7/16 特殊タイプ(めんどくさい)・2
彼はそう言って、私を初めてちゃんと見た。
最初からずっと私を見ようともしてなかったし、見る気もなさそうだった。
それが一変して向き直ってまじまじと私を見て、ニヤニヤしながら、
「綺麗ですね」
そう言って照れ出した。
な、何だ???
少し談笑して、浴室からお湯の出る音が聞こえなくなったので、
「お風呂入りましょう」と、声をかけると、
またもや驚いて「は、はい!」と何だか先生と生徒のような感じになった。
言いなりというかされるがままな感じで、ベッドに移動して、
ゴロンと寝転ぶと喋りながら、こっちの動きの様子をうかがってるようだった。
何となく試されてる気がしたので、私はその勝負を買って出た(笑)
でも、多分だけど、この人はフィニッシュしないと思った。
それでもできる限りの手は尽くしてみようと試みる。
若さで元気いっぱいのモノだけど、イク気配もない。
「すいません、自分難しいんですよ」
その人はそう言ってた。
早くからわかってた。
すごい心を開いてるように見えて、実はものすごいバリケードを張ってる感じがする。
この人はそれを取り払わないとダメな人だし、何があったのかはわからないけど、
何かしらのトラウマなのか?女と遊ぶために来てるのに、目的が違う気がした。
本強するわけでもなく、さほど私に触れもせず、ただ仰向けに寝てるだけだった。
「ここまでしてもらったのは初めてです。本当に楽しかった。ありがとう」
そう言ってたのは本心だと思った。
身支度を整えて楽しそうに喋りながらホテルを出て、
自分の車に乗って、待っていた幹部のスタッフに声をかけて帰って行った。
車の中でスタッフとそのお客さんの話をしながら、
ものすごく疲れて眠くてたまらなかった。
ドアにもたれながら、「へー」「ほー」しか返事できなかったような気がした。
車の外の暗闇の中の車の明かりが綺麗に感じた。
「どの女の子行かせても気に入ってくれなくて、いつも怒るお客さんなんだよね」
何があったのか知らないけど、かわいそうな人だなぁって思った。
誰にも心開けずに、言いたい事言えずにフラストレーション溜めたまま生きてるんだろうなぁ
そんな点は私に似てる気がした。
誰かに八つ当たりのようにしたいんだろう、
言いたい事言えず、イライラして相手の悪いところを見つけて執拗に突く、
そんな形でしか人と接する事ができない人なんだろうねぇ
その2日後の昼間にまたそのお客さんが来た。