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【大人との対話】イベントレポート #1. quod代表 中川雅俊
PRという仕事について
学校や家庭とは違ったアプローチで子どもたちの好奇心を育てる取り組みを行う全教研。その一環として、さまざまな分野で活躍するオピニオンリーダーから直接話を聞き、普段出会う機会の少ない職業について興味・関心を広げるイベント『大人との対話』を開催。第1回は数々の企業のPRを手掛けてきた中川さんをゲストに招き、CM制作の裏側やアイデアの源泉について話を聞いた。
登壇者紹介
中川雅俊 / quod共同代表
2007年よりNPO法人plususを創設・運営。2008年PR会社(株)マテリアルに入社。IT・航空・レジャー施設・飲料・菓子メーカーなど幅広い分野のマーケティングPRを担当。コミュニケーション設計からコンテンツ開発、メディアアプローチと実績が豊富で、現場のリアルな感覚から逆算したプランニングが得意。奇抜な発想が多いが企画から実施までトータルに関わり、最終的に成功にする“実現力”にこだわりを持つ。建築会社を営む実家の影響で小さな頃から建築現場が遊び場。つくることが大好きで「カッコイイもの」「ワクワクするもの」が口癖。自分で設計し自分で現場監督をして自分のプロダクトを取り入れた家をつくるのが夢。
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今回の参加者は全教研に通う中学1〜3年生の3名。伊都教室の緒方先生が司会を務めた。
緒方先生(以下 緒方):PRとは企業の商品や官公庁の取り組みなどの広報活動を行う仕事ですが、実際にどんなことをしているのか中学生には想像がつきにくいと思います。今回はリアルな中身を知れるフラットな場になればと思っています。
中川さん(以下 中川):みなさんまだ職業の選択肢自体あんまり知らないですよね。将来何になりたい?って聞かれてもわからなくて当たり前。僕の話を聞いてもらって、仕事を知るというよりは、仕事って超楽しいものなんだということが少しでも伝われば嬉しいです。ちなみに今回はどうして参加しようと思ったの?
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藤家さん(中学1年生 / 以下 藤家):小学校では職業について教えてもらえることがほとんどなくて、大人ってどんなことをしてるんだろうとか、働くって何だろうとか、いろんな職業があるのを知るきっかけになるかなと思って参加しました。
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伊藤さん(中学2年生 / 以下 伊藤):中川さんは全教研のCMも作られたんですよね?どんな人なんだろうとか、どんな仕事なんだろうという興味が湧いたので来ました。
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和田さん(中学3年生 / 以下 和田):普通に生活してたらこういう機会ってなかなかないじゃないですか。あと、今年受験生で、将来の仕事のことも考えるようになってきたので、いろいろ知ってみたいなと思いました。
中川さんは硬い雰囲気が嫌いだそうで、ざっくばらんな雰囲気で対話がスタートした。
世の中で遊ぶのがPR
中川さんが考えるPRの醍醐味は「世の中で遊べる」こと。「僕の企画ってカッコよく言うとインスピレーションの掛け算、わかりやすく言うとパクリだから(笑)」とおどけるが、実際に「1個だとただのパクリで、2個でも二番煎じになっちゃうから、3個以上のイメージを掛け合わせる」そうで、自分なりのフィルターを通して既存のものを組み合わせることで、新しいアイデアを生み出すことが多いと言う。「普段の生活のちょっとしたことに疑問を持ったり、自分ならどうするかなと考えるクセをつける」ことも大切で、YouTubeやテレビ番組で観たネタをストックしておき、世の中の人が興味を持つものとして昇華させるのも中川さんの得意な手法だ。
◆中川さんが手がけたPR事例
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ブドウ糖が脳のエネルギーになることに着目し、「ラムネで集中力アップ」をキーワードにPR企画を展開。ビジネスマンや将棋棋士、受験生・アスリートなどに向けたPRを企画し、最近では、高野山恵光院の僧侶と高野山高校の学生を起用して話題を呼んだ。
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「商店街のおじさんたちをカッコよくしちゃおう」という思いつきからスタートした神戸三宮・元町商店街のプロジェクトで、テレビや新聞など多くのメディアで話題に。印象的なコピーも中川さんとプロデューサーの木戸さんによるもの。
緒方:数年前からラムネを教室に持って来る生徒が増えたんですが、実はその仕掛け人が中川さんだったとは!常にアンテナを張っているからこそ、面白いアイデアが生まれるんでしょうね。
中川:すべてが僕の力ではないですよ!ただ、僕は昔からいたずらが好きで、子どもが悪さをするみたいに仕事でもちょっとふざけることが多いんです。そういうところも柔軟な発想につながっているのかもしれません。
緒方:SNSで拝見しましたが、少し前に北欧にも行かれてましたよね。いろんな場所で感性を磨かれるのでしょうか?
