短歌連作「ないものはない」
まず十字架を描く似ても似つかぬ似顔絵も最後は笑顔にできますように
台風の目の中の日は珈琲にミルクを落として混ぜないで飲む
少しだけ欠けてるカップを欠けたまま使って傷ができたっていい
君が言う「ストップ」を待つパルメザンチーズまみれになるワンルーム
たった今こころに穴が空いたのよちょうどいいから窓をつけよう
ひとりだと裸で歩いているようでぶつけた場所からくさってゆくね
春夏秋冬彩った永遠という意味を持つ店がなくなる
ほんとうに言いたいことと飲み込んだウィルキンソンのトニックの味
ロフトから東急ハンズ、無印と歩いてみてもないものはない
もう二度と会えないひとのさみしさを教えてくれよハレー彗星
この本の栞のひもが赤ければ君に結んであげたかったな
基礎工事のあと放置され新しく基礎を築くため壊される基礎
またねって言ったその時笑ってて安心をして少し眠れる
わたしが吐く二酸化炭素も何かしら役に立つかなヒメモンステラ
来世まで持っていくから覚えてるすべてが笑顔でありますように
※短歌連作サークル「あみもの」第二十四号より