【ギンコ・ビローバ】樋口円香 TrueEnd感想&考察【シャニマス】
【前置き】
・この記事は20’1021に実装された『【ギンコ・ビローバ】樋口円香』TrueEndまでのネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。
・筆者はノクチルの未所持カードが多いため、解釈違い等ありましたら申し訳ございませんん。【カラカラカラ】は運良く引けて履修しました。
嗚呼、樋口ィ……。
・今回のガシャ、僕としてはサポート霧子を絶対に入手したかった。いつか来るかもしれないDaンティーカの時代を虎視眈々と狙っているから。そして爆死した。280連回してPUは一枚も引けなかった。
・だから290連目で【ギンコ・ビローバ】を引けた時はかなり嬉しかった。ノクチルは限定が多く手持ちじゃユニットを揃えてあげられないけど、円香はかなり好きなアイドルなので。Wing編や【カラカラカラ】でのPとの軽妙なやり取りが強く印象に残っている。
・そして早速コミュを見て、絶句した。何だこれは。えっ、何その、そういう切り口って今まで無く、な、無くない?といった感じ。
・僕はノクチルをガッツリ履修している身では無いから知識不足は否めないけど、それでも感想を書きたかった。そのくらい衝撃的だった。シャニマスのTrueはどれも衝撃的なんだけど。明らかに今までと違う角度で殴られた。
・勝手が分からないのでとりあえずコミュの順番に沿って書いていく。感想というより、書きながら情報を整理して咀嚼していくような記事になると思う。自己満足の類だ。シャニマスやってて一番楽しい時間でもある。
(以下本文)
【ギンコ・ビローバ】
先にイラストとカード名から読み取れる情報について。
地味にレアな、プロデューサーが写り込んでいるイラスト。最後のコミュで車に荷物を詰め込んでいる最中だろう。円香は彼に背を向けて、風に舞ったイチョウに目を奪われている。
・視点は違うものの、プロデューサーに背を向けている構図は【カラカラカラ】と共通している。が、今回はコミュの内容を見たところ「背を向ける」理由が『本質を潜めたい』から『貴方を見ないでいてあげる』に変わっているように感じた。ここの解釈が一番自信ないし、人によって感じ方が異なる部分だと思う。詳細は後述。
・カード名である『ギンコ・ビローバ』はイチョウの学名(Ginkgo biloba)からだろう。イチョウと本コミュを関連付けられそうな情報を調べたら死ぬほど出てきたので、特に目を引いたものだけピックアップする。
まずはWikipediaに載ってるこれ。
種小名 biloba
種小名の biloba はラテン語による造語で、「2つの裂片 (two lobes)」の意味であり、葉が大きく2浅裂することに由っている[7]。
・なんとも不穏だ。決裂、あるいは根本を共有している比喩だろうか。種子である銀杏には(そこまで強くないけど)中毒性がある点も気になった。
・イチョウは生きた化石とも言われているそうで、「ミスター・オールドタイプ」繋がりでプロデューサーと重ねているのかもしれない。
・個人的に面白いなと思ったのは、漢方やサプリとして売り出されているイチョウ葉エキス「ギンコビローバ(ギンコビロバ)」だ。血流をスムーズにしたり思考能力を高める作用があるらしい。
・が、実際のところは眉唾モノで「そのような効果は無い」と立証する論文が上がっている。ホメオパシー等に代表される偽薬(プラシーボ)に属する成分らしい。「盲信」とか「自己欺瞞」とか、そんなワードを連想する。
