増税と政局 暗闘50年史(倉山満、イースト新書)
政局。
難しいテーマだ。
政治も難しいが「政局」となると、尚のこと、隠微な響きがしてくる。
そんなテーマに真っ向から挑んでいるのが、
倉山満著「増税と政局 暗闘50年史」(イースト新書)
である。
趣味の経済政策研究をやっていく中で、行き着くのが政治だ。
リフレが人口に膾炙したのが、第二次安倍政権発足の頃だと思う。
それまでの経済政策は、日本国民としては認めたくはないが、「スカ」だったと言わざるを得ない。
税、特に「消費税」という呪われたとしか思えない税を巡る暗闘を淡々と論述されている。
政治があり、経済がある。
日本経済は第二次安倍政権で、高橋洋一先生の言う「金融政策」を初めて政治に取り込み、経済の持ち直しに成功した。(倉山氏は高橋洋一先生を「愉快犯」と称している。リフレ派の中で、争わないでほしいが。)
これまで、昭和、平成、令和と生きてきたが、バブル崩壊以降、政治への怨嗟は止むことが無かった。何が正しくて何が間違っているのか。
その整理と理解が必要だ。
本書は、かなり高度だが、政局の「複雑怪奇」さを理解するには格好のテキストだ。
キーワードだけを拾いながら読むのも良かろう。
安っぽい政治小説も要らない。
事実は小説より奇なり。
リアルから押さえよう。
本書は政局を抑えつつ、派閥の論理と、財務省、日銀の織りなす、リアルな話を淡々と一冊の新書に纏めている。
倉山氏が冷静な筆致の中でもかなり痛烈に批判しているのが麻生内閣だ。麻生氏を国賊とまで罵っており、麻生自民よりも鳩山民主がマシだと思わせたと。
リーマンショックの後でも、有効な政策を打ち出せなかった、と。
無論、完璧な政策は無い。
しかし、麻生氏に対する、ある種の忌避感は、その時代を生きたものとして理解できる。
私も思う。自民の下野や、鳩山民主誕生を招いたのは、麻生氏だ。
消費税の増税は実に重かった。
安倍元首相は、「経済が間違い無く腰折れする消費税なんか上げられない!本当にやるなら民意を問う!」と財務省を一喝出来なかったのだろうか。
それが出来るのはあの時はやはり安倍元首相だった。
政治に関しては、いくつか思うところが有る。自民党下野時代に、あれ程吠えていた西田昌司氏の変節など、どうも腑に落ちない事がある。
現首相の岸田さんに関する記述もある。詳細は読んでいただきたい。
最後に余談だが、政治と経済を読み解く、平成経済史のテキストとしては、以下、紺谷典子氏の著書が参考になるだろう。
紺谷 典子
平成経済20年史 (幻冬舎新書 こ 9-1)