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CCライセンスで出典表記なしで利用した場合のフェアユースの可否(Philpot事件)

第4巡回区控訴裁判所で、2024年2月6日にフェアユースに関する判決が出ました。事件名は、Philpot v. Independent Journal Review, Case No. 21-2021 (4th Cir. Feb. 6, 2024)です。判決文は、こちらで確認することができます。

本件の事案は、以下の通りです。
写真家であるLarry Philopotは、2013年7月に、ミュージシャンTed Nugentの写真を撮影し、2013年8月21日に著作権登録が行われています。この写真を、Philopot氏は、クリエイティブコモンズライセンス(CCライセンス)の下に、Wikimedia Commonsに写真を掲載しました。この際に、「Photo Credit: Larry Philpot of www.soundstagephotography.com」という表記を掲載すれば、自由に利用できる旨、記載がなされておりました。
一方、2016年に、Independent Journal Review(IJR)は、この写真を、「15 Signs Your Daddy Was a Conservative.」という記事の中で、Ted Nugentに言及しつつ利用したのですが、上記の著作者表記を行っていませんでした。利用の際は、写真について、上下を少しカットして掲載を行っていたようです(判決文8ページ)。
そこで、Philopot氏が、IRJ著作権侵害で訴えた事件となります。IRJは、この中で、当該利用はFair Useであると主張していました。地裁は、写真の著作権登録については重要な事実の紛争があるとしてSummary Judgmentを行いませんでしたが、Fair UseについてのIJRのSummary Judgmentを認めており、Philopot氏が控訴したものとなります。

アメリカ法におけるフェアユースは、①使用の目的や性質、②著作物の性質、③著作物が利用された量や質、④潜在的市場や著作物の価値への影響などから判断されます(107条)。特に、①の要件は、近時のAndy Warhol事件最高裁判決で、利用が「Transformative」(変容的、などと訳されます)であるか、「商業的利用」であるかが考慮され、フェアユースの中でも一番重要な要素であるとされています。
このうち、「Transformative」とは、原著作物とは「別の目的又は異なった性質」(Further purpose or different character)を有する場合とされています。判決では、Andy Warhol事件と類似して、Philpotは、ミュージシャンの肖像を撮影するために写真を撮ったのであり、IJRは、写真を、ミュージシャンを描写するために利用したため、利用の目的は同一であり、かつ、実際にも、Andy Warhol事件よりも「Transformative」の程度が低いとされています。商業的利用についても、IJRは営利企業であること、記事閲覧にお金はとっていないものの広告収入が2−3ドル程度があったこと、Philpotは第三者に写真をライセンスしていたことなどから、商業的使用としています。

そのほか、②③④も本件においては否定的であるとして、本判決では、フェアユースの成立を否定しました。そのほか、地裁で争われていた登録の有効性ーPublicationの有無も判断されています(否定)。

本件は、CCライセンスで、適切な表示が行われていれば、ライセンスの範囲内であったとされうる内容であったと思われます。ただ、その指定された表示が行われていなかったため、IJR側がライセンス範囲内であったとは主張できず、フェアユースを争わざるを得ず、そして敗訴してしまった事案ではないかと考えられます。
この判決からは、CCライセンスが付与されているからといって、なんでも無料で使えるというわけではなく(表示だけではなく、商用利用不可、改変不可、といったCCライセンスもあります)、都度、どのようなライセンスが付与されているかを確認し、適切な条件を守ることが重要であることを教えてくれます。



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