デジタルコンテンツの「購入」に関するカリフォルニア州法(AB2426)について
(※冒頭の画像はDALL-Eで生成しております。)
2024年9月、カリフォルニアでデジタルコンテンツの購入に関する法律が成立し、2025年1月1日に施行されます(AB2426)。
同法制定の目的は、音楽、映画、書籍、TV番組や映画をオンラインで購入する際、消費者は紙の書籍やCD・DVDなどのメディアを購入した際と同様、を永続的な視聴が可能であると考えてしまいますが、実は消費者はライセンスを購入しているにすぎず、販売者の利用規約に基づいてそのライセンスを取り消すことができることが可能です。立法時に紹介されていた一例としては、消費者がAmazon Primeでワーナー・ブラザーズのコンテンツを「購入」していたものの、ワーナーがオンラインメディアライブラリ全体をAmazonから削除したために、消費者への警告なしにAmazon Primeから削除されてしまった事例があります(こちらの記事)。
そのため、同法は、消費者に正確にはライセンスを購入していることを理解させるため、売主に対して、それぞれの購入時に明確な情報開示を求めることでを目的としています。
同法の対象は、「Digital good(デジタル商品)」の販売者です。「Digital Good」とは、デジタル映像作品、デジタル音声作品、デジタル書籍、デジタルコード、デジタルアプリ・ゲームを指します(17500.6条(a)(7)。それぞれ対象物の定義は(a)(2)から(7)に記載されています)。
同法の規制は、「Digital goods」の販売者に対し、「Buy」、「Purchase」その他合理的な人が「Digital good」について制限のない権利を有していると理解するような用語を用いて「Digital good」を広告・販売する場合、または期間レンタルのオプションとともに行う場合には、以下のどちらかを行う必要があります。(17500.6条(b)(1))
方法1:販売者は、各取引時に購入者から以下の全てを示す積極的な確認(affamative acknowledgment)を受け取ること。
(i) 購入者はDigital goodへアクセスするライセンスを受領していること
(ii) ライセンスの制約および条件の全一覧
(iii) 該当する場合、販売者がDigital goodに対する権利を失った場合、アクセスが一方的に取り消される可能性があること
方法2:販売者は、各取引の実行前に、消費者に対し、次の2つの要素を含む明瞭かつ明示的な文言を提供する。
(i) デジタル商品を「購入」または「買う」ことはライセンスであることを平易な言葉で明記すること。
(ii) ライセンスに関する全ての詳細が記載されている利用規約にアクセスするためのハイパーリンク、QRコード、または同様の方法を含めること。
「明確かつ明示的(clear and conspicuous)」については、周囲のテキストよりも大きい文字や異なる書体、色などで、その文言に明確に注意を引く方法とされています(17500.6条(a)(1))。また、方法1、2については、購入者が承認または同意する取引のその他の条件とは明確かつ別個に示す必要があります(17500.6条(b)(2))。
但し、上記については、①サブスクリプション型のサービス、②対価なしで広告・提供されるDigital good、または③取引後に販売者がアクセスを取り消すことができないデジタル商品(たとえば、購入時に、インターネット接続なしで利用できる外部ストレージに恒久的にオフラインダウンロードが可能な形で提供されるもの)は本法の適用外とされています。(17500.6条(b)(4))
この法律はカリフォルニア州法ですが、一定の事業者にとっては、デジタルコンテンツ販売のフローや手順を見直し、販売時に消費者へ通知や確認を行う必要が出てきそうです。カリフォルニア州法でこうした規制が制定されたことにより、CCPAと同様に、他州でも似たような法律が導入される可能性があります。AmazonやApple、ゲームプラットフォームなども、表示方法の見直しを進めることが予想されます。
消費者である私たちにとっては、実際にデジタル商品を購入する前に、確認ボタンを一つ押す手間が増えるかもしれません。その際には、この法律のことを少し思い出してみてください。すぐにコンテンツを楽しみたい人もいるかもしれませんが、安心してデジタルコンテンツを楽しめるようにする第一歩だとも考えられます。
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