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80歳の俺へ~人生ブランコ 8月30日「たばこを吸うのがバレる」
8月30日と記したが正確には日が明けて31日が気持ちが30日なので
まだ、30日だ。パートナーが録りだめしていたあさイチの人生を見る。人生相談でさだまさしさん、松重豊さん、所ジョージさんが視聴者からの質問に答えている。テレビにおける人生相談とは実にベタな企画だ、中島らもさんぐらいのまるで参考にならない答えぐらいがちょうどいいものだよ!と思っていたがいざ、見始めると三者三様の答えが実にいい。また、それぞれ別の空間で答えるという演出が変な同調とかもないので、ベタな企画ながら撮影手法、演出がいいと久々に感心する。
で、所さんの「80代の自分から見たら、まだ40代でしょ」ってのが今更ながらにグッとくる。かつてのダルビッシュが歳を取った自分がそれでいいのか?という言葉に発奮して20代の今から頑張ろうという言葉も思い出す。そう、この考え方すら50を超えると初モノではない。けど人生ブランコで行ったり来たりでまた、ここを通過したタイミングでもあるのだ。
それならばと、三日坊主も覚悟で思いのたけを記すのも今宵の一興だ。どうせ俺の文章など、誰も読んじゃいないのだ。暗闇に叫ぼうが誰にも迷惑を掛けないオナニーな文章だ。強いて言えば、文章を書きたい気持ちに駆られるが他人様に評価されたいとか、いつか本にしたいとか映画化されるにはとかとかく欲望にまみえるがあまり、結局同じところを行ったり来たりする毎日だ。でも、80歳の俺からすれば今のお前はまだ、頭も気力も多少なりとも働くだろうと、説教されるかもしれないと考えると駄文だろうと、無意味だろうと評価されなくても、とりあえず日記みたいに記すのも趣味もなく、特に推しもない俺にはぴったりじゃないかと思う。
さて、最大級とかなんとか今年のボジョレーヌーボーは的なお決まりのフレーズを聞くが実際のニュースに触れれば、そんな呑気な思いすら不謹慎なレベルへと突入している。今日はいつもながらSNSの運用代行のクライアント先の編集作業が日常の業務である。日頃が家で仕事をするパートナーは今日は出社するようだ。
「もう、出なきゃ」とそそくさと化粧をする彼女。
「やばいよ、もう9時だ。10時には出なきゃいけないのに」と呟いてる。彼女は家を出る。かたや、俺はというといつもならカフェで編集作業をするのだが、今日の天気を鑑みるとどうしようかと迷っていた。カフェについた時点で靴がグショグショになって、奥歯にパイナップルの欠片がつまって取れないような、あのたまらない違和感を抱きつつ仕事をするのはまっぴらだと、頭が過っていた。とはいえ家に閉じこもって作業するも変わらぬ景色にうんざりもするだろうと、思案していた。
そして彼女が雨対応の長靴みたいな靴を履いて、出かけの準備を整える。こんな時の僕は余裕がある時はエレベーターまで送ることを決めている。愛情表現かな、どうだろう。自分でもよく分からない。なんとなく離婚して別れたカミさんからは一切そんなこともなく、パートナーとの暮らしにおいて「感謝」と「見送り」は愛情表現だ。と50過ぎた今強く思っているからだろう。自分はされた経験がないからこそ、相手にはやりたい思いが強い。エレベーターを降りていく彼女。毎度の風景だが、昔の恋愛バラエティー、ラブアタックで姫に振られた男たちが椅子ごと沈むことが過る。といってももはや分かる人もわずかか。
彼女が出かけた。どうしようかと思うがニコチンが切れている。カフェに行ってからタバコを吸ってもいいが、もうもたない。「どれ」とタバコを取り出し、外で吸おうかと思った瞬間である。
「ガチャ」とドアが不意に開く。
「んんん」と言葉にならない音が出る。
手元には隠しようのないタバコが、、、。
「マスク忘れちゃった」と彼女は言う。
電車に乗る際は未だに徹底して彼女はマスクをする人だった。家を出たがマスクをするのを忘れ、引き返してきたのであった。
「ヒデさん、何をやってるの?タバコ?」と彼女は言い、サッと家を出た。3か月ぐらい前に見つかった時は彼女のひどく落ち込み姿を見ては「次は見つかってはならぬ」と、堅く決意をしたがまた、やらかしてしまった。
「ああー」と何をやってるんだ、俺は。部屋に戻り落ち込む。きっと怒ってるんだろうなと思いつつ、10分後には開き直る自分がいる。浮気がバレたとか、ギャンブルで使い込んだとかそんなレベルに比べればとマシじゃないかと。けどやっぱり罪悪感が付きまとう。ごめんよ、俺だって止めたいんだと叫ぶがどうにもならないこの頃だ。
彼女が仕事を終えて帰宅したとき、どうなることやら?とのどに引っかかった魚の骨のような心のイガイガを抱えたままに編集作業をしこしことする。スマホで編集やってるから3時間も経つと目がボロボロになる。遠くを見ると焦点が合わないが、今日は最低2本はこなさないといけないから余計に目の負担が大きい。
途中、東出昌大さんの再婚にまつわる毀誉褒貶を見つつ、唐田えりかの今としては「極悪女王」に出るんだなとか思いながら、同世代の鈴木おさむさんが企画、脚本、プロデュースかと比較し、軽く落ち込みながらも自分の仕事を取り抱える。これも人生ブランコで比較しちゃいけないと知りつつ、ついやっちまう自分がいる。
今日の最低のノルマをこなし、夜飯を作る。冷蔵庫には先日、作ったゴーヤチャンプルの残りのゴーヤが半分残っている。彼女、喜んでたよなと思い出し、せめての罪滅ぼしじゃないけどいそいそとする姿勢も大事だろう。けど、普段から料理もしてるから「これはいつも通りの姿なのだ」と言い聞かせる。というのも浮気をした人ほど優しくなるという人生のアフォリズムを俺もよく知っている。なので、自分の気持ちとして罪滅ぼしの気持ちといつも通りという言い訳のごった煮でゴーヤチャンプルを作っては写真を撮って、彼女にLINEを送りつけるのだ。
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「ありがたい ありがたい」猫のスタンプが届く。
朝の出来事には何も触れない。
結局、家に戻ってもタバコの事には何も触れない。きっと怒りかがっかりか、諦めか、彼女の脳内にもいろいろ過ったに違いないがいつもよりぎこちない時間が過ぎていく。
そして二人で「あさイチ」を観る。
人生ブランコ、ぶーらぶら。明日は何か新しい発見はあるのかな?
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![島津秀泰(放送作家・動画制作・インタビュー・文章作成)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50977258/profile_c15949ddfe84703e930d6ee03c41abd8.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)