長く続く企業と、長く人気のアーティストには共通点がある、という話【書評】
先日、エンタメ業界ではたらくサラリーマン、として初めてnoteをアップさせて頂きました。
初めてやってみたのですが、コメントや“スキ”をもらえると励みになりますね。読んで頂いた方ありがとうございます。
これからも続けていければと思いますので、読んで頂けると幸いです。
エンタメ業界は、このコロナ禍で非常に大きな打撃を受けています。
少しでも業界が元気になれば、と思い記事を書き始めました。少しでも刺激を受けて頂き、業界のそれぞれのポジションで新しいアクションの背中を押せたり、他の業界の方から見て、業界のことに対して興味を持って頂けたら、色んなご意見をお寄せ頂けたりすると嬉しいです。
大きく伸びてきた会社と、売れっ子アーテイストには共通点がある?
よく言われることとして「好きなことで仕事をしたい」とか「歌が好きでずっと歌っていたら、スカウトされた、推薦された」みたいな話、よく聞きますよね?
実は、経済的に成長する会社と共通点があると感じました。
今回の書籍はこちらです。
本書もベストセラーなのですが「飛躍の法則」とあるようにすごいと言われる会社が、何故すごいのか、を解き明かした本です。本書が凄いのは、出来るだけ主観を排除して、データによって成長する会社(ビジョナリー・カンパニー)を導き出したことです。つまり誰かが勝手に「こう思う」といった話や「みんながいいと言っているから」「有名だから」というだけではなく、アメリカの上場企業の内、15年にわたって株価を伸ばしている会社と、同じ業界の第2位以下(比較対象企業)との差を調べていくと、第1位のビジョナリー・カンパニーには、ある共通点があった、ということなのです。
音楽やアーティストは、ある程度ジャンルの括りはあるものの、それぞれに提供している価値が異なるので、比較対象企業のように“第2位”といったアーティストを出すことは出来ませんが、それでも長く人気をキープしているアーティストには共通点があるように感じることが多いです。
全ての要素に当てはめてみたいですが、ここでは2つの要素を紹介したいと思います。
興味のある方は是非、本書を読んでみてください。
音楽業界でも役に立つことは多いと思います。
野心は会社のために。野心はアーティストのために?
まず一つ目は「野心は会社のために」です。
ここでは経営者の姿勢について書かれています。「野心は会社のために」とあるように、あくまで会社の成長は、会社が成長することで自分が豊かになることを目指すのではなく、むしろ会社が果たす役割が世の中のためになっているかどうか、そして自分がやりたいことが企業の成長に貢献しているか、という視点です。
会社がうまく行っているからといって、給料を増やしたり役員専用エレベーターを設置したりするような経営者は勿論失敗していくし、自分が出世することや、自分だけが特権階級のような立場を作ろうとしたりする経営者は、必ずどこかで失敗する、長期的に企業を成長させることは出来ない、ということです。
業績そのものを伸ばせる力があるとしても、それは「自分の力だ」と思ってやっているカリスマ的な人物であったり、その人物だけが活躍できるように、周囲の凡人で天才を支える、という体制を取っていることが多いので、この人物がいなくなると急速に業績が落ちていく、ということです。
よく言われていることですが、当たり前ですよね。
従業員は誰もついてこないし、投資家からの信用も失ってしまうのです。
サラリーマンから偉い人達を見ていたり、他社の動向を見ていると“あるある”だったりしますよね。思い当たる人も多いのではないでしょうか。
なるほどな~と思いながら読んでいると、ふと「あれ?アーティストに当てはまるのでは?」と思いました。
アーティストでも「売れたい!」「売れて贅沢したい!」と思うと思いますが、何よりもまず「歌いたい」という自分の欲求が「歌うことで、誰かの心に刺さるかどうか」を意識していることが重要だと思います。「歌や歌詞を誰かに届くことで誰の心を動かしたい」という欲求だと思います。「武道館で1万人動員したい」「CDを100万枚売りたい」という欲求は、それそのもので成立するものではなく、1万人とか100万人の「心に届けるためにはどうすればよいか?」ということだと思います。
大なり小なり、顔の浮かぶ誰かを想像して、その人のために歌う歌にはリアリティを感じるのではないでしょうか。結果的に同じような人にどんどん広がっていくものだと思います。
まず歌がそうであるように、アルバムアートワークや衣装などのビジュアルイメージも、歌をより効果的に届くように使います。伝える為の媒体も、テレビよりも雑誌の方がよかったり、どの媒体が最も効果的にアーティストの魅力を伝えることが出来るか?を考えて展開するものですが、それも全てアーティストというブランドを確立するために行なうものです。アーティスト本人を贅沢させるために行なうのではなく、アーティストが発するメッセージすべてをブランディングするために行なうのです。引いてはそれが聴いてくれるファンのためになるからです。
その最たるものがこのセリフだと思います。
「Gacktやるって、マジで大変だけど。覚悟ある?」
アーティストとしての価値を提供するためには、体調管理や身体づくり、イメージ戦略だけといったアーティストとしてのブランドづくりのための努力だけではなく、さらに踏み込んでみてくれる人や、支えてくれる人に夢を与えるために「自分が他の誰よりも一番努力している」ということです。自分ひとりで成功しているわけではないし、そんなことが出来るわけはないことを自覚しており、自分が出来ないことが得意な一流の人達の協力を積極的に得ながら、その人達の力を最大限引き出すために、自分のパフォーマンスを磨き続け、新たなことをすぐに試して取り入れる等、自分が誰よりも努力して、その姿もちゃんと共有するということです。
こういう人が近くにいると刺激を受けて、自分も頑張ろうと思える、というの共感できる人もいるのではないでしょうか。
おそらく、トップ企業を引っ張る経営者というのはこういうイメージではないでしょうか。
自分だけが活躍するのではなく、自分より優秀な人たちに力を発揮してもらう、そのために自分ができることや、自分より優秀な人たちの力を引き出すことに長けた人なのです。
トップを走り続けるアーティストは、自分がいい生活をしたい、とか印税がたくさんあるから働くのをやめよう、というのではなく、支えてくれるファンのために、ファンに夢を与え続けられるために、日々新しいものに触れ、ファンを理解しようと努力し、そのために周囲のスタッフの協力を得ながら、そのために動き続けているのです。
どうでしょう?共通点ありますよね?
