

山口県出身の友達の口からもよく飛び出したものだ。
じゃけえ(だから)、〜したんよー、そうじゃろ?とか。
うれしくてもっと聞きたくなる。

息子が乳児だった頃、入院したことがあった。息子は肺炎だったのだが、隣のベッドのお子さんは喘息で、夜など咳き込むと
「えらいねーえらいねー」というお母さんの声がカーテン越しに聞こえてくる。大変だね、つらいね、という感じの言葉だと、岐阜県出身の友達から聞いて知っていたので、翌朝聞くとビンゴだった。
「つらいね」というよりずっと温かい。いいなぁと思う。

言葉の柔らかさに加えて、羨ましいポイントは同じ言語を使っているという連帯感的なものを感じるところかもしれない。
同郷ということで、初対面でも意気投合する場面では、たいてい急にその土地の言葉で話し出す。いいなぁ。羨望の眼差しで見てしまう。
東京下町でも、ローカルな話題で盛り上がれることがあるが、いかんせん弱い。方言があれば、もっと連帯感を持てるのではと考えてしまう。
無い物ねだりなんだなあ。

「ブルボンって新潟なんだよ!」
「ダイソーは山口の会社なんよー」
こういった故郷自慢も羨ましい。
故郷自慢に加わってみたい。

ところで、口のまわりに食べ物をたくさんつけている状態を「くわんくわん」と言うのを知っている方はいるだろうか?

たとえばチョコアイスを食べている子の口のまわりがチョコだらけだったりする時に「お口のまわりがくわんくわんよ」と言うふうに使う。
私の小さい頃から慣れ親しんだ言い回しだったのだが、夫には通じなかった。

通じなかったことが、ちょっとうれしかった。

これは下町方言(?)だろうか?
それとも実家でだけ通じる言葉なんだろうか?
親きょうだい以外で聞いたことがない。

かつて北の玄関口と言われた駅からほど近いところに住んでた。
しかし、啄木よろしく「人混みの中にそを聞きに」行ったことはない。
今行ったら、どんな方言が聞けるだろう。

・・・聞こえてくるのは、めちゃくちゃインターナショナルなお国言葉な気がする。それはそれで面白そうだが・・・。

ああ憧れの方言。なんである。


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