結婚式のヘアメイク事情
私はフリーランスのヘアメイクを職業としています。
ヘアメイクは割とフリーランスという働き方が多いジャンルだと思います。
ですが、
都会と地方ではちょっと事情が違うと思います。
私が現在働いているのは石川県という地方です。
そこではヘアメイクという職業の仕事内容は
ほぼほぼウエディング関係の仕事をメインにしているヘアメイクさんが多いと思います。
都会ではテレビやCM、映画、雑誌、舞台、アーティスト、ウエディングなどなど様々な場面でヘアメイクの需要があり、
それぞれのジャンルのヘアメイク需要が多いので、何を中心に仕事をしているかそれぞれ得意分野などがあると思いますが、
地方ではウエディング以外の仕事の需要がそんなに多くないため、
ヘアメイク=ウエディング
というぐらい
収入の主軸はウエディングのお仕事になっている方が多いと思います。
そして
そのウエディングのヘアメイクさんの中でも2種類の働き方のスタイルがあると思っています。
一つ目の働き方は
フリーランスという肩書きでありながら結婚式場と契約
もしくは結婚式場と契約しているヘアメイク事務所に登録、
もしくは美容室などと契約、
そこからお仕事依頼を受けるという働き方。
もう一つの働き方は
上記のような契約はせず、
お客様や何かしらの繋がりやご紹介で
直接お仕事依頼を受けるという働き方。
どちらが良くて、どちらが悪いということではないです。
だけど、働く側もお客様側も
この二つの違いを理解した上で選択することが望ましいと私は思ってます。
まずは働く側(ヘアメイク側)の違いからです。
ちなみに私は両方のスタイルで働いた経験があります。
全ての式場や事務所の事を知っているわけではありませんが
大体の仕組みや契約は同じような感じだと思います。
まずは前者の、どこかしらと契約する働き方です。
契約の時に自分の個性や技量を見て、評価いただける場合もあるかもしれませんが、基本的にはお客様の割り振り(どんなお客様の担当になるか)や、どれぐらいの報酬がもらえるかは会社側が決定します。
スケジュールなども自分で調整するというよりは会社側の判断に合わせるということになります。
専門式場ですので、
結婚式という全体の流れや動き、基本的な知識、マナー、会場ごとの決まり、専門分野の各お仕事を見たり、学んだりする事もできます。
繁忙期は安定的な仕事量を見込むことが出来ます。
自分で売り込みや宣伝をしなくても定期的に仕事は入ってきます。
技術やスケジュールに何かしらのミスがあっても会社や他のスタッフで補ってもらえる可能性があります。
最悪、急な都合で仕事に行けなくなった場合も、誰かしらが代わりに行ってくれる可能性もあります。
そういったことから、
結婚式の知識がまだ少ない方や
仕事量をこなして、手を慣れさせたい方、
色々なお客様と接して経験を積みたい方
自分で宣伝をするのが苦手な方に向いているのではないかと思います。
一方後者の直接お客様から依頼を受ける働き方の場合は
自分のテイストを発信し、それに共感頂いたお客様から直接依頼を受けることが出来ます。
また、報酬も自分で自分の価値を決めることが出来ます。
スケジュールもある程度自分で調整が出来ます。
仕事量は安定するかどうかは自分次第だったり、シーズンによって左右されたり、先が読めない部分もあります。
また全ての技術や接客においての責任は全て自分にかかってくるという点もあります。
ですので、ある程度自分の得意分野やテイストがある方や宣伝や発信が得意な方に向いているのではないかと思います。
また、自分の価値を自分で決め、報酬も直接お客様から頂けるので、直接的なやりがいも実感できると思います。
私は現在は後者の働き方を選択していますが、時と場合によってどちらの働き方を選ぶかはまた変わっていくかもしれません。
また、時々耳にするのが、
前者の方々がご自分たちの技術や仕事量に対して、十分な報酬が伴っていないというお悩みです。
前者の場合は、式場と、その間を繋ぐヘアメイク事務所や美容室などに所属してお仕事を頂いているので、もちろんお客様への上代から約半分以上は式場と間の会社に配分され、実際労働しているヘアメイクさんにはその残りのぶんが支払われるという形になります。
ウェディング業界だけではなくそのようなシステムになっている事は世の中のあらゆる企業、会社で同じ構図になっていると思うので、それが間違っているわけではありませんが、フリーランスという肩書きにもかかわらず、そのような扱いというのは、派遣契約と同じだと思います。
