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【美術展】丸沼芸術の森所蔵 アンドリュー・ワイエス展/大山崎山荘美術館(京都府大山崎町)
Noteでアンドリュー・ワイエス展の記事を読んで、それが京都で開催と分かり、迷ったのはほんの一時。
行く、と決めた。
日本でワイエスの絵を所蔵しているのは、埼玉県朝霞市にある丸沼芸術の森と福島県立美術館。大山崎山荘でワイエス展が開催されるのなら、所蔵している丸沼芸術の森でも開催されないか、淡い期待をしたが、残念、それはなかった。私は首都圏に住んでいるので、京都へ行くより埼玉へ行く方がよほど手間がないが、致し方ない京都へ行く。
(京都へ行くのを致し方ないなんて、あんまりだが、人混み嫌いなので。京都、私にとっては見るべきところがたくさんある憧れの地なのに、いつも人が多くて。。)
阪急京都本線の大山崎駅から急こう配を歩いて登り、美術館の入口、琅玕洞に到着。
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作品はすべて撮影が不可。
ただ、作品名と、小さいながらも写真が掲載されている作品リストは嬉しい。
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ワイエスの作品集は、現在は1冊を除いて、ほとんどが中古市場でしか買えない。私も2冊は、アートブックを中心とした中古書書店「Wols Books(ヴォルスブックス)」で購入した。
この展覧会へ行くにあたり、予習のため急遽、図書館から3冊画集を借りた。
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丸沼芸術の森が所蔵しているワイエスの絵はほとんどが「オルソン・ハウス」のもの。ワイエスが描く絵で、私がもっと強い思いで見たいのが、ヘルガシリーズだが、そのどれもが個人蔵か、アメリカの美術館にある。
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”水がいっぱい入ったバケツは、いつもモデルを断るアルヴァロ・オルソンを表わしている”
ベッツィー(アンドリュー・ワイエスの妻)は振り返る。「~さっそく彼(アンドリュー・ワイエス)を車に乗せ、オルソンさんのところへ連れて行きました。家族に紹介するよりずっと大事なことだったのです」。
何kmか走ると、セント・ジョージ川を見下ろすようにクリスティーナとアルヴァロのオルソン兄弟の3階建ての家がそびえ建っていた。船長だったクリスティーナの祖父サミュエル・ホーソーンの時代には輝くような白さだった。アンドリューは車の屋根に座って、家を水彩で描いた。
クリスティーナはベッツィーにとって何年間も夏のあいだの「未婚の叔母」のような存在だった。
スウェーデン人の船員の娘であるクリスティーナはこの家で育ち、アルヴァロとずっとここで暮らし、両親を最後までみとった。彼女は足が不自由だが、若いとても女らしい人で、背が高く、長い髪は編むか、頭の上で束ねるかしていた。ピンクの服に白い靴という組合せが多かった。彼女の料理と優美な針仕事は有名で、掃除のゆきとどいた家が自慢だった。
野の花が花瓶いっぱいに生けられ、枕カバーの刺繍にもなっている。アンドリューがクリスティーナに会ったときも、まだこうしたものが彼女のなかに息づいていた。「私にはブルーベリーのようなひとだ」とワイエスが言ったことがある。
展示されていた、鉛筆による「《オイルランプ》習作」(1945年)の裏面にはワイエスの書き込みがある。
これは出来上がったときに明らかな真実とならねばならない。・・・・ドアの掛け金は、何世代にもわたってたててきたその音が聞こえるかのように鋭く、ランプの黄銅も陰に沈んでいるが、見落としてはいけない。神よ、私はこれを描きとめねばならない。
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絵葉書を2枚購入した。
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納屋の戸口からオルソン家の母屋を見やる構図。
光と影はいつもワイエスの関心事で、この作品でも納屋の内部のほの暗さと外の明るさ、逆光のなかでの母屋の板壁と空の抜けた明るさといったものが対比的に構成されている。納屋の梁には大鎌がぶら下げられ、ロープとともにアルヴァロの気配を感じさせる。
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ワイエスはオルソン・ハウスをこのように表現している。
このもろく、からからに乾燥した骨のような家が、この世から消えていくのもそう遠い日のことではないと感じていた。私はこの世のはかなさというものにひと一倍敏感である。すべては移り変わる。決して立ち止まりはしない。父の死が私にそう教えてくれたのである
展示会では「習作」が展示されていた、自画像「幽霊」
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私が訪れたのは会期(2024年9月14日(土)~12月8日(日))終盤の平日午後。お目当てのブルベリーとアップルの特製スイーツは残念ながら売り切れ。
ワイエスのテンペラによる白、描かない白、《青い計量器》の青などどれも色が光を放っていた。