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10年越しのSTART DASH SENSATION

12月15日日曜日、私は横浜にいた。
「アイカツ!」あかりGENERATION 10周年記念イベント『キラッキラ!』
を見に行くためだ。
ここに来るまでに、10年かかった。

簡単に説明すると、アイカツ!はゲームセンターにあるカードダスゲームを元にした女児向けアニメだ。
主人公の星宮いちご、その後輩の大空あかりを中心としたアイドル達の成長が描かれる。

元々アイカツ!が大好きだった。
いちごちゃん世代の途中から見始めたので、あかジェネは最初から見ていることになる。

ずっと大好きだった。どれくらい大好きかと言うと、今でもカラオケで『START DASH SENSATION』を入れると、イントロの1音目が鳴った瞬間、映像にあかりちゃんが映った瞬間に泣いてしまい、歌いながら号泣し続けるくらい好きだ。なので絶対ヒトカラでしか歌わない。

でも、当時は1人でライブに行く勇気がなかった。そのうちアニメが終わり、当然スターアニスのラストライブも行けずじまいで。もうアイカツ!のライブとは縁がないものだと思っていた。行ける時に行っておくべきだった、とずっと後悔していた。
そんな時、目に入ってきたのがあかジェネの10周年イベントの告知だった。

転職先は激務で、明日の月曜日も朝が早い。残業も何時まであるか分からない。そのせいで最近はマトモに趣味も楽しめなかったけれど、全てを天秤にかけて『後悔したくない』が勝った。

マスクで隠れるのに、誰にも会わないのに久々にフルメイクをした。私服を吟味し、約1年ぶりに履いた冬用スカートはウエストがキツかった。
いつぶりか分からない香水をほんの少しだけつけて、あかりちゃんのイメージカラーであるマゼンタピンクのアクセサリーもつけた。

電車の中では、久々にお笑いのポッドキャストではなくアイカツの曲を聴いて向かった。
信じられないと思うが、Spotifyをお笑いラジオを聞く以外で使ったことがなかったため、無料で音楽がフルで聞けるんだ…と謎の感動があった。あの頃はずっとウォークマンでアイカツ!の曲を聴いていたのだ。

家で眠っていたホワイトスカイヴェールコーデのあかりちゃんのアクスタも持ってきた。数年前の一番くじの景品だったのだが、なんと自力で引き当てたのだ。家で開けた瞬間泣くほど嬉しかったのに、今日の今日まで棚にひっそり飾られているだけだった。

才能に溢れ、仲間とスターダムに駆け上がっていった初代主人公いちごちゃんに比べ、あかりちゃんは作中で決して優秀には描かれない。
アイドル学校の受験に落ち、なんとか拾われて入学後も落ちこぼれ組として特訓を受ける。
いちごちゃんへの憧れで髪型を真似しブランドも同じ物を着ていた彼女が、いつしか自分だけの道を見つけてひとつひとつ未来を切り拓いていく。お天気お姉さんとして明るい朝を届けているあかりちゃんを現実世界で見ることができていたら、私の朝はもっと幸せだったかもしれない。
…この文章を打ちながらうるうるしている。そのくらい、あかりちゃんが大好きだ。

あかりちゃんが着るドレスのブランドのデザイナー、瀬名翼さんとの関係性も大好きだった。他のブランドのデザイナーさんはアイドルを導く立場であることが多かったが、瀬名さんはあかりちゃんと同じく駆け出しのデザイナーだ。一緒に手を取り合って、2人で階段を登っていく。瀬名さんは文字通り、あかりちゃんの翼なのだ。これで泣かない人はいるんでしょうか。

アイカツ!の曲はキラキラしていて、優しくて、絶対にひたむきだ。それが大好きだった。でも、それが今の私には眩しすぎた。
周りが昇進したり結婚する中、転職に失敗し、未来もないまま毎日電車で呆然としている。
そんな自分に、アイカツ!の曲は似合わないし受け止められない。大好きな気持ちは変わらないけれど、いつしか聞く機会が減っていた。

