「星の王子さま」を読んで¦作品を愛するということ
○「星の王子さま」を読んで
大切なものは目に見えない。
大切なものが、たった一つあるだけで、
そのものの存在の有無だけで、
私の世界は天地がひっくり返る。
どれも似たようなものに見えるものも、
本当は誰かの大切なものであるのを、
私たちは忘れてはならない。
目に見えるものよりも、
心で見えるものを大切にすることを、
いつまでも忘れないでいたい。
この本は、今読んで良かったと思う。
数年前の私なら、この物語の本当に大切な
ところを拾えなかったかもしれない。
大人というのは、どうにも心でものを見るのが
苦手になってしまう、縛られた不自由な世界に
住んでいるから、苦しんでしまう。
そんな目を、安らかで純粋な心で癒し、
少しだけ視点をズラして見せたのなら、
どんなに幸せなことだろうか。
○作品を愛するということ
読書や映画というのは、
たまに思い立ったように一気に食い漁るのだが
ひと通り食い漁った後で、
そのものが人生においての大事な出会いであり
帰路であったかのように感じて、
それはそれは大事そうに愛しく表紙をなぞり
胸に当て抱きたくなるのだ。
そんな愛しい出会いを、心の本棚に
ひっそりと立たせては眺め、耽りながら
好きな言葉や受け取った感情を引き出して、
誰かと共有できたのなら、夢見心地になるだろう。
この本を読むまでは、何千何万、何億もの、
ただの''本''でしかなかった。
そして私自身も、周りの人間も、
うじゃうじゃいる人口の、
宇宙から見たらほんのちっぽけな、
ただの''人間''でしかなかった。
しかし、この本を時間をかけて読み、
愛してしまったから、私にとってこの本は
たった一つの、尊くかけがえのない、
心の本棚の、唯一の一冊となった。
同時に私という人間も、少し離れた人間も
どこか遠くに暮らす顔も知らない人間も、
この世界でたった一人の、
誰か大切な人にとっての唯一の
尊く愛しい存在であるということを、
心の底から実感することができた。
なんだか腹の奥が、熱くなった。
こんなにも素敵なお話に出会うことができて、
幸運に思う。
サンタさんのプレゼントを待ち遠しく思い、
心躍らせながら眠りについたあの夜を、
思い出すことができたような気がする。