元祖マッチョ重機 『つちをほらなくなったスチームショベル』
つちをほっているときが、なによりも幸せ。働き者のスチームショベルのスティーブがある日、子どもとおばあちゃんのちょっとした会話を聞いて、つちを食べることをやめて工事現場からはなれて大騒ぎ。自分の仕事に迷ったり、わからなくなってあれこれ考える。なんだか身近な日常風景。モヤモヤを乗り越えて元気になれる自己啓発「絵」本。
スチームショベル(steam shovel)は、土砂や岩石を掘削したり移動させたりする、蒸気を動力とする掘削機(くっさくき)。ウィリアム・オーティスが1839年に蒸気ショベルを発明し特許を取得。鉄道網の拡大で需要が増え、土木工事に欠かせない存在になった。1904年着工から10年の難工事を経て建設された「パナマ運河」。20世紀最大の土木工事の一つと呼ばれているパナマ運河建設工事で、スチームショベルが使用されていました。今でも世界の海上交易の重要ハブとして機能している場所です。需要が増え、技術力があがると、安価で省力化が進むのは仕方のない運命。1930年ごろからディーゼル駆動のショベルに移行し徐々に使われなくなります。現在は海外の産業博物館や個人のコレクションとして残されており、イベントやワークショップで見ることができるようです。スチームショベルが動いている姿は動画でチェック。映画「バトルシップ」で、退役したおじいちゃんたちがいきいきと、同じく今は引退したかつての相棒である船を、誇らしげに動かすシーンを彷彿とさせます。100年以上前の重機が動くこともさることながら、土を掘って、移動させるという仕事は変わらなくて、「すくって・まわして・おとす」の一連の動作をひたすら見続けてしまいます。今となってはオーバーアクションにみえるレバー操作で、アームやブームが大きな軌道を描くとなると、かっこよさしかない。これからの重機が自動運転になるにしても、PCの前ではなくで、コントロールは室内で人がちょっとオーバーアクションでHMDつけたりしてやって欲しいな。
つちをほらなくなったスチームショベル|ジョージ・ウォルターズ 文|ロジャー・デュボアザン 絵|こみやゆう 訳|好学社|2018年(1948)