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ほどほどに見る公園のひとびと

公園には出会いが多い。さまざまな人生が、毎日のんびりと歩き回っている。平日の夕方。だいたい16時から17時のあいだの黄昏時。私は近所の公園に足を運んでは、さまざまな人生を持つ人々を観察している。

野良猫とおじさんと車椅子

この公園には人馴れした野良猫たちがうまく生き残っている。ある一匹の程よく太った三毛猫は、車椅子に乗ったおじさんと仲良しらしい。おじさんのことをマブだと認知しているらしく、よく二人をセットで見かける。
おじさんの生活には、この公園の猫の存在が欠かせないらしい。毎日公園に来ては、一目散に茂みに沿ってゆっくりと車椅子を走らせる。明らかに三毛猫を探している速度で。三毛猫に見つかることを祈る速度で。
私がウォーキングコースを歩き始めて数周目には、「おじ三毛セット」になっている。おじさんと三毛猫。おじ三毛。
三毛猫はおじさんに体を寄せて甘えている。野良猫にとって甘えることはサバイバルスキルなのだと納得する。猫には、どこまでがおじさんでどこからが車椅子なのかの判断がついておらず、たまに車椅子の車輪に頭や体をこすり付けて甘えている。おじさんは少し車椅子に嫉妬し、車椅子は気まずそうにし、猫はどちらにも平等に愛嬌を振りまいている。猫とおじさんと車椅子の三角関係を垣間見ている気がする。罪な猫。平等に向けられるベクトルほど残酷なものはないと教えてあげたい。


老後に必要な体力は、自転車二人乗り走行可能レベル

私の通う公園には自転車利用者が多い。整備されたウォーキングコースには自転車も難なく通れる程度の広さがあり、誰かを追い越すことも、誰かとすれ違うことも苦にならないほどゆとりがある。歩くたびに、とても居心地のよい公園だとつくづく実感する。
ある日の夕方、いつも通り散歩をしていると、後ろから一台の自転車が私を追い越していった。ふと目の前から遠ざかっていくその自転車を見ると、おそらくアラセブ(アラウンドセブンティ)の女性2名が二人乗りをしていた。二人とも淡いピンク色の服を着ていて、似たような体格をしていた。姉妹にも見える二人組。結構な速度で私の横を駆け抜けていったその二人組は、放課後のちびっ子たちで埋め尽くされた遊具エリアの横をさらに駆け抜けていった。
全てが素晴らしく、全てが最悪だった。なんて素晴らしい人生なんだ。なんて最悪な交通ルール意識なんだ。総じて最高だった。

どうして二人で自転車に二人乗りをすることになったのだろうか。どうして似たようなピンクの服を着ていたのか。どうして運転手はその体力を持っているのか。どうして後ろに乗っていた女性は、横座りの姿勢で軽々と乗れていたのか。彼女らの交通ルールを堂々と違反していく度胸、体力と体幹、放つ楽しそうな穏やかなオーラ。
思わず呼び止めたくなった。「あの、すみません、お二人はどういったご関係で、どういった経緯で今、二人乗りをしているのですか?」と聞いてみたかった。あの時に戻って、目の前を颯爽と走り抜けていくピンクの塊を、走って追いかけるべきだったのだろうか。人生で目にする他人のなかでも最高のコンビだったかもしれない。

私が彼女らの年齢になったとき、あんなことができる友人はいるのだろうか。気軽に交通ルールを違反していけるノリを共有できる友人。交通ルールを違反しなくとも、必要最低限、誰かを後ろに乗せて自転車を操作できるようなアラセブになりたいと思った。

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