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日記メモ:短篇小説ギョーム①

@サウンドトラック
https://music.apple.com/jp/album/below-the-waste/992890031

短篇連載sf : ギョーム

宇宙の果てを目指す宇宙船が闇の中を一直線に進む。
流線形で撫でるような曲線と先端には星を貫く槍のような形状。地球を捨てた人類はサスティナブルで永続的な旅を続ける。ここでは生まれてから死ぬまでこの船で暮らすのだ。揺籠でもあり棺桶でもあるこの船で。

温和な性格にDNAを改変されたヒトが人数調整されたコミュニティで暮らす。ヒトよりも高次な人工知能ギョームが管理するこのミニマルな社会は生殖機能を捨てたヒトと飛び交うドローンで構成されている。
そうまでして生きたかった人類の成れの果てだ。

ヒトは死ぬまでの時間をほとんどを仮想空間で過ごしている。膨大なデータベースから再現された地球にて。
そこでは自動生成された娯楽が随時更新されていく。
映画や音楽、小説、漫画など。好みの傾向を認識し、仮想的に作家というパーソナリティを作り出し模倣し、増殖する。

船内にオーケストラの音楽が流れる。女性のゴスペル、神々しい旋律。それは誰かの死を告げる音楽だった。1人の老人が亡くなった。葬儀という儀式は形式だけを残し、祈る手は神という存在も忘れ、その姿形のみが残る。遺体は熱処理された後に有機物質プリンタの素材に取り込まれる。この船において有機体は貴重なのだ。そして間もなく人工保育器から成熟した同タイプのヒトが生まれた。人種姿形もそっくりのそのヒトは祝福を受け、コミュニティの一員になる。

このコミュニティでは記憶が許されない、1日でリセットされるのだ。毎朝が新鮮、毎日がはじめまして。新しい記憶。そして、ギョーム以外の存在の記録は許されない。この社会において記録や記憶は悪なのだ。
誰も初めて会った相手を憎めないし愛せない。
それゆえの措置なのだ。

ヒトがロボットの様に振る舞い、
一つのパーツとしてこの大きなコミュニティを作っている。目的も忘れて人類は今日も宇宙の果てを目指している。 

出発後、5万年と少しが経過したところで社会システムが変更される。ギョームが推測し得ない"何か"に侵入されたためだ。

続く

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