こうしてみると、経済や企業になんて興味の無かった人も、自分の会社の社長とか、自分が尊敬する人、とか着いていきたいと思える人、とか長く実績を上げている人を思い描いてみると、自分の好きなアーティストとの共通点が見つかりそうじゃないですか?
売れているアーティストは「針鼠」?
本書で紹介される古代ギリシャの寓話「狐はたくさんのことを知っているが、針鼠はたったひとつ、肝心要の点を知っている」に基づいて、世間には狐型の人と針鼠型の人がいる、と指摘します。
狐は賢い動物で、複雑な作戦をつぎつぎに編み出して針鼠を不意打ちにしようとするが、その度に針鼠は身体を丸めて針を突き出す。それを見て狐は諦める。それが形を変えて何度も繰り返されるが、勝つのはいつも針鼠だ、という話です。
狐型の人は、いくつもの目標を同時に追求して、力を分散させてしまう。
これに対して、針鼠型の人は、複雑な世界を一つの系統だった考え、基本原理、基本概念によって単純化し、これを全てをまとえめ、全ての行動を決定している、と。
伸びる企業の戦略はシンプルなのだそうです。
ウォルグリーンズ、というアメリカのドラッグストアの戦略は「もっとも便利な最高のドラッグストアで、来客一人当たりの利益を最大限に増やす」これだけなのだというのです。
長く売れているアーティストの場合で言えば、ヒット曲の曲調がよく似ていたり、歌詞のテーマが似通っていたりします。声や曲の特徴で、初めての耳にする曲でもまるで聴いたことがような気がするものも少なくありません。
ファンが求めていることがよくわかっているからですね。
しかし、ポイントは「形を変えて繰り返される」です。
本書では、狐が色んなシチュエーションを作っていて、針鼠は同じをことをするだけ、のように見えますが、針鼠は「形を変えて繰り返しても、いつも勝つ」のです。
つまり、異なるシチュエーションであっても自分の強みに持ち込むことが出来るのです。
アーティストに置き換えるとするなら、自分で作りたい楽曲を作るときと、タイアップのオファーがあって作る曲との差、のような場合でしょうか。
タイアップとは、例えばCMやドラマの主題歌の依頼のような場合です。
お菓子のCMなのに、暗い曲調の楽曲を持っていったらボツになるでしょうし、メーカーは「甘い」「幸せ」といったキーワードを提示していても、アーティストの意向だけで歌詞をかけば却下されるはずですが、そういった制約の中にあっても自分の勝ち筋、特色を表現できるのがプロでありトップアーティストなのです。
オファーに対してイメージ通りの楽曲を提供出来て、しかも聴いた人からも「あ、このアーティストだ」とすぐにわかる楽曲になり、しかもタイアップの商品やドラマや映画の作品イメージとピッタリ、となれば覚えられて売り上げも伸びて、、、とWinWinな関係になります。
自分の強みがわかっていて、どんな状況でもそこに持ち込める、というわけですね。
勝ち方を知っている、ってことです。
まとめ
いかがでしょうか?
何にでも「勝ち方」ってあるんですね。
まとめると、
①自分以外の何かに対して強い気持ちを持っている
「やりたいこと」が自分のためではなく「誰かの為になることをやっていて、そこまでふくめて自分のやりたいことになっている。
②自分の強み以外のことに手を出さない
自分の能力を、人のためになる場所で活用する。そこから逸脱しないこと。
大きなポイントとしてこの2点を紹介しました。
本書では、さらにどうすればそういった企業(経営者)になれるのか?といった疑問や、どのようにして強みを見つけ出すか、目標を設定するか、についても詳細に書かれています。
これらの要素はわかったのは、著者の主観によるものではなく、データを元にしているということが非常に深いです。
感覚的には理解していたことに、きちんと裏付けが取れたことで、確信に近づいた感じがします。
サラリーマンにとっては自分の会社と比較して、その差を調べることで自分の所属する会社が何を目標にするか理解が深まると思いますし、あるいはもっといい会社に転職した方が活躍出来ると思うかもしれませんが、仕事を見直すきっかけになる良い本だと思います。
そして、アーティスト活動をしている人や、その周囲の人は、勝ち続けるアーティスト像をどうデザインしていくか、の一つの指標になるのでは思います。
一見、エンタメ業界とは関係なさそうに見えても、様々なヒントが散りばめられた良い本だと思いますので、紹介させて頂きました。
エンタメ業界で関わる人にも大いに参考になる内容がたくさん書かれていておススメです。
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読んでくださってありがとうございました!
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