見出し画像

夜の扉5

きっといつかは、晴れるだろうと思い、僕は部屋の外にでた。建物は崩れそうな音をたてている。
部屋にはブルートがいる。彼はこの船のメカニックである。ブルートが言った。
「奥さんと別れたんだ。」
ブルートが自分の腕に油を差している。
「ブルート、僕らは一体どこにいくんだろうか?」
「わからない。ただ一つわかることは、僕らが生き残った、それだけだ。」

(あなたたちは、気付いているのだろうか。その時、ブルートと「僕」が、自らの意志で動いていないということを。私の正体も、私がおこした戦争も、今、私の周りに死体が沢山あることも、あなたは、見たことがない。そうだろ?ブルート。)

ブルートは、今日も、メカニックを触っている。僕は外に飛び出した。今の時代は宇宙服なんかなくても、外に出る事ができる。
船には、第二日本と、青い日の丸が、描かれている。
僕たちの、祖先は原子爆弾を落とされて国が滅んだらしい。その時、国の名前が変わったらしい。
ブルートは、言った。
「原子爆弾なんて、すぐなくなるじゃないか。見てみな。」
ブルートは、小瓶を取り出して、持った。
そして、みだり耳を外して、右手の7本目の指を刺した。
小瓶には、小さなキノコ雲が、一瞬、船は揺れたが、瓶の中で、キノコ雲が溶けていった。
僕は言った。
「子供の頃よく遊んだよな。」

(私達は、沢山の死者を出しました。第二日本は、その後、反乱を起こしました。火炎瓶や、強姦、犯罪、道徳の欠如、混沌が混沌を産み、その中で、悪の手をつかう民族は、かたまり独立国「悪」をつくりました。独立国「悪」は、他の国の物を奪いました。人類が、地震をあやつれるようになり、大陸を意図的に離せるように、なると「悪」は、孤立し、独立国「悪」は、殺し合いが絶えず、あっという間に滅びました。最後は、女性も殺し合いました。私は、その国、「悪」の生き残りです。)

僕は、有機物建築でできるいる、形の変わる船(バイオシップ)にもどり、音楽を楽しもうと、音楽水を呑んだ。
胃の中の、ベートーバッハアルトを、感じる。
たまには、音を呑まないとやってられないよな。とため息を録水した。
ブルートは、言った。
「この先の、お前の録水、感じたぜ。」

(私達は、第二日本の使者。この世は、平和という名の、自動機械である。悪は、いまだにのさばり、朽ちたはずの悪は、保護されている。昔ブラックホールとよばれた、時空移動文明は、EDOと呼ばれ、悪の中でも、大悪、中悪、小悪に分けられ、鉱山を奪い合っている。その鉱山も、バイオphotoで作られた、掘っても掘っても、生成される感触付き蜃気楼である。「悪」を管理するのには、塀はいりません。)

ブルートは、言った。
「おれの母ちゃんは、鉱山がバイオフォトだって気付いてないんだ。」
僕らは、ブルートの母さんの、墓を立ち上げ、心を共有するボタンを押した。

太陽が、言葉を発しだし、意志を告げられるようになった無代、僕らは「悪」で過ごした記憶を、3万年前から、2秒ほどで語り明かした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?