出雲の国を尻目にハワイライスセンター
鳥取にいざ行くと決めたのはいいが、足がない私は公共交通機関に頼るしかなかった。てっきり福岡から飛行機で行けるものだと思ったら、乗り換えなしだと夜行バスしかないという。鳥取が己の姿を見せてきた気がした。
世の中にはやっても意味のない、人から何の躊躇もなくムダと吐き捨てられることが存在する。それらは通常、人から評価されることを忌み嫌うかのように突っ走り、それでいて日の目を浴びない切なさに日々苦悩する。フツウの人間はそんなことに憧れなんて抱けないが、むしろそれにしか人生を捧げられない人間もいる。彼らは自らの行いを「修行」と呼び、いずれ成就する日を夢見、やがて無の境地に至ってしまう。まさか自分もそのイバラ道に足を踏み入れる思いで夜行バスの切符を手配した。
2週間後に旅を控えていたが、実感が一切湧かなかった。縁のなかった鳥取の地に、まさか大学2年の夏に単身で旅に出るなんて思ってもなかった。自分探しの旅だったら、ジョージハリスンよろしく思い切ってインドと相場は決まっている。誰の参考もなく、ただ知人に言われた「何もないよ」だけを頼りに過ごす2週間はセミの亡骸よりもあっという間に終わった。