古楽アンサンブル レゼポペ広島公演をより楽しむために⑤
さて紹介コラムも最終回。最後は作曲家をご紹介です。
プログラム順に作曲家を紹介していきますね。
セバスチャン・ル・カミュ(1610-1677)
ル・カミュは、ルイ13世に支え、王妃マリー・テレーズの音楽総督を務めた。またテオルボ奏者、ヴァイオリン奏者でもあった彼は「王の24人のヴィオロン」という王室オーケストラにも所属しており、当時の宮廷で重要な位置にいる音楽家だった。彼の歌曲集はバラール社から1656年から1717年にかけて出版されている。
ジョゼフ・シャバンソー・ド・ラ・バール(1633-1678)
ド・ラ・バールは音楽一家に生まれ、幼少期から英才教育を受け、その優れた才能から王室礼拝堂のオルガニストに任命された。ルイ14世に献呈された「2声のアリア集(1669年)」は全ての収録曲にドゥーブル(2節以降に施される流麗で精巧な装飾)が記譜してある。
マラン・マレ(1656-1728)
マレは貧しい靴屋に生まれ、幼少期から音楽の才能を認められ、サンジェルマン=ロクセロワ教会の聖歌隊で音楽教育を受けた。彼はヴィオールの名手であり、宮廷音楽家として雇われ、1679年から1725年まで王室のヴィオール奏者を務めた。またリュリから作曲を学び、器楽曲からオペラまで数多くの作品を残している。特に彼の5巻に及ぶ「ヴィオール曲集(1686〜1725年出版)」は当時の宮廷で非常に人気があった。
ジャン=アンリ・ダングルベール(1629-1691)
ダングルベールの幼少期の音楽歴については分かっていないが、ジャコバン教会のオルガニストとしての活動が彼の経歴の始まりであり、その後、オレルアン公フィリップ1世の専属クラヴサン(チェンバロ)奏者、王室音楽教師および王室クラヴサン奏者として活躍した。「クラヴサン曲集(1689年)」が出版されており、その中にはリュリの作品をクラヴサン用に編曲したものもある。
オノレ・ダンブリュイ(16..-17..)
ダンブリュイは声楽教師であり、ミッシェル・ランベールの弟子であった。彼の歌曲は宮廷生活や学問的・芸術的議論を紹介する文芸誌「メルキュール・ギャラン」に度々掲載された。彼の歌曲集(1685年)は師であるランベールに献呈。ド・ラ・バールの歌曲と同様、精巧なドゥーブルが記譜されている。
マルカントワーヌ・シャルパンティエ(1643-1704)
シャルパンティエは17世紀フランスの代表的な作曲家であり、舞台音楽、宗教曲、器楽曲と多くの作品が残っている。彼はローマに留学し、オラトリオの始祖ジャコモ・カリッシミに師事し、自身もオラトリオを作曲する等、イタリア音楽様式をフランスへと持ち帰った。彼は宮廷とはあまり縁がなく、ギーズ公爵夫人のマリーに楽長、歌手として仕えていた。手書き楽譜のオートコントル(カウンターテナーではないハイ・テナー)のパートに彼の名前が記されている事から、彼の声種が想像できる。マリーの死後シャトル公フィリップの音楽教師、サン・ルイ教会の楽長、サント・シャペルの楽長を務めた。彼の出版物にはまとまった歌曲集はないが、メルキュール・ギャラン誌やバラール社出版の「厳粛なアリアと酒の歌」歌曲集に散らばって収録されている。
ルイ・クープラン(1626-1661)
クープラン一族は17世紀から19世紀初頭までフランス音楽史に燦然と名を残した一族だ。一族で最も有名なフランソワ・クープラン(大クープラン)はルイの甥である。サン・ジェルヴェ教会オルガニストの地位は代々クープラン家が占めていて、ルイがその初めのオルガニストであった。また彼は宮廷音楽家としてチェンバロ奏者、ヴァイオリン奏者で活躍したが、35歳という若さでこの世を去った。彼の音楽は生前出版されなかったが、約200曲の手稿が残っており、そのいくつかは20世紀半ばに再発見された。彼はプレリュード・ノン・ムジュレ(拍子のない前奏曲)という新たな様式を生み出し、その特殊な記譜法を考案するなど、革新的な業績を残した。
ジャン=バティスト・リュリ(1632-1687)
リュリはフィレンツェの粉挽き職人の家庭に生まれた。14歳の時に渡仏後、音楽の才能を見出される。王の夜のバレ(舞台舞踏)に出演した事をきっかけにルイ14世に気に入られ、国王付き器楽作曲家に任命された。1661年フランスに帰化し翌年には同僚だったランベールの娘と結婚。リュリは踊りを好んだ王のため多くのバレを作曲し、俳優・劇作家のモリエールとコメディ=バレ(舞踏喜劇)を多数生み出し好評を博した。今回演奏する「イタリア人の嘆き」はコメディ=バレ「町人貴族」の第5幕のアリアだ。また彼はフランスでは馴染まなかったオペラにも目を向け、仏語によるオペラを多数作曲。今年12月に北とぴあで上演予定の「アルミード」は、彼のトラジェディ=リリック(叙情悲劇)の中で最も有名な演目だ。リュリはイタリア人ながらもフランス音楽を学び、宮廷舞曲や管弦楽の新しい様式を開拓した。フランス風序曲の構成は彼によって確立され、後世の作曲家へ与えた影響は非常に大きい。
ミッシェル・ランベール(1610-1696)
ランベールは幼少期、ルイ13世の弟オレルアン公ガストンに才能を見出され、聖歌隊で音楽教育を受ける。彼は歌手・テオルボ奏者として活躍し、また声楽教師としても名を知られるようになった。1661年より宮廷音楽隊の楽長となり、死ぬまでその職を務めた。彼は宮廷歌曲の作曲家として現在でも広く名を知られている。彼の歌曲集がバラール社から度々出版されていることから、当時の人気の高さをうかがえる。
聞きなれない作曲家も多いと思いますが、17世紀フランスで大活躍していた作曲家ばかりです。
これまでのコラムはこちら
クレール・ルフィリアートル(コラム①)
ステファン・フュジェ(コラム②)
エマニュエル・ジラール(コラム③)
プログラム紹介(コラム④)
コンサートの情報はこちら
古楽アンサンブル レゼポペ 広島公演
~夜のままで Let the night be long~
フランスから近年人気の高い古楽アンサンブル来日!!
フランス17世紀の宮廷歌曲が広島の秋の夜に響き渡る。
【日時】
2022年11月10日(木)19:00開演(18:30開場)
【場所】
広島市東区民文化センター スタジオ1
【出演】
古楽アンサンブル 「レゼポペ」
ソプラノ: クレール・ルフィリアートル
チェンバロ: シュテファン・フュジェ
ヴィオラ・ダ・ガンバ: エマニュエル・ジラール
【プログラム】
ル・カミュ:夜のままで
ランベール:楽しもう、甘い安らぎを
シャルパンティエ:泉のほとりで
マレ:シャコンヌ
リュリ:イタリア人の嘆き
ダングルベール:組曲 ト長調 ほか
※曲目は変更になる場合がございます。
【チケット】
一般: 3,000円(当日3,500円)
学生: 1,000円(当日1,500円)
オンラインチケット:TIGET (https://tiget.net/events/202075)
【お問い合わせ】
ensemblegermes@gmail.com
090-2000-1986(アンサンブル・ジェルム)
【主催】
Ensemble Germes