01.「囀」
ここメチャクチャ面白い。
・料理番組で教わったレシピを昼休みに実践するプロデューサー。ただのスタッフとの雑談、それも仕事には直接関係が無い内容にも関わらず、交友をより深くするためにプライベートの時間を割いている。
・チャンスとばかりにプロデューサーを弄り倒す円香、最高だな。徹底的に自己を顧みないプロデューサーに相変わらず呆れている感じ。右の選択肢を選ぶと、円香もPと同じ歌を歌ってくれるぞ。
・「囀」はさえずる、と読む。Pの鼻歌がフィーチャーされているからそれ由来か。コミュのサブタイが漢字一文字で統一されているから、何か法則がないか探したけど難しかった。「囀」と「噤」を含む熟語って殆ど無いんだよな。 思い出MAXの『[フ]ゲン』を参考に、音読みから読み替えて、不転、不信、不金……というのは無理やりすぎるし……。
02.「信」
円香の昔のクラスメイト出てきた……!!!!!! 昔のって事は中学時代か、あるいは高校一年生の頃か。さすがに前者かな。彼女らはまさか円香本人が同じ車両に居るとは知らず、適当な噂話に花を咲かせる。
・円香はPに、自らの内面を理解した気にならないで欲しいと思っている。が、ありもしない噂話で誤解されることも避けたがっている。この2つは両立するし自然な心の働きだ。
・「何も知らずにいてもらいます」が本心であれば、やはり円香の中ではプロデューサーとその他大勢で少し扱いが違うらしい。この微妙な差を表現するための一幕だったのかなと思う。
・サブタイトルはPの言った「俺は円香の言葉を信じるよ」からだろうか。4つ目のコミュで触れられるけど、円香は言葉に対して凄く誠実で臆病なイメージがある。正しいとか間違っているとかではなく。曖昧なものに形を与えてしまう事の重大さを知っているから、慎重になるし躊躇ってしまう。
ここ感謝祭の「嫌です」っぽくて好き。
03.「噤」
「初対面の相手に厳しいとか非常識でしょ」の言葉通り、ビジネスシーンにおいて「作品に深い理解を示す、理想的なアイドル」を見せる円香。はづきさんに対してもこの様子だったみたいだし、凄い熟れてる印象を受けた。
・映画について。関係者に向けた感想はリップサービスでも、後にプロデューサーに語った個人的な感想を踏まえると普通に好みの内容だったらしい。映画の主役である男性は何の比喩なのだろうか。
・ピアノ、と聞くと透の共通コミュの印象が強い。ギンコ・ビローバのコミュに限ればプロデューサーを示唆している可能性もある。「最初は主人公をつまらない男だと思った」は、オーラで大袈裟な評価を集めてしまう透の事か、まんまプロデューサーか、どちらでもあり得るな……後者寄りな気はする。
・「噤」は口を噤む、黙るという意味だ。その割にこのコミュの円香はよく喋る。心にも無い事ほど流暢に話せて、最後にプロデューサーに問われた「好きなもの」のように本心に近い言葉ほど話せない。そんな捻れがある。いや捻れという訳じゃないな、それなりに有り触れた心情だ。誰だって本音を探られるのは怖い。円香は人一倍その傾向が強いけど。
何か考察するとき、この姿勢を忘れずにいきたい。
04.「偽」
結構驚いたコミュ。あの円香が、たまたま同席しただけの知らないアイドルを真面目に励ましている。悪態付いたりはしないだろうけど、こういうシチュエーションなら無視するような子だろうと思い違いをしていた。
・え、ええ~~~~~~????? 悪いものでも食べた??????
