見出し画像

初めて会った日から何周か回って恋をした 24

戦場ヶ原散策で、身も心も疲れ切った仲良し組たちは

旅館の温泉に入ってその疲れを癒やすと、まだ自由時間があるにも関わらずほとんどが布団に入っていた


智也:お〜い、お前ら一回起きろ
  室長会議で言われたこと伝えるから

室長である智也が帰ってきて、メンバーを呼ぶと

布団から、まるでイモムシのように這い出てきた


智也:何だ、その出てき方

昌輝:疲れてんだよ…
  風呂入るまでに、はしゃぎすぎた

男1:右に同じ

男2:俺も


昌輝と他2人はそう気怠そうに答えた

が、◯◯はというと


◯◯:俺はみんながやってて面白そうだからやった

智也:…お前はまだ元気だな


まだ元気そうな◯◯を見て、自身も疲れ気味である智也は苦笑いをして


智也:ま、そのままの体勢で聞いてくれ
  まず、明日の朝ご飯の時間は…

連絡内容を部屋のメンバーに伝え始めた



智也:てな、わけ
  どう?頭に入った?

昌輝:なんとなくな…
  それより、俺すげえ眠いんだけど


昌輝は目をこすり、欠伸をしながら言った

その姿を見た他の面々にも欠伸が伝播していった



智也:だよな、俺も眠いんだわ正直
  さっさと寝るか

◯◯:俺、明日が楽しみすぎて寝れないかも


1人、◯◯がそんな事を言っていたが誰もそれについて突っ込むことなく

順番に歯を磨いて、布団に入った


消灯時間、21:00より15分も早い就寝だった




そして、少し時間が経った蓮加たちの部屋では…


女1:ねぇ、誰か小さな懐中電灯みたいなの持ってないの?

女2:私、持ってるよ

女3:じゃあ、それを真ん中において上から毛布かけちゃって


消灯時間が過ぎても、眠らず

お喋り会が催されていた


蓮加:ねぇ、何話す?

蓮加が他のメンバーを見回しながら言った

女1:う〜ん…そうだなぁ
  じゃあ、中学に入ってやりたい部活とか 

女2:あ〜!いいね
  私は、バスケ部!
  ミニバスお姉ちゃんがやってて、憧れなの

1人がテーマを出すと、他のメンバーは頷きその話が始まった


女3:私は金管やってるから、吹奏楽かな〜
  
女1:あ〜、いいね吹奏楽ってカッコいい感じするし

女3:そう?


照れ笑いする女子

その女子の番が終わると、蓮加に視線が一斉に向けられた


蓮加:私?
  そうだなぁ…バトミントンとかやってみたいかも

女1:バドミントン?
  好きなの?

蓮加:好きだし、親戚のお姉ちゃんたちとよくやるんだよね

女2:バドミントンね〜、楽しそう
  球技よりも怪我しなさそうだし

女3:基準そこかい


あははははっ

と小さいながらも笑いが飛んだ


女子のお喋り会は、日付が変わる近くまで開かれていたとか…



迎えた修学旅行2日目


朝食を摂り終え、退館式を行ってからクラスごとにバスに乗り込んだ


先生:これから、日光江戸村に行くけど
  くれぐれも、他の観光客の人たちに迷惑かけないこと
  わかった?

“はーい!”


先生:はい、それじゃあ食事券千円分配るの
  無くさないでよ?
  あと、これは今日しか使えないから必ず使い切ること


◯◯:千円分か…
  昼飯足りると思う?


前から券をもらって、◯◯は隣の蓮加に聞いた


蓮加:そんな高いの買わなきゃいいんじゃない?
  おにぎりとか、焼きそばとか

◯◯:あ〜、たしかに


蓮加は少しだけ眠そうな顔をしているように◯◯には見えたが

それよりも、江戸村に対するワクワクで気持ちが昂っているのがよくわかった



智也:◯◯、とりあえず先にお土産見るぞ


バスが走り出してから、智也は近くの◯◯に言った


◯◯:そんなに早く買う必要あるか?
  もっと後でよくない?

◯◯は智也の意見に軽く反論した

が、智也は調子を変えずに


智也:兄さんが、修学旅行のときにお土産屋さんが他の生徒たちで混んでてまともに買えなかったって言っててよ

◯◯:ほ〜ん…まあ、経験談があるなら
  そうしますか

  
元々◯◯は智也のプランに従うと決めていたので、簡単に納得し承諾した



昌輝:ん、俺もそれでいいよ

男1:俺達も

他の面々もあまり反対することなく、最初にお土産を買うことになった


それから、バスに揺られること約40分

日光江戸村に到着した


先生:まだ早い時間だからあまり人がいないけど
  お昼辺りになると一気に増えるから気を付けて

“はーい!”

