「祖国を顧みて」(河上肇、岩波文庫)
日本のマルクス主義者の先導だった河上肇先生(1879-1946)の「祖国を顧みて」が興味深い。ヨーロッパ紀行であるが、当時の雰囲気を知ることができる一級資料であり、歴史的な価値もあろう。
一読者として虚心坦懐に読むと、戦時中の国粋主義者だと思っても不思議ではないほど、祖国愛に溢れている。また欧州の文化をいたずらに理想化せず淡々と、それでいて、皮肉っぽい視点で観察している点もまた面白い。
かの幸徳秋水も愛読しているという手紙(明治38年10月12日、読売新聞に掲載)を送っている。
戦前の知識人、あるいは河上肇先生はマルクス主義者であり、愛国者でもあった。戦前のリベラリストの懐の深さこそ今学びたい。
以上。
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