短歌連作「町」
祭神が誰かも知らぬそれでいて榊の絶えぬちいさな社
煙突のあるあおぞらが残ったままの銭湯跡地
区分けされ新たな家が四つ建つ 清水さんちは女湯あたり
大臣とあだ名されてた高台のお屋敷ですら解体らしい
鬼瓦いなくなったらもうすぐにちいさな家が次々と建つ
屋根という屋根を真っ赤に染めてゆくハートの女王みたいな夕陽
新築の家から夕餉が匂う夜 ここは昔は花屋だったよ
星なんか元々見えない あの家の窓の灯りはあたたかそうだ
この町の生まれ変わりを見守って静かに朽ちた鳥居は見える?
※短歌連作サークル「あみもの」第十八号より
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?