・サブタイ通り「偽」物の言葉であれど「今、この子が求めている言葉」なら言ってあげる、円香なりの優しさ。という安い語彙で表すこともできるけど、もっと内向的で悲痛なものを感じた。本心とは真逆の言葉を、本心のように語れてしまう。円香が臆病な自分を守る為に身に付けたスキルなのかもしれない。あるいは義務感、使命感に近い強迫観念か。わからない。
・このシーンでも、泣いていたアイドルに対して円香は「欲しい言葉をくれる、理想的なアイドル(ライバル)」であった。もちろん、虚像だけど。
・「理想的な姿」と「本来のいびつな自分」は、このコミュ全体を通して重要なテーマだと思う。ここで言う"理想的"は、「自分が望む」姿ではなく「他人が望む自分」の姿である。
・しかし、他者の心を察して最適な振る舞いができるという事は、ストレスから心を守るための身勝手さや鈍感さを備えていないという事でもある。表面的に物事は解決するが、常に自身に負荷がかかる。
・この機能は意図的にオンオフができる類のものではない。
TrueEnd.「銀」
個人的に、というか多くのプロデューサー(プレイヤー)達が驚いたであろう衝撃のTrueEnd。【カラカラカラ】はPが円香の内心を探っていくようなストーリーだったけど、【ギンコ・ビローバ】は円香がPの内心について思いを馳せる構図となっている。
・社長やはづきさん、アイドル達はもちろんのこと、仕事相手や商店街のみなさんにまで幅広く信頼を寄せられているプロデューサー。
・一方で、P本人の自己評価は決して高いとは言えない。むしろかなり低いように思える。自身が肩書に見合う人間ではないという自虐に近い謙虚さが、彼の仕事に対するやや過剰な熱意と献身に繋がっている。
・青臭い部分も含め、プロデューサーは「完璧なプロデューサー」ではない。そして不完全であるが故に、彼は際限の無い努力が出来てしまう。
・そして、その一連の情動はあまりに完成されている。プロデューサーを構成する全ての要素が上手く噛み合い、本来欠点になりうる部分も肯定され、周囲を巻き込んでより良い方へ導いている。成果を上げつつも歩みを止めず、自身より他者を優先するため誰からも好かれる、理想的な人間だ。
・そう、彼は「完璧なプロデューサーを目指す人間」として「あまりにも理想的」である。しかし、一歩引いて眺めると逆に不自然に思える。さすがに人として出来が良すぎる。
・彼は言った。「スーツを脱げば、自分はできた人間じゃない」と。今見せている理想的な彼の姿は、無理をして繕っている虚像かもしれない。
・試写会の感想を聴いた関係者や、励まされたアイドルの目に映っていた「完璧で、理想的なアイドル」がそうであるように。そして、その理想像の正体を円香自身は誰よりもよく知っている。
・プロデューサーの内心について、円香は思慮する。
「あなたは」
・そうすれば、きっと。
考察「見ないふりができるから」
最後の一言は、円香のどんな想いが現れたものなのか。最初の方に書いた通り、ここは人によってかなり感じ方が変わる部分だと思う。まずは初見で自分が考えた事から書いていく。
・当然一言で表せる心情では無いだろう。その上でこの言葉は、円香の捻れた優しさなのではないかと思った。ネガティブな救済を望むというか。
・言ってしまえば、円香とプロデューサーの人間性は根本で共通している。「誠実でありたい」「善い人間だと思われたい」「努力している部分を見せたくない」みたいな。これらを早い段階で諦め、自身を皮肉しつつ限定的なシチュエーションでのみ実行しているのが円香で、疑わずに全て完璧にこなしているのがプロデューサーだ。円香にとってプロデューサーは、アイドル云々の関係性をすっ飛ばして「人間として」眩しすぎる。
・円香は恐らく、最初はPの事を「理解できない別種の人間」として認識していた。けれど、「もしかしたら自身と同じ人間かも」と(真偽はどうあれ)気付いたのが今回のコミュなのかなと。
・そして「自分がそうであるように、貴方はその理想像の裏にどれほどの暗い感情を隠しているのか」という発想に至る。「もしかすると本来の醜い姿を誰も知らず、逃げ出す選択肢も存在せず、酷く辛い思いをしているのではないか」と、自分を重ねて憂慮する。
