「エールとノエル」の聴きどころ!その①
こんにちは、田尻です。
「エールとノエル」まで2週間となりました。これからコンサートに向けて、聴きどころや元ネタ、音源などをご紹介できたら、と思います。
エールとノエル
タイトルの「エール」はフランス語で、歌、歌曲、「ノエル」はクリスマス、という意味です。
このコンサートの前半は17-18世紀のエール・ド・クール、後半は同時代のクリスマス・キャロル、というプログラム構成になっております。
エール・ド・クール
エール・ド・クール(宮廷歌曲)って、何??どんな音楽??と思われる方も多いと思います。
詳しくは関根敏子先生の解説が当日プログラムに掲載されますので、ここではざっくりご説明しておきます。
17-18世紀フランスの宮廷では、音楽は社交の場で必要不可欠であり、宮廷にはおかかえ音楽家がたくさんいました。特にルイ14世は音楽を愛し、自らも踊り手として舞踏会に参加していたくらいなので、宮廷には音楽家が溢れていました。そんな宮廷で流行っていた歌曲を前半プログラムではお送りします。
内容は恋愛の歌、お酒の歌、と世俗なものが多く、また編成も歌と伴奏楽器(テオルボ、チェンバロ、ヴィオール)と小さなものでした。
当時の社交会の様子が分かる絵画をご紹介します。
ルイ14世のアルザス遠征の祝勝会の様子を描いたものだそうです。服装や髪型などその当時のファッションがよく分かりますね。
ちなみに左下で楽譜を持っている男性が、今回のプログラムでも多数登場する作曲家マルカントワーヌ・シャルパンティエです。
マルカントワーヌ・シャルパンティエ(1643-1704)
シャルパンティエは17世紀フランスの代表的な作曲家であり、舞台音楽、宗教曲、器楽曲と多数の作品を残しています。Te Deum h.146の前奏曲は誰もが耳にした事があると思います。芸能人格付けチェックで流れるアレです。
また彼はローマに留学し、ジャコモ・カリッシミに師事しています。フランスにイタリア音楽の様式をうまく落とし込んだ作曲家と言えるでしょう。
前半プログラムで歌う予定のSans frayeur dans ce bois(この森の中に)は、イタリアのCiacconaの活発さとフランスのChaconneの優雅さを掛け合わせたような作品です。
歌詞の大意は以下です。
森でティルシスと出会ったけど
全く心がときめかないの
私は危険を求めてないけど
危険である事を怖がっていたいの
実際に聞いてみましょう♪
歌は奇才パトリシア・プティボン。色っぽく自由奔放な感じが歌詞とマッチしていて面白い♫ 最後のアドリブのAh〜が良い感じです。
この曲は文芸誌「メルキュール・ギャラン」(1680年3月号)に掲載されています。この文芸誌は当時の流行りの詩、逸話、ニュース、舞台、芸術批評、歌、ファッションなどを取り上げていました。当時のシャルパンティエの人気の高さが伺えます。
人気が高い宮廷歌曲作家といえばミシェル・ランベールの名前をあげないわけにはいかないでしょう。
Vos mépris chaque jour(あなたのつれなさはいつも)やOmbre de mon amant(私の愛する人の陰)は、もしかしたら聞いた(歌った)ことがある方もいらっしゃると思います。
ミシェル・ランベール(1610-1696)
ランベールは歌手・テオルボ奏者として活躍し、また声楽教師としても名を知られていました。1661年より宮廷音楽隊の楽長となり、死ぬまでその職を務めました。彼は宮廷歌曲の作曲家としても人気が高く、歌曲集がバラール社から度々出版されました。
今回、演奏するD’un feu secret(密やかな炎)はLes Airs de Monsineur Lambert(1660年)に収録されています。全てdoubles(ドゥーブル)付きの歌曲集です。
ドゥーブルは有節歌曲で2番以降に流麗な装飾をつけて演奏していく様式の事で、その装飾は事細かに楽譜に記されています。
楽譜の見た目も流れるような美しい曲線を描いています。
歌詞の大意はこんな感じです。
愛する事をやめれば苦しみは安らぐ
だけど私はそんな苦しみが好きなのだ
フィリスを愛する事をやめた時
それは生きることをやめた時なのだ
では、演奏を聴いてみましょう。
演奏はベルギーのテノール、ステファン・ファン・ダイク、ヴァイオリンは寺神戸亮さん、ヴィオラ・ダ・ガンバは上村かおりさん。私の愛聴盤です♪
ドゥーブル、本当に美しい。流麗という言葉がピッタリ♪
また冒頭の半音階でじわじわと上っていく旋律が、愛の炎でじわじわ焼かれ、悶えるようで、たまりません。
このようにフランス宮廷歌曲は同時代のイタリア歌曲に比べると表現は大人しく素朴なものが多いです。婉曲表現や比喩を巧みに使い、愛を表現していく、これがフランス風なのかな、と思っています。
フランスの愛の表現、勉強になります!
「エールとノエル」の聴きどころ!その②
https://note.com/ensemble_germes/n/n49383604020b
演奏会の情報はこちら
『エールとノエル』
~17-18世紀フランスのエール・ド・クールとクリスマスの歌~
17〜18世紀のフランスで貴族に親しまれていたエール・ド・クール(宮廷歌曲)。その内容は恋の歌、牧歌、酒の歌と様々です。宮廷のサロンでお話やお酒を嗜みながら音楽を楽しむ。そんな歌曲と、当時フランスで親しまれたクリスマスソングを織り交ぜたコンサートをお届けします。楽しいひとときを過ごしていただけたら幸いです。
日時: 2022年12月4日(日)開場15:30 開演16:00
場所: 日本キリスト教団 島之内教会
来場&配信チケットはこちら
http://www.sasakihiroko.com/22-12-04/
《プログラム》田尻健監修
第1部【宮廷で語られる恋愛模様】
第2部【クリスマス・ミサ〜フランスのノエル】
M.ランベール M. Lambert (1610-1696)/ 秘められた熱情 D’un feu secret
M.A.シャルパンティエM.A. Charpentier (1643-1704) / 不安もなくあの森で Sans frayeur dans ce bois
クリスマスの歌 Chants de Noël /
言ってください、マリアよ Or nous dites Marie
若き乙女は Une jeune pucelle 他
【アーカイブ配信も行います!】
遠方の皆様向けにアーカイブ配信も決定→チケット発売は12/14まで。配信は12/15-25に行いますのでご注意を⚠️
配信券は2000円、
パンフレットデータ/対訳/解説付き配信券は3000円です。