もし、そのような所と契約するならば、最低限の自分の経験と技術と価値を総合して報酬を決めてもらえるところを選びたいと思います。
お読み頂いてる中で、ヘアメイクを目指している方がいらっしゃったら、上記のような働き方の違いがある事をふまえて、今後の選択をしていってもらえたらと思います。
フリーランスに関して写真家のワタナベアニさんがこのような記事を書かれています。
そして今度はお客様側の目線でも
この2つのフリーランスの違いを理解していただきたいと私は思っています。
ここまで読み進めてくださっている方はおおよそ見当がつくと思いますが、
派遣されている側のヘアメイクとフリーランスのヘアメイク
まずは依頼の段階から違います。
前者への依頼は基本的には式場や会場にヘアメイクを依頼し、どんな人が担当することになるかは指定はできません。
リハーサルなどで初めましてになります。
式場や会社側からはお客様と一スタッフとを個人的なつながりを持つ事をNGとしている場合もありますので、細かい相談なども式場を通してのやりとりになります。
そしてとても大きなところは、自分が支払った代金の半分以上は式場や会社側に入り、実質担当してくれた方にはその半分以下だという事です。
私が経験したことの例を挙げると、4割は専門式場へ支払われ、残り6割の中の半分は中間の会社に支払われ、実働しているヘアメイクにはほんの少ししか手元に渡りません。
専門式場や中間の美容室やヘアメイク事務所などはフリーランスという名のヘアメイクを登録してもらい、必要な時に必要な人数を派遣する。という派遣業者のようなものだと私は感じました。
つまり、私がお客様側の立場だったら、
一生に一度の大事な日、ある程度の金額を支払うのに、実際に担当してくれるヘアメイクさんの指名もできず、得意なテイストも分からず、人柄も分からず、たまたま日にちが合って派遣されてきたヘアメイクさんと大切な1日を過ごすのか、、と思ってしまうと思うのです。
もちろんそれもご縁ですし、大概のヘアメイクさんは本当にいい方ばっかりです。
ですが、同じ金額を支払うのに、たまたま新人さんや、最近登録したばかりの方が担当になる場合もあります。
大切な日の人選を偶然に任せるのは、かなり勇気がいるギャンブルなんじゃないかと思うのです。
日頃から行くような美容室やマッサージや飲食店であってもどんな人か、どんなお店か調べたりすると思うのですが、
私がこれまで20年近く結婚式などの仕事に携わってきて、一番思う事は、
どんな会場だったとしても「どんな人」とその結婚式を作り上げるかで、印象が随分と変わるなと思っています。
もちろん場所もお料理もとっても大切ですし、来ていただくゲストへのおもてなしに失礼がない事は、大前提としてあります。
それは専門式場やホテルでは当たり前の事で、その上で、どれだけお客様の事を思ってくれるか。結婚式の準備から、当日までその日1日を通してそういった思いのあるスタッフの割合が多ければ多いほど結婚式は素敵なものになると思っています。
お読み頂いている方が、これから結婚式を迎える方だとしたら、
自分たちの結婚式をどういうものにしたいかを考える事と、
どんな人たちと結婚式を作り上げたいかを考えてみてもらいたいなと思います。
結婚式においてのヘアメイク事情を書いてきましたが、これは私がこれまで見たり聞いたり経験し、感じてきた事であって、全国全てがそのような状況ではないかもしれません。
私は結婚式はとってもいい事だし、いい文化だと思っています。
そんな結婚式が資本主義化が進みすぎてビジネス化してしまっていて、
本来の意味を失ってしまっているように感じた時期がありました。
一旦ウエディング業界と離れ、再び戻った今も、15年前と変わらない業界の話を聞くと、とても残念な気持ちです。
どうしたらいいかと思いながら、
業界全体を変える事はできないですが、
せめて自分のヘアメイクというジャンルから、
ウエディングで働くヘアメイクの方とお客様に向けて知ってもらう機会が作れたらと思いました。
素晴らしい技術とサービス精神と思いやりの気持ちがあるヘアメイクさんは自信を持ってふさわしい報酬を得るべきだし、
お客様も大切な結婚式の迎え方とお金の行き先を考えて選んでいって欲しいなと思っています。
今回も読んで頂きありがとうございます。