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詩) 冬の海辺

   冬の海辺

豚ならば豚らしく
鳥ならば鳥らしく
人ならば人らしく
役人ならば役人らしく
芸術家ならば芸術家らしく
僕ならば僕らしく
君ならば君らしく・・・

そんなこんなで波打際に
僕は何時までしゃがんでいるのやら

それほどに
波の舌先に光るダイヤの粒は美しく、軽(かろ)く
重ね重なる潮騒は懐かしく
水平線はやっぱり水平なだけで
だから僕は立ち去りもせず

それほどに
遮るもののない風は僕を震わせ
足の指をなめる塩水はつめたく
水平線の向こうには辿り着く岸辺も見えなくて
だから僕は服を脱ぎ捨てもせず

ふと見れば
波の中から来たらしい
横這いする遠国の使者

僕はそれに砂を投げながら
啄木の歌を思い出しながら
ぼそりぼそりと呟く・・・

豚よりも豚らしく
人よりも人らしく
僕よりも僕らしく
君よりも君らしく

          (1982.2.4)

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