この機会にやっておきたい!今年観た映画暫定ランキング!(後編:5~1位(ベスト5))
皆さんこんにちは、たいらーです。
最近映画館に行けないので過去の映画作品をチェックするようにしています。
先日はマイケル・B・ジョーダン主演、「ブラックパンサー」のライアン・ク―グラー監督による「クリード チャンプを継ぐ男」を観ました。
「ロッキー」シリーズは2までは観ての鑑賞になったのですが、現代の撮影技術と人生観で「ロッキー」を語り直すとこうなるんだな…という楽しさと、アドニスがボクサーとしての道を選び邁進していく姿に泣かされました。マイケルがアドニスとしての体づくりを行う特典の(肉体)メイキング映像も合わせてハリウッド俳優の肉体改造って大変なんだなぁと痛感させられました。多分MCUのヒーロー達もあんな感じなんですよね…。
さて、今回は連続で行っています「今年観た映画暫定ランキング」、いよいよベスト5の発表です。
早速参りましょう。
第5位 映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ
(監督:まんきゅう)
2019年11月8日公開。すみっこに暮らすキャラクター達を主役としたアニメーション映画作品。絵本の中に吸い込まれたすみっコ達が、様々な童話の世界を巡り謎のひよこの居場所を探す冒険をする。
公開は去年の作品なんですが、あまりの大反響にロングランが起こったという事で今年の頭に観に行きました(僕が行った時は1月上旬の段階で1日3回上映でした)。
2016年の「君の名は」ブームから盛り上がりを見せ始めているアニメ映画界。その中でも純粋に相当出来が良い部類に入ると思います。
子供向けアニメながらテーマに対してストレートに抉り込むような描き方をしていて、分かりやすく言えば劇場版クレヨンしんちゃんで時々あるような大人にも響く、むしろ大人にこそ突き刺さるメッセージ性を打ち出せていた作品です。
正直完璧な映画とは言い難いです。特に文句を言いたいのが井ノ原快彦さんのナレーションがくどいという点。人柄が良いから雰囲気には合ってるとはいえ、文字で出されるすみっコの台詞まで読まれたらこっちで咀嚼する猶予が無くなってしまいかねないという煩雑さはありました。あとアニメとしては動いてるけど物語的には動いていない場面がちょくちょくあるとか微妙に退屈な下りもありますね。
それでもこの順位に押し上げられるほど良かったのがクライマックスのひよこの謎が明かされる展開。個人的に突き刺さったのは「みにくいアヒルの子」という童話の欺瞞性に正面から立ち向かったことでした。
ある種貴種流離譚的とも言えるのかもしれませんが、あの童話の「じゃあこいつ最初から優秀だったんじゃねえか!」となるオチは小学生になる頃には疑問を抱いていた部分でした。貴種流離譚はむしろそこを物語の起点にして「優秀な血筋」なりの苦労を見せる手法でバランスを取っていますが、この映画はむしろ逆。物語の終盤で「こいつはアヒルの子でも、ましてや白鳥の子でもない!」と残酷に叩きつけてくるわけです。
その上でどうするのか?という最後の部分がそれまでの展開を踏まえた完璧な流れ。ナレーションもほぼ無く「絵」と「画」の力で魅せる演出の粋さには思わずグッとくるものがありました。
公開時期が近かったこともあって「ジョーカー」みたいだという大喜利的な評もチラホラ見受けられましたが、「誰でも無いという孤独さ、その苦しみ」をしっかり描き出しているという点では確かに「ジョーカー」との共通点もあるとは思いました。まあただこっちはゴッサムシティではないという大きな優位性がありますが。
まんきゅう監督、これまでSDの短編アニメを多く手掛けてこられた方ですが、まさかここまでの長編を仕上げる方だとは思っていませんでした。これからもサンリオのキャラクターとかで映画作ってほしいですね。
第4位 1917 命をかけた伝令
(監督:サム・メンデス)
2月14日日本公開。第一次世界大戦時、ドイツ軍の囮作戦を前線に伝える重大な任務を帯びたイギリス軍の伝令兵の壮絶な1日を、全編ワンカット風撮影によって描く。ゴールデングローブ賞作品賞、アカデミー撮影賞など様々な賞を受賞。
これはもう劇場で観ることが第一条件の映画ですね。映像だけでなく音響、役者の演技など、全てがスクリーンだからこそ迫力を味わえる作品です。
最初はワンカット風の独特な映像に目が慣れずどう見れば良いのかと困惑した部分もあるのですが、戦闘機が墜落してくるところからの緊張感が物凄かったです。途中で相棒が死んでしまうところのカットを割らず顔が白くなっていく流れで「ここはどうやって撮ってるんだ…?」と驚愕させられました。
