「親の囲い込み」に警鐘!有効な対策とは??
【円満相続・修活12】【認知症③】
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弁護士の盛田哲矢です^ ^
本日のお話は、
「親の囲い込み」に警鐘!有効な対策とは??
です。
1 「親の囲い込み」とは?
さて、「親の囲い込み」と言われて、ピンとくる方はみえますでしょうか??
「親の囲い込み」とは、
高齢の親をもつ子が、親をきょうだいその他の親族に会わせないようにすること
をいいます。
実は、「争族の前哨戦」として問題になることが多々あるのです。
2 実際にあった「親の囲い込み」
私が経験した争族の事件で、次のような囲い込みが実際にありました。
①長男が同居している母と姉、妹、弟との面会をさせないようにしたケース
長男は、母が施設にいるときにも、施設の方に対して、母と姉などを会わせないようにして欲しいと伝えていました。
長男は、母の財産を事実上管理していました。
②次男と同居していた母を、弟が連れ出して同居し、さらにその後、姉が連れ出して同居したケース
まずは弟が、母の面倒をみるといって連れ出し、母の財産を事実上管理するようになりました。
すると、それを知った姉が、自分が母の面倒をみると言って、弟に代わって、母と同居するようになりました。
母の財産は姉が管理するようになりました。
3 「親の囲い込み」の目的とは?
このように、「親の囲い込み」は多く見られるのですが、
どうして「親の囲い込み」をするのでしょうか??
何が目的なのでしょうか??
もうお気づきの方もみえると思います。
多くのケースで目的となっているのは、
「親の財産」でしょう。
実際に、「親の囲い込み」ケースでは、
・親の預貯金から多額の現金引出しがある
・同居している子に有利で他の相続人に不利な公正証書遺言がある
ことが多いように感じられます。
非常に悲しいのは、
「親の囲い込み」をする子が、
親=財産
と見ているのではないか?と思えることです。
4 「親の囲い込み」は違法になり得る
そんな「親の囲い込み」に関して、画期的な判決がでたようです。
このケースでは、
80代の母を長女と次女が連れ出し、三女と会わせないようにしたようです。
「親と面会交流したいという子の素朴な感情や、面会交流の利益は法的保護に値する」とし、合理的な理由なく拒めないと指摘した、
と紹介されています。
極めて適切な判断だと思います。
もちろん「親の囲い込み」があれば必ずではありませんが、
「親の囲い込み」が違法となり、
損害賠償請求の対象となり得るとされたことは、
大きな社会的意義があると思います。
5 残された課題
とはいえ、残された課題はあります。
①面会を実現させる命令は困難
②損害賠償の金額
の2点です。
①面会を実現させる命令は困難については、
日経新聞の記事でも触れられていますが、
現行法上で、面会させよという命令を出させるのは困難でしょう。
②損害賠償の金額については、
日経新聞のもととなったケースでは、110万円の損害賠償が認められていますが、決して高い金額ではありません。
そもそも「親の囲い込み」は、
その多くが親の財産を目的としてなされるものです。
「親の囲い込み」をした子は、
親の預貯金から現金の引き出しをしたり、
公正証書遺言を作らせたりしているかもしれません。
もし、「親の囲い込み」をしたときに得られる利益が、
支払うことになるかもしれない損害賠償の金額より多いとしたら、
どうなると思いますか??
110万円くらいの損害賠償では、
抑止効果は期待できないかもしれません。
6 争族は亡くなる前から始まっている?!
「親の囲い込み」は親が生きているときになされます。
生きているので、当然相続は発生していません。
しかし、争族はすでに始まっているといっていいかもしれません。
「親の囲い込み」がされはじめたら、
すでに平時とはいえないのではないかと思います。
7 どういう対策ができるか??
「親の囲い込み」をされた側の子は、
非常に嫌な気持ちになるでしょう。
それだけでなく、
親の側も、自分が「囲い込み」されたとしたら、
決していい気分ではないでしょう。
だとすれば、「親の囲い込み」の対策をすることは極めて重要です。
では、どのような対策ができるのでしょうか??
そもそも「親の囲い込み」は
親自身の判断能力がしっかりしていれば、ある程度防ぐことができると思われます。
逆に言えば、「親の囲い込み」が起きるのは、
親自身の判断能力が衰えているケース、
認知症になっているケースが多いと思われます。
(経験的にも、認知症と関連していることがほとんどです。)
ですので、
認知症になったときへの対策がそのまま「親の囲い込み」の対策になり得ます。
その対策として考えられるのは、
①任意後見契約
②家族信託(民事信託)
の2つです。
どちらも、自分が認知症になって財産管理が難しくなったときに備えて、
自分の信頼できる人にあらかじめ財産管理を委ねるようにしておくものです。
(もちろん差異はありますが、長くなるのでここでは省略)
自分が信頼できる人にあらかじめ財産管理を委ねておけば、
それ以外の子が自分を囲い込もうとしたとしても、
囲い込みを拒絶する法的根拠があることになるのです。
認知症になってしまったときに、
「財産」としてみられてしまうのは、
親にとって非常に寂しいことではないでしょうか?
認知症になってしまったときに、
大切に育ててきた子どもたちの争族の火種にはなりたくないと思いませんか?
そうであれば、
認知症対策をしておきましょう。
他ならぬ、あなた自身の尊厳を守ることにつながりますし、
子どもたちの人間関係が壊れるのを防ぐことができます。
それができるのは、「親」だけなのです。
8 まとめ
・「親の囲い込み」は争族の前哨戦としてよくみられる
・「親の囲い込み」の目的は親の財産
・ケースによっては、「親の囲い込み」は違法になり、囲い込んだ側に損害賠償義務が発生する
・親と他の子との面会の実現までは現状は困難
・損害賠償だけでは「親の囲い込み」の抑止効果が低いかもしれない
・「親の囲い込み」対策として認知症対策をすることが重要
・親の尊厳を守り、子どもたちの人間関係を守ることができるのは、親だけ
以上、
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