"背理法の経済学"試論

背理法と言う数学の証明法がある。
Wikipediaから抜粋すると以下となっている。

”ある命題 P を証明したいときに、P が偽であることを仮定して、そこから矛盾を導くことによって、P が偽であるという仮定が誤り、つまり P は真であると結論付けることである。”

一例を挙げると、√2が無理数であることを証明するのに、まずこれが有理数であると仮定すると、矛盾が導き出される。
これによって√2が無理数であると言う事を証明すると言う事だ。

これを少し身近な事例で、適用できないか。

少し大きな話題だが、「日銀のこれまでの経済政策が成功した」と言う事を立証したいとする。

これを証明するために、まずはこれらの政策が失敗したと仮定する。

そうすると、論理的な帰結として何が起きるか。

マクロ経済のざっくりとした指標は大きく分けて、
1)GDP
2)失業率

にあるとされる。

経済政策が失敗しているとすれば、データとしてはGDPが下がり、失業率が上昇するはずである。

では実際はどうか。

ソースとするのは、労働力調査、並びに失業率の新聞報道である。詳細はリンク先にあるが、これらのデータから読み取れるのは、「数値の改善」のみである。

また、GDPについては、2023年2月14日付の日経新聞には、「日本のGDP年率0.6%増」という記載がある。

つまり、日銀の取ってきた金融緩和政策が間違っているという命題を正とすると、データと矛盾が生じることから、経済政策が妥当であると言う事が論理的に導き出される。

なぜ、こんなことを書いているかと言うと本日の朝刊の一面に「この10年間で日本の潜在成長率は0.2%に低下し、一人当たり国内総生産(GDP)は日米欧7か国(G7)最下位に転落した。金融緩和頼みで日本が豊かにならないことがはっきりした」という記載を目にしたためだ。

いわゆるアベノミクス、あるいは金融緩和を是とするか、否とするか、日経の社論が"ぶれて"いるのだが、この「背理法」のアプローチ(命題を否定し見出した矛盾から命題の真偽を証明する)をもってすれば、シンプルにファクトチェックが出来る。

これを「背理法の経済学」試論とする。

もちろん、経済にはその他の要因、例えば”消費税増税”や、最近話題になりがちな”平均賃金”等もパラメータとはなろうが、一旦それらは捨象しても、「アベノミクス」に効果が無く、日本の経済指標が「低下している」というという論理は、公知のデータと矛盾することから、命題としては偽なのである。
(しかも、ある日経の記事が、別の日経の記事のデータや根拠に否定されるのも奇妙であるが。)

300年解けなかった"フェルマーの最終定理"の証明にも強力に貢献したとされる背理法。

正しいと思われる命題を、一旦否定し、”ゴリ押し”することで、生じる"矛盾"や”ほころび”から、当初の命題が真であることを証明する手法とも言える。

長くなりそうなので、一旦ここまで。

<参考>


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