会場の入口はとんでもなく混んでいた。物販に一応並ぶも、半分くらいは売り切れ。
あかりちゃんのタオルももちろん売り切れだったため、代わりに服部ユウちゃんのタオルを買った。
服部ユウちゃんはいわゆるサブキャラクター的扱いで、グッズが出ることがあまりない。元々好きだったが、どちらかというと記念的に買った。

物販の列の外側には可愛いフラワースタンドがたくさん並べられていた。イラストも花もバルーンもキラキラしていて、夢の世界みたいだった。

入ってすぐに開演し、そこから4時間越えの長丁場。
でも、長さなんて全く感じないくらい充実していた。

アイカツ!は、キャラクターの声を担当している声優さんと歌を歌う歌唱担当の方が分かれている。つまり2人で1人のキャラクターを作り上げているのだが、ライブには確実にアイドル達がそこに存在していた。

歌唱担当の方々は、歌声や振付はもちろん、指先ひとつ取ってもアイカツ!のアイドル達だった。そこにみんながいた。
声優さんたちの生アフレコは、声だけなのにそこにアイドル達の存在を感じた。みんなが生き生きとしていた。
そして歌唱担当の方々も声優さん達も、驚くほど全てがあの頃と変わらなかった。私達の見ていたあかりちゃん達そのものだった。
それを生で見ることにより、そこに込められた想いも魂もダイレクトに届いて、とにかく圧倒されてしまった。
"命が吹き込まれる"という意味を、身を持って感じ取った。

そして、私はあの頃アニメで見ていたペンライトの光の一粒になることができた。
久々に聞いた曲なのに、全ての歌詞がわかる。頭の中で次のメロディーが鳴る。私の奥底に、アイカツ!は染み付いていた。

…本当は細かくライブの感想を書きたかったのだけれど、圧倒されてほぼ記憶がない。
その中でも印象的だったのはやっぱり、10年越しに服部ユウちゃんに歌唱担当がついたこと。

サブキャラクターのユウちゃんには声優さんはいたものの、歌唱担当の方はいなかった。つまり、持ち歌がなくライブの出番やアニメのCGもない。
そのユウちゃんに、新曲が与えられたのだ。
私は思わず、物販で買ったユウちゃんのタオルを握りしめた。
ユウちゃんの新曲は彼女のアイドル活動と、あかりちゃんとの関係を歌ったもので、メロディーも歌詞も胸に刺さった。何より、10年間待ち続けたファンの人たちの心を思うと感慨深かった(余談だが、私はデレマスで声がない&つく見込みもないアイドルを10年近く担当しているのでその気持ちは良くわかる)。
彼女のアイカツ!はまだ、始まったばかりなのだ。


私の大好きな『START DASH SENSATION』の、その中でも大好きな歌詞。
「未来向きの今を キミに見せるね」
この歌詞は明確に私達ファンに向けた歌詞だとずっと思っていた。
アイドルは未来を見せてくれる。そのために走り続けてくれている。それをずっと、あかりちゃんやアイドル達に対して思っていた。

でも今回イベントに行ってみて、キャラクター達だけではなく、キャラクターに命を吹き込む全員が「未来向きの今」を私達に見せてくれているのだと思った。
最後の挨拶で感極まって泣いてしまったあかりちゃんの歌唱担当のるかさん、私達(キャスト側)がどんなに愛していても、皆さんがいなければ10周年をお祝いすることはできなかったと言ってくれたあかりちゃんの声優の下地紫野さん。10周年だけではなく、ここからずっと先も続けていきたいと言ってくれていたキャストの方々。そしてそう願ってくれているであろう全ての関係者の皆さん。
作品としては完結していても、みんなが"未来向きの今"を私達に見せてくれていた。

『START DASH SENSATION』の、もう一つの大好きな歌詞。
「頑張ったぶんだけ 遠くまで行こうね」
これはアイカツ!だけのみならず、自分の推しているアイドルやキャラクター全てに思っている。そのくらい大好きな歌詞だ。
それを、やっぱりアイカツ!にも強く思った。
できることならばずっと遠くまで走り抜けてほしい。

10年越しに初めて浴びたアイカツ!の世界は、やっぱりどこまでもキラキラしていて楽しくて、ずっとこの想いを忘れたくないと思った。
いつかまた、アイドルのみんなに会うことができますように。それまでは生き延びたい。
























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