その後頼るべき存在もほぼおらず、1人になった主人公がひたすら死にそうな目に遭いながら伝令に向かう姿はもう手に汗を握って観ていました。「2時間の映画で1日を描く」という実は現実とは異なる時間の流れが出来ているにもかかわらず、観ている間はそこへの疑問を一切感じさせない凄まじい臨場感。トーマス・ニューマンの音楽に乗って塹壕から飛び出して戦火を潜り抜けていくクライマックスのスコフィールドにはもう声援を送りたくなりました。
序盤・中盤・終盤と定期的に挟まれるイギリス人名俳優のカメオ出演も非常に良かったです。特に中盤のマーク・ストロングは相棒が死んだ絶望感を和らげてくれますし、終盤やっと出てくるベネディクト・カンバーバッチの「真面目過ぎる堅物仕事人間」感も丁度良い雰囲気でした。
「ベネディクト・カンバーバッチに手紙を渡しに行く映画」として観るとまた別の楽しみがあるかもしれません。
第3位 初恋
(監督:三池崇史)
2月28日日本公開(初公開は昨年9月、アメリカ)。人生に深い絶望を味わった天才プロボクサーが、新宿歌舞伎町で少女を救ったことをきっかけにヤクザや中華マフィアを交えた騒動に巻き込まれていく一夜の出来事を描く。
既に記事を書いている作品の1つですが、本当に「楽しい」映画でした。
窪田正孝が正統派のボーイ・ミーツ・ガールを繰り広げている裏で染谷将太らによっていとも簡単に行われる残虐なドタバタ劇。特にやっぱりMVPは暗黒面に堕ちたベッキーですね。HIGH&LOWもかくやという闇鍋具合の中でも一番立ってたキャラじゃないでしょうか。
そして真に褒めたいのが猥雑なのに終わってみるとメチャクチャ綺麗に感じるという、起伏に富んだ物語構造の優秀さ。
若干ベタですらある窪田正孝カップルの再起の物語を、しっかり丁寧な演出で盛り上げて最後に家のドアが閉じるところで幕が下りるというこの潔さ。
思うところもところどころあるものの、エンターテインメントとしてかなり理想的な作りになっていて本当に感動した一作です。
第2位 パラサイト 半地下の家族
(監督:ポン・ジュノ)
2020年1月10日日本公開(昨年12月に先行上映)。韓国の「半地下」で極貧生活を送る4人家族が、それぞれ別人としてIT企業の社長家族の家に入り込んでいくが、やがてその家に隠された恐るべき秘密を知っていく様を描く。
カンヌ国際映画祭でパルムドール、ゴールデングローブ賞外国語映画賞、アカデミー作品賞など4部門を受賞と日本を含め全世界で圧倒的な評価を誇った韓国映画のマスターピース、本ランキングでは2位に入れさせていただきました!
韓国映画はこれが初めての鑑賞になったのですが、上映時間132分という尺の中で面白くない時間が全くないという壮絶な体験をしてしまいました。
韓国の貧困問題という社会性をしっかり持っているところが評価されていると思いますが、個人的に面白かったのは実は話が4つぐらいに分けられるところですね。
「キム一家がパク家に「寄生」するまで」(スパイ映画、ケイパーもの)→「パク家の秘密を知る一夜」(ホラー)→「その次の日の惨劇」(ショッキング・スリラー)→「後日談」と、それぞれが異なるエッセンスを持った単体の話として綺麗に完結する構造を持っており、1つ終わる度に「この映画、ここで終わってもよくね?」となるぐらいちゃんと盛り上がる。けどその後も凄く話が繋がったまま転がっていくため、「いったいいつになったら終わってくれるんだ…(観てる分には面白いけども)」という得も言われぬ感覚に陥ってしまいます。
この「好きなタイミングで終わってくれない」構造、ひょっとしたら「人生」も似たようなものなのでは?とふと自分のこれまでの人生を振り返って我に返ってしまいました。
「自分が生きたい方向には向かってくれないのに時間が、人生が無慈悲にも流れている」という、「現状に満足していないけど生きている」人達の辛さみたいなものを凄く苛烈に映し出した、普遍的な映画と化している点で、ちょっと恐ろしい一作だなと思いながら劇場を後にしました。
あとやたら上手い北朝鮮のおばちゃんのモノマネとか笑えるところはキッチリ笑えたのも好印象です(韓国人もそれやるんだ…と親近感を抱きました)。
さあ、パラサイトが第2位ということで、次がベスト1、現状今年僕が推す今年最高の映画ということになります。
ランキング第1位は………
第1位 ジョジョ・ラビット
(監督:タイカ・ワイティティ)
2020年1月17日日本公開(アメリカでは昨年10月公開)。第二次世界大戦敗戦間近のドイツ、熱狂的なナチ信者である少年・ジョジョは、自分の家で母がユダヤ人の少女・エルサを匿っていたことを知る。ジョジョとエルサが交流を重ねていき、戦況と共に自分達を取り巻く環境が悪化していく中で協力して生き抜いていく様を描く。
トロント国際映画祭で観客賞、アカデミー賞で脚色賞(小説等が原作の作品に与えられる賞)を受賞。アカデミー賞では作品賞など様々な部門でノミネートされながらもその大半の賞を逃したという作品ですが、僕にとってはこれが現在ナンバーワン映画です!
