存在の穴
古くからの友人から連絡があった。東京に行くらしい。気づかないうちに各々の砂時計は人知れずサラサラと成長していっていたことを知った。
無意識に彼女はここから離れないだろうと思っていた。根拠なんて一切無いのに、なぜかそう思っていた。だってここ、いい場所やし。すぐ会える距離にいると思っていたからこんな状況でも乗り越えたらまたパッと連絡を取ってパッと会ってパッと解散する日常が来るもんだと思っていた。会わないうちに彼女の意思とそれに伴う行動はどんどんと歩みを進めていた。
あまり友人に執着しているつもりはなく殆どの日常を一人で過ごしているけれど、大切な友達はどんな形であれ大切な友達で。お互いに大切と思えている関係は最高だけど、なにも目に見える約束や証はない。その関係の存在はいつだってその都度二人の間で繰り出される言葉や行動なんだなと今回彼女からのメッセージを受けて思った。
彼女から「東京に行く。あなたには先に伝えとこうと思って。」というメッセージが送られてきた時に抱いた気持ち。二人の距離が遠くなることに対する寂しい気持ちをベースに、応援する気持ちや、彼女のシンプルに淡々と真面目に生きる姿を誇りに思う気持ちを抱き、今も続くこの関係を彼女も大切に思ってくれているというホクホクした気持ちを最後に抱いた。ホクホクなんて言葉よりもう少し賢そうな言葉を使いたいけれど、今はホクホクが一番合う。
もう高校生だったあの頃のように毎日顔を合わせて話せるなんて夢のような時間は戻ってこない。また、毎日連絡を取るわけでも、毎月会うわけでもないけれど。必要な時にちゃんと連絡をし合える。発信受信し合える。なんだか泣きそうになる。そういう存在の友人を持てたということだけで生きていける。
清々しい友へ。大切に想うという気持ちを抱かせてくれてありがとう。