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夜の扉4

燕が飛んでいる。
朝方の祈りは僕を湿らす。
気温は少し生温い。探偵になった記憶を思い出す。フィンは言った。僕を育てる事をやめると。僕はその時、辛かった。親鳥が小鳥を差し出した。帰り道、僕のスニーカーは濡れた。靴紐が解けたが、結ぶのは僕自身だ。
何故、フィンは、僕を捨てた?
きっとそれは、贅沢の代償であった。
フィンは、後悔をしていると言った。
が、しかし、そう簡単には、変わらない。
信じるのは、エゴイズムではない。
生き方や、勇気である。
街は朝。橋が見える。橋の下を飛んだっていい。かわせかわせ。そして、最後まで飛ぶのだ。
僕はまた、科学者のように、新しい音色をつくり、芸術家のように、分章を書く。
今を、見る。
朝日が僕を照らす。
彼女が来た。
「あなたは、何故そんなに頑張るの?」
「君達を幸せにしたいからだよ」
「私は幸せよ」
「嘘だ」
「そんなに頑張らなくていいんじゃない?」
「いや、僕は夢があるから」

交差点は、また男女を乗せた車が走る。
いつかは、心の底まで喜べる日がくると信じて、また光のない世界を照らす。
フィンは、また人を殺めたらしい。
僕は、夢を与える為に、また、飛ぶのさ。
乱世を舞にまい。苦しみを抜き、楽しみを人に与えるために、死の像をまた、暗箱に入れた。
そして、だからこそ、祈るのである。
水の流れのように。

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