安部公房とわたし(山口果林、講談社)
山口果林さんは、かつてノーベル文学賞候補とまで言われた、安部公房の愛人だった女性。
本書は彼女の衝撃の手記である。
特筆すべきは、山口果林さんの写真。
美し過ぎる。
思わず引き込まれるような美しさ。
天真爛漫な、完成された、およそ考えうる限り最も美しい方である。
内容は、実に淡々とした描写が続く。
私にとって安部公房は、「不思議な小説を書く作家」である。
無論、同時代の人では無い。
ただ、安部公房や山口果林さんの生きた時代は、文学や表現がまだ力を持っていた最後の世代だったのではないか。
そして、山口さんは、その記録を、書籍として、しかもハードカバーという時代遅れとも言える形式で社会に残しておきたかったのでは無いかと思う。
ノーベル文学賞に手の届きかけた作家という側面とは、全く別の側面から安部公房文学を読み解く契機になりそうではある。
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