ちょっと背伸びをしたあの日のワイン
こんにちは。博多店の安徳(あんとく)です。
皆さんが今までに飲んだ中で、印象に残っているワインの造り手はいますか?
その理由は素晴らしい品質のワインだったから、自分の好みにピッタリのワインだったから、など色々あると思います。
そして自分にとって特別なシーンで飲んだワインというのもまた、記憶に残りますよね。この造り手のワインを飲むたびにあの時の光景が目に浮かぶ、そんな思い出のワインが皆さんにもあるのではないでしょうか。
私にも何人かそういった思い出深い造り手がいますが、そのうちの一つは、飲んでから数年後にさらに印象が深くなった造り手です。
エノテカに入社するだいぶ前の話ですが、私が大学卒業後に社会人生活をスタートしたのは東京に本社のあるコーヒーの会社でした。輸入したコーヒーの生豆を焙煎し、卸、小売をする事業です。私はレストランやホテルで提供されるコーヒーの卸部門に所属していました。
当時同僚が担当していたお取引先が、他社より事業を引継いでフレンチレストランを運営されることになり、取引先のご好意で少しサービスしていただけるということで、同僚女性グループでディナーに出かけた日のことです。
広尾のフレンチレストランで出会ったワイン
社会人2、3年目の当時はまだフレンチレストランに同世代グループで行く機会などなく、とてもドキドキ、ワクワクしたことを覚えています。
しかもそのレストランの場所は広尾。オープンテラスのカフェで外国の方が新聞を読んでいたり、輸入食材を売っているようなお洒落なスーパーがあったり、洗練された雰囲気の大人の街…そんな街でディナーだなんて、当時、新橋で働いていた私たちにはとても新鮮で(笑)、その日はちょっとだけ大人になったような気分になりました。
いざレストランに到着してオーダーをする際も内心ドキドキしていましたが、お店の方がそれを察してか「ワインはおすすめのものを選んでお持ちしましょうか?」と優しくおっしゃってくださったので、ホッとしながらお願いしました。
そして提供されたのはチリワイン。なんとなくフランスやイタリアのワインが出てくるのかと思っていたので少し意外な気もしましたが、グラスに注がれたそのワインの色はとても深みがあり、飲んでみると口当たりがまろやかで味わい深いワインでした。まだワインを飲んだ経験が少なかった私にも、素直に「美味しい!」と思えました。
そのワインはチリのモンテス社が造る「モンテス・アルファ・メルロ」でした。その時食べたお料理のことは覚えていないのですが、そのワインの銘柄はずっと記憶に残っていました。
今振り返ると、あの時のお店の方はワインをあまり飲み慣れておらず、予算も高くないであろう20代の女性たちに、値段は手頃ながらワインの楽しさを味わえるような魅力的な1本を選んでくれたのだろうと想像します。
コーヒーとワインの共通点
実はコーヒーもワインのようにフレーバーホイールがあり、カッピングというワインで言うところのテイスティングをして、「フルーティー」「スパイシー」「ナッティ」などの官能表現をします。
また、当時の上司からはお客様にコーヒーのプレゼンをする資料を作成する際に、ワインの商品紹介を参考にしたらどうだろうか、というアドバイスをもらったこともありました。
コーヒーの仕事をしている中で、同じ嗜好品でもあるワインというキーワードに幾度となく出会ううちに、私の中でワインというものがとても気になる存在になっていきました。
そしてワインの面白さにどんどん惹かれ、ついにはコーヒーの世界を飛び出し、ワインの世界へと飛び込むことになりました。
思い出のチリワインとの再会
その後、縁あって入社したエノテカは世界各国のワインの造り手とパートナーシップを組んでいる会社でした。なかでも強い絆で結ばれているのがチリのモンテス社です。私があの時レストランで飲んだ思い出のワインの造り手と数年後に思わぬ形で再会することになったのです。
ですが私がモンテスのワインを好きなのは、思い出のワインだからというだけではありません。モンテスのワインがビギナーにも、ワイン通の方にも愛されていることが素晴らしいと思うからです。
あの時、ちょっと背伸びをしてレストランへ行った私たちのようなビギナーにも「チリのワインってとっても美味しい!」と感じさせてくれるような温かさのあるワインを造り、一方ではエアラインのファーストクラスで提供され、ワインを飲み慣れたエグゼクティブたちをも満足させるようなワインも造ることができる―。
そんな懐の深いモンテスのワイン。販売していることが誇らしく感じられる造り手です。