・ならばいっそ、手遅れになってしまう前に。彼を『プロデューサー』たらしめるスーツ(≒呪縛)なんて、ぐちゃぐちゃに引き裂かれてしまえばいいのに。自分がそうしたように、逃げ出せば楽になるのに。皆は幻滅するだろうけど、私はその選択を理解できるのに。という感情なのかなと。「粉々に砕けてしまえば」ではなく「引き裂かれて」という表現なのが、主語がスーツであることを示しているように思えたから。
・もう少しマイルドな解釈をすれば「似た者同士、弱みを隠さなくていいのに。貴方がそうしたように、私だって見なかった振りくらいはできる」という文脈も想像できる。イラストの構図が背中合わせになってるあたりから連想した。不器用で意地っ張りな二人は他者に対して弱みを見せられない。でも、そんな二人の間でなら「誰にも知られたくない醜い部分を、暗黙の了解のもと、表面上は何も変わらないまま共有できる」んじゃないかな、と。円香はプロデューサーに手を差し伸べたかったのかもしれない。
・あるいは、所謂Pラブでは無いという前置きで、単純に「自分と同じ低さまで落ちてきて欲しい」という願望も少しあるように思えた。それは円香にとってPの失墜にいくつかのメリットがあるからだ。
・プロデューサー程の高い水準の努力でも、報われない事が確認できれば自身に諦めがつく。当初の目的であった幼馴染達の奪還ができる。何より1人の愚直で誠実な青年が雁字搦めの状態から救われる。
・なのにプロデューサーは今も完璧な不完全さで周囲を、そして円香自身を(人間的な魅力で)惹きつけてやまない。彼が壊れた時の影響の大きさを考えて、だとしたら早く、被害の少ないうちに……と思ったのかもしれない。
・変化を恐れる円香の、同情と悲鳴だったのかなと思う。
(おまけ)
思い出アピールである『[フ]ゲン』。【カラカラカラ】の『[カラ]クレナイ』と同じく、二つ名が付くことで別の単語になるパターンのやつである。
・フゲン。普通に考えたら「不言」だろう。不言実行、二人のスタンスに共通する言葉だ。言葉少なである円香のパーソナルも表している。「言(う)→不言」の変化も示唆的でコミュの雰囲気に合っている。
・別の熟語だと「浮言」というのもアリな気がする。根も葉もない噂話という意味だ。コミュ02の「信」がそんな内容だし。あるいは共通のWING優勝コミュ名が「蛇足」であることを踏まえると、「付言」でも面白い。遺言状で用いられる、主題ではない個人的な感情を伝える文面の事だ。
・そんな感じで色々とこじつけはできるけど、今回長々と書き連ねた自分の考察的には「不還」だったら面白いなと思う。仏教用語で悟りを開き、もう人間界に還らない人の事を指す。円香はプロデューサーに、そうなって欲しく無いんじゃないかなと思ったから。あ私妄話。
【20'1025追記】
(おまけ2)
TrueEndコミュ名である「銀」について触れてなかった。なんか書いたつもりでいて忘れてた。改めて整理して少しだけ追記しておく。
・銀。ぱっと思いつくワードは"ギン"コ・ビローバ、銀杏、雄弁は銀、銀食器、二等賞、あたりだろうか。銀(Ag)の性質を比喩に用いているなら「高い熱伝導率」「傷つきやすく黒ずみやすい」「合金に用いられる」「抗菌性」などが挙げられる。あと昔に比べて価値が下がっている事、とか。「銀は毒に反応する」という話もあるので、冒頭に書いた銀杏の中毒性と関連付けた考察もできる。あとイラストのイチョウを「世界が金色に染まった」と表現するなら、その対比かも。
・こんな感じで、連想できる事柄はあまりに多い。複雑に考えすぎかもしれないけどシャニマスくんならこれくらい、あるいはこれ以上の含みを持たせていてもおかしくない。個人的には「沈黙は金、雄弁は銀」「高い熱伝導率」「毒に反応する性質」あたりが比喩のメインな気がする。
・プロデューサーの「綺麗事を体現し、努力して夢を叶えてしまう可能性」は、円香のような「諦める事で心の安寧を得る人間」からすれば価値観を蝕む毒である。Pが成功して評価される事は、自らの哲学を否定される事と同義だ。しかもタチの悪いことに、その毒は他者に伝播する。諦めていたいのに、自分も同じように正しく努力すれば、彼のように輝かしくあれると錯覚してしまう。円香の冷めきった心を、プロデューサーの熱と毒が少しずつ脅かしている様子を例えているのかもと考えた。
・それでは。
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