一緒にファミレスで食べませんか?

家族と暮らすシェアハウスで見た「かぞくのかたち」。
退去して数か月が過ぎても、苦しさが取れないので
ここに記録を残すことにした。

え、それってアリなの?

わたしたち家族が入居して一週間ほどが経ったころ
2つの家族が入居した。

うちひと組は、お向かいさん。
仲良くなれるといいな、なんて思いながら
挨拶した。

海が好きという少女は、海の生き物がプリントされた
かわいいクッキーをお土産に持ってきてくれた。

翌朝、
彼女はひとりでシェアハウス内で過ごしていた。

お母さんは?と訊くと
もう仕事に行った、と答える。

そっか。じゃあ、お水はこうして飲むんだよ。
飲んだ後は、食器を洗うんだよ。

と共有リビングでのルールをひととおり教えて
うちの子と遊びはじめた。

お昼になったとき、彼女から
「あの、お金持ってるんで
長女ちゃんといっしょにそこのファミレスに行きませんか。」

え、子供だけで?
というか、子供だけでファミレスって行けるの?

おごらせるつもりはないし、
うちのお金を使うつもりもない。

「ごめんね、今日はここで食べるから
ファミレスにはいかないんだ。お昼、ないの?」

彼女は「じゃあいいです」と言って
去っていった。

保護者不在に巻き込まれる

また別の日
彼女は「セブンイレブンに行きたい」と私に話した。

セブンイレブンは遠いのと、チビ2人連れて動くのが大変なので
「セブンイレブンには行けないけれど(安全で近い)ローソンなら
いまから行くけど、一緒に行く?」

と提案したら
「いや、セブンイレブン行きたいんで」
と言われて、結局彼女がひとりで行ったのかだれかといったのか
わからないけれど、
アメリカンドックと栄養ドリンクを買って
共有リビングのソファで寝ながら食べていた。

……飲み終えたビンも、袋も、捨てられずに放置されていた。

わたしが責任を持つわけでもないし
頼まれたわけでもない。

けれど、この場合、年の近い子を持つわたしが
否応なく巻き込まれる。

巻き込まれたのは私だけじゃなかった。
入居日がいっしょだった、もうひとつの家族も
同様に巻き込まれた。

なやむ、なやむ、なやむ。

母親はというと
帰宅したあと夕飯をつくるくらい。

「今日、一緒にファミレス行こうって誘われたけど
行けなくて」

と伝えたら
「あ、そーなんだ、誘っちゃってごめんねー。」
と軽く返されて、もう話せないな。
と思った。

どうしよう。
みんなでテレビ観ているときに、横でゲーム機の音量をあげて
「静かにしようね」
「ここでゲームしたいなら耳栓しようね」
と注意したら、両手で耳を覆って
わたしの注意そのものをシャットアウトしたことを
相談したいのにな。

共有リビングで走らないよ。
と運営からルールを教えてもらったのに
別の子に耳打ちして「走って」ってささやいて
そそのかすの、どうしてなんでしょう。
って相談したいのにな。

遊ぼう。といって、走り回らせて
それを注意しようとおもったら、さっと逃げて隠れるの
どうしてなんですか。
って相談したいのにな。

その日一日の、彼女の本当の行動を
なんにも知らない母親は、どうどうと
「うちの子はしっかりしてる」と言ってのけた。

もうなんでも一人でできちゃうからさー。
しっかりしてるからー。

「結果」しか見ないとこう感じるのか。
と思うと怖かったし、自分も肝に銘じようと思った。

もう、限界。

そんな日々のなか、彼女がケガをした。
前日に入居者が玄関先でガラスを割ってしまい
掃除したものの、破片がのこってて、ケガをしたらしい。

ちょうどその時間、長女がひとりで
シャワールームに入っていて、もうすぐ出るところだったので
様子をみに行かなければならなかった。

そんな大変なことがあっても、母親はいない。
その場に居合わせた入居者が、ケアした。

ちなみに、このシェアハウスには全体で共有する救急箱はない。

母親帰宅直後、ことの一件を伝えようとしたら
「あー、もうごめんねー」とさらっと言われ、通り過ぎた。

そして、ラインの全体グループに
「うちの娘どこかで見ませんでしたかー?
 見つけたら連絡くださーい」

と来た。
さがしまわったところ、私の娘が彼女を見つけた。

疲れ切っていた彼女は、共有リビングのソファで寝ていた。
入居者がそっと、毛布をかけた。

とてもあどけない、ちいさな少女が眠っていた。

ここで暮らしていくなら
彼女たちとどう向き合うかも、重要になる。

でも、叱られることに極端に怯える彼女に
どうコミュニケーションをとることができるだろう。

何度注意しても、逃げてしまう彼女と
どんな話ができるだろう。

答えが見つからないままに、ある日ふと
ラインの全体グループの「アルバム」に投げられた

一枚の写真。

子供が不在で、シェアハウスの面々と飲みに行っている母親の
写真だった。

………いやいや
いくらシェアハウスだからって。ちがうだろう。

夜中に子供を放って飲みに行くって、有り得ない。ありえないよ…
一緒に行く入居者にも驚いたけれど
学生がその「常識」を知っているか、もしくは知っていても注意できるかといえば、難しかったんだろう。

大人もいたけど、子育て経験のない人だから。知らないんだろう。。

うちの子3人をみるのにいっぱいいっぱいで
まだまだ、3人を受け入れてもらうことに必死になっている中
これ以上、彼女たちを理解しようと努めることはむずかしい。

さじを投げた瞬間だった。

おまけ

ちなみに、わたし自身は別に分かり合いたい、とも
仲良くなりたい、とも思っているわけではなかった。

そういうのは、無理にするものでもないし
相性がある。

けれども、自分の子が頻繁に遊びに誘われてしまう以上
無関心でいることはむずかしい。

家族と暮らすシェアハウスだからこその、悩みなのかもしれない。

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