中川:そうですね。北欧には、長野のレイクリゾートの再生プロジェクトに携わった際にリサーチ目的で行きました。デンマーク人が大切にする「ヒュッゲ」というライフスタイルや価値観にも触れることができて、こんな桟橋を作ろうとか、今あるスワンボートは撤去して景観を保とうとか、すごく参考になりましたね。いいなと思ったものを実際に作ることができるフィールドがあるのも、この仕事の楽しさだと思います。
緒方:「世の中で遊ぶ」というキーワードにも通じますね。
中川:みんなに一番言いたいのは、大人って楽しいよってこと。北欧なんて自分のお小遣いじゃ簡単には行けないでしょ?そういうことも仕事でできちゃう。きっと今の100倍楽しいから、大人になるのを楽しみにしてほしいな。
過程の成功体験を大切にする
「数学と理科だけは将来使うから勉強しておけ」と父親に言われて育った中川さん。「でもPRで一番使うのは国語と社会。今思えば、絶対に根拠なかったんですよ(笑)。たぶん、勉強する目的を親も僕もわかっていなかったと思う」と話す。
中川:僕は高校生の時、野球に熱中してあんまり勉強しなかったんだけど、みんなはなぜ今勉強するの?
伊藤:僕は小学生の時に『高専ロボコン』を観て、こんなロボットを自分も作りたいと思ったので、今は高専を目指して勉強してます。
藤家:僕は運動が得意じゃないので、勉強くらいしとかないとなって。
和田:私も同じです。運動って才能も関係するけど、勉強だったら頑張ればできると思って。将来のためにもとりあえずやっておいた方がいいかなと。
中川:そっか、みんな偉いね。ちなみに僕の個人的な意見としては、勉強でもスポーツでも進む道は何でもいいけど、「自分で完結させる力」は持っておいた方がいいと思う。困った時に切り返せる力とかね。
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藤家:PRって、どうやって勉強したんですか?
中川:僕は勉強が苦手だから現場でこなしたかな。とにかく仕事の数をこなして、自分を試す場を増やすことで経験を積んだ。その分失敗も増えるけど、失敗は悪いことじゃないよ。その時にどれだけリカバリーできるかで、次にどれだけチャレンジできるかも変わってくるから。そう考えれば現場も勉強だよね。教科書を読むだけが勉強じゃない。
伊藤:勉強は質と量、どっちが大事だと思いますか?
中川:さっきの話にもつながるけど、量をこなすことで質がついてくるんじゃないかな。僕の父は根拠もなく数学と理科をやらせたけど、勉強の過程の中に自分でテーマを持って取り組んでいたら、もっと違う結果になっていたのかなと思う。自分にはこのやり方がいいからこうしようとか、これができたら自分を褒めようとか、小さな成功体験を過程の中に散りばめることで、勉強が楽しくなるし、質も上がると思うよ。
和田:テーマってどういうふうに考えたらいいですか?
中川:難しく考える必要はなくて、日常の中にちょっとずつ組み込んでいけばいいと思う。例えば学校で、先生たちに「あなたにとっていいことだからやりなさい」って言われても、自分たちからしたらあんまり意味を感じないことってあるでしょ?それをいかに先生に伝えて理解させるかをテーマにするとか。わざとやる気ない感じでやってもいいし、全力でやった後に「先生、これ次はもうやらない方がいいよ!」って元気に伝えて脱力させるとか(笑)。そういうのって将来仕事をする時の面白さにもつながると思う。
参加者の感想
その他、あのCMの制作秘話やWEBプロモーションの裏話、タレントさんとの思い出話など、ここでしか聞くことのできない貴重なトークが展開されイベントは終了。参加した3名に感想を聞いた。
藤家:働くって疲れるとか大変なことなのかなと思っていたけど、面白そうなことや遊びながらできるという話があって、すごくいいなと思ったし参考になりました。働くことの印象が変わり、将来にワクワクしました。
伊藤:もっと専門的な用語が飛び交って、先生が補足したりしながら真面目な議論をしていくイメージでしたが、実際は和やかな雰囲気で、中川さんも想像以上に優しくて話しやすかったです。普段は聞けないリアルな話をもっといろいろを聞いてみたいと思いました。
和田:私も厳しい感じというか、わからないことがあって問い詰められたりしたらどうしようと思ってましたが、中川さんが同じ目線で私たち中学生の興味のあることから話を広げてくださったりしたので、わかりやすくて楽しかったです。仕事って大変なだけじゃないんだなと思いました。
今回登壇いただいた中川さんを皮切りに、今後もさまざまな分野のオピニオンリーダーとの対話を不定期で開催予定。新たな職業教育の場であるとともに、子どもたちが抱く将来への悩みや漠然とした不安をヒアリングできる場としても展開していきたいと考えている。