最初は殆ど何の情報も無く「ナチスが出ている映画」ぐらいの認識で観に行ったということもあり、何を面白がればいいのか分からなかったのですが、ジョジョとエルサが初めて遭遇するところからグイグイ引き込まれていきました。
この映画、「マイティ・ソー:ラグナロク(邦題:バトルロイヤル)」を手掛けた名将、タイカ・ワイティティ監督が世界に届ける、凄く出来の良い「おねショタ映画」ではありませんか!
そう、この映画、2時間かけて繰り広げられる壮絶な「おねショタ映画」なのです!
とにかくもう「エモい」ってこういうことなんだなと思うぐらいジョジョ君(10歳)とエルサ(17歳)の仲良くなっていく過程、人種の壁を乗り越えて互いに唯一無二の存在になっていく過程が尊い……。
中盤で2人が過ごす日々が文字通り流れるように映されていくのですが、2人が仲良くなればなるほど「ドイツ人とユダヤ人とか絶対ロクな最後にならねえ……!」とその先の展開を考えるだけで涙が出てくるくらいに思い入れを抱いて観ていました。
映画自体の展開もその不安を見抜いているかのようにどんどんこの2人を追い詰めていきます。活動家だった母の死、ゲシュタポのガサ入れ、連合軍による市街地への進行と、畳みかけるように試練が襲ってくる中をけなげに生きようとするジョジョ君にまたエールを送りたくなってしまうところでした。
そして拍手したくなったのが、見事全てを乗り越えた先にあるエンディング。「家の外に出る」というある種当たり前のことを成し遂げた後に何をするのか、その行動と共に映画の輪が閉じるという完璧さに「あぁ…良いもん見た…」と浄化されました。
脇を固める名優(大人)達も素晴らしかったですね。
スカーレット・ヨハンソンのお母さん役はセクシーでありながらイデオロギーに捉われない「自由奔放な女性像」を見事に体現していてこの映画の面白みをグッと増していました。しばしば映る「靴」が持つ重層的な意味合いとか映画的演出が本当に上手い。
サム・ロックウェルの「くたびれてるけど頼りになる変なオッサン感」も最高でしたね。常に隣にいて全然喋らないジョン・ウィックで犬を殺したアイツの存在感も良かった。とにかく大人が子供に何かを託す映画ってそれだけで楽しいですね。
人種差別関連は割と賛否分かれているようですが、個人的にはマオリ系ユダヤ人というタイカ・ワイティティ監督が「カウンターとして」明確な意思を持って作っているということで僕は尊重したいと思います。
「子供の目線から見た戦争」をコミカルに描くというのも全体の見やすさに繋がっていて、戦争映画というジャンル的にも新しい視点を生み出せた一大傑作ではないかなと思っています。
とにかく「エモい」という感覚を言い表したい時、誰かをおねショタ嗜好に堕としたい時、「ジョジョ・ラビット」がお勧めです!
……はい、という訳で今年観た映画暫定ランキング、あくまで「暫定」ですがこれで全てとなります。
特に上位3つは本当に心を揺さぶられた作品です。あと13.5億円(パラサイト)とか15億円(ジョジョ・ラビット)とか日本円に換算すると超大作と呼べるほど予算のかかっていない作品が多いのも特徴的(日本だと充分大作レベルでしょうが)。
特に「ジョジョ・ラビット」はstay homeと言われる今の時代だからこそ刺さる部分もあるのではないかと個人的に思っております。
という訳でもう少し続くであろう自粛期間。今後も何か新しいことを思いついたら記事にしていきたいと思っています。その時も温かい目で見守っていてください。
ここまでのお相手は、たいらーでした。