先生:先生たちはしおりに書いてある休憩所にいるから何かあったら来てね
  じゃ、楽しんで


先生からの諸注意をもらって、クラスの生徒たちは一斉に江戸村の中へ

◯◯:どっかで会えたらお土産何ほしいか聞くね

蓮加:おっけー


蓮加の班員が体調不良のためスタートが遅れるらしく、◯◯はそう言い残して入口入ってすぐのお土産屋へ

店員:あら、もうお土産買うの?

開店したばかりと見えて、おばさんがまだレジの中身をいじっている


智也:うちの兄が遅くに来すぎて買えなかったと言ってたので

昌輝:ま、念には念をってやつです

ストラップを見ながら二人が答えた

店員:まあ、しっかりしてるわね〜

店員のおばさんは、笑顔で◯◯たちを見てそう言った


男1:◯◯は何買うんだ?

◯◯:とりあえず、ニャンまげの何か


◯◯はマスコットキャラクターであるニャンまげの商品をずっと見ていた


男2:江戸村に来たんだから、ニャンまげは買うよな

そう言った男子のかごの中には、何枚ものニャンまげタオルが入っていた

男1:いや、お前買いすぎだろ

男2:色々と使い勝手よさそうじゃんか、デカいし

文句を言われながらも、その男子はニャンまげのストラップを手にとった

…恐らく、ニャンまげファンだろう


昌輝:俺もタオル買おうかな


昌輝も感化されたのか、タオルを買おうとしていた


智也:親戚用のは菓子だよな

◯◯:それは同じ考えだわ
  …自分用のは、ストラップにすっかなぁ

落ち着いている系の2人は、ニャンまげのグッズで盛り上がっている3人には構わず淡々と買い物をする


智也:そういや、岩本さんのはどうするんだ?

智也がさり気なく聞くと


◯◯:そこなんだよな〜
  …他にお土産買えるところはないの?

智也:いや、流石にそんなことはないだろ

◯◯の質問に智也は答えた

◯◯:じゃあ…後でいいかな

智也:おう、とりあえず今のところので買っちゃおうぜ


智也の言葉に◯◯は頷いて、おばさんにカゴを渡しお会計に入った



蓮加:いや〜、最初はどうなるかと思ったけど
  大丈夫でよかった

女2:迷惑かけてごめんね

女3:全然大丈夫!
  なんともなくてよかった



蓮加たちの班は、1人が気持ち悪かったらしくスタートが遅れていたが

その女子の体調も治り、無事江戸村散策を開始させていた


女1:ねぇ、とりあえずニャンまげと握手しようよ!

女2:いいね!今どこにいるかな

女3:どっかに書いてないかな

やはり楽しみにしていただけあって、みんなテンションが高い

女4:で、林藤くんとはどこかで会う予定あるの?

そんな中、1人が蓮加に聞いた

蓮加:いや、特にしてないけど
  …ま、どこかで会えるでしょ

女4:結構広いけど、大丈夫?


聞いてきた女子は少し心配そうな顔をしたが、蓮加は大丈夫だと言った


蓮加:何てったって、れんかと◯◯は息ぴったりだもん

女4:ふふふ、なんか林藤くんが蓮加ちゃんに惹かれる理由がわかった気がする

蓮加:えへへへ、嬉しい〜


2人は前の3人に追いつくと、一緒にニャンまげを探し始めた




◯◯:はっ…はっ……ハックション!

昌輝:どうした、◯◯
  風邪か?

いきなりくしゃみをした◯◯に、昌輝は驚いて聞いた


◯◯:いや何だろう…
  ちょっと寒いのかな

智也:日光は意外と冷えるぞ
  上着着とけ


智也からそう言われ、◯◯は大人しく上着を着た

智也:よし、忍者屋敷行くぞ!

智也の大きな声に、班員はおー!と言って答える


昌輝:忍者体験楽しみにしてたんだよな〜

笑顔で言う昌輝に、男子が

男2:昌輝、手裏剣全然当たらなそう

煽るように言うと、同調して

男1:確かに、運動神経はよくてもああいうのってセンスの問題だもんな

昌輝:おい!バカにしてんだろ

と昌輝はバカにされている

◯◯:まあまあ、やってみなきゃわかんないじゃん
  昌輝が予想に反して上手いかもしれないし

そこへ◯◯が仲裁に入る


昌輝:そうだそうだ…って
  ◯◯お前まで!

智也:ほ〜ら、早くいかねぇと先に誰かに取られんぞ


その一言で、一旦言い争いは止まり

全員が一目散に走り出した



江戸村での散策はまだまだ続く


いいなと思ったら応援しよう!