出雲を尻目にハワイライスセンター(2)
当日、夕方ごろに天神のバスセンターにやってきた。夏休み中とはいえ、人があまり利用しないであろう平日の何てない日をあえて選んでいた。が、結局バスの半分近く人が乗ってきた。みんなわざわざ夜行バスを使って鳥取に何をしに行くんだろう。まさかみんな鳥取に観光目的で行って、鳥取に「何もない」ことを確認しにいく失礼な集団なんじゃないか。そんなアホな妄想で時間を潰しながらバスが出発するのを待った。
幼い頃は車好きだったからか、夜行バスが好きだった。当時は何も考えずに乗っていて、目を覚ますと朝のサービスエリアに着いているのが日常にはない旅の雰囲気を味わえて楽しかった。しかし、二十歳を超えた悩める男子にはひたすら苦しかった。全く快適でない。うるさい。くさい。全てが気になって目が覚め続け、結局ほとんど一睡もすることができず朝を迎えてしまった。夜中は窓の外が暗く何も見えなかったが、外が白けてきて景色が見えてくる。全く眠れず朝を迎えてしまった落胆と疲労でため息をつきながらしばらくすると、工場らしき大きな建物が見えてきた。
「ハワイライスセンターか」
早朝に寝不足の脳には到底理解することはできず、ただ読み上げるのが限界であった。