本屋開業の種⑨ 本屋入門

(本文要約)

■ 受講理由は不明

■ それぞれの描く「本屋」

■ 種が、はぜる

(本文)

■ 受講理由は不明

「本屋入門」というゼミを開催する、と知ったとき、正直はじめは「うわぁ、こんなゼミ、誰が受講するんだろう…」と思った。と同時に「どうしよう。申し込まないと、締め切られてしまうかもしれない」とも。

「本屋入門」は当時白山にあった双子のライオン堂で行われた。月二回ほど集まり、毎回違う講師が登場し、課題が出て発表をする、という流れだった。

意外だったのは、「誰も受講しない」と思っていたゼミに結構な人数が集まっていたことだった。6~7名ほどはいたように思う。

なぜ受講を決めたのか、自分でもよくわからない。受講を決めた時も、まだ自分が本屋をやろうと思うとは夢にも思っていない。

ただ、なにか、本屋に人を呼ぶ術が知れるかもしれない、本屋が好きな人に出会えるかもしれない、とそんな思いが先にあったのかもしれない。

受講者たちはそれぞれ可能性のある本屋についてプレゼンしていた。

■ それぞれの描く「本屋」

受講も終盤になると、それぞれが描いた本屋を実際にやってみる、という実践編へと移って行った。

それぞれ銭湯とコラボする本屋など個性的な取り組みがあるなかで
特に面白かったのは実際に双子のライオン堂でも実践してみたのは「まわる本屋」だった。(名称は違ったかもしれない)

プラレールのような列車を100円均一で購入し、車両に本を載せて回すというもので、ただ眺めるだけで違う表紙が自分の目の前を通るというのは意外な出会いを引き起こすので、いつまでも眺めたくなる「本屋」だった。

私が提案したのは「地域と繋がる本屋」だった。ちょうど近くに絵本の寄付を募って絵本の貸し出しを行っている民間図書館兼レンタルスペースがあったので、そちらのスペースを借りて本屋をやらせてもらった。

実際やってみると人を集めることができず、集客の難しさを痛感した。

■ 種が、はぜる

受講内容は、いずれも長年本屋を見続けた人、本屋で働いている人、など「出版」ではなく「本屋」をキーワードに活躍する人々だった。

皆リアルな本屋の現状を知っているので、決して甘いことは言わない。それよりも本屋に必要な技術的な話や、実際にあったこと、これからの課題をそのまま伝えてくれていた。

うまい話はひとつもなかった。「ああ厳しいんだな」と思うばかりだった。

これを聞いて「本屋をやろう!」なんてキラキラした瞳で語る人は誰もいないだろう…

そう思ったのに。

「本屋入門」を受講しているとき、取次にいた頃をよく思い出していた。

K書房を救えなかったこと。本屋の店主は皆、疲れ切っていたこと。自分達の送った本が、本屋を苦しめていること…

どうすれば、本屋は元気になるんだろう。

どうすれば、本屋の魅力を知ってもらえるんだろう。

悩んでいるうちに、ふと気づいた。

自分には、本屋で働いた経験がない、ということに。

「本当に本屋が喜ぶ仕組みを考えるんなら、自分がそこに飛びこまないと答えが出ないんじゃないか…?」

だんだんとそんな気持ちになっていった。



今日はここまで


サポートしてくれたあなたに、幸あれ!