ふわしゅわお嬢様はご執心 4
学年末テストを終えて、肩にのしかかっていた重いものも下りたことで
晴れやかな気持ちで、私は◯◯ちゃんに会えた
それなりに恥ずかしさとか不安な気持ちもあったけど、◯◯ちゃんが全然中身は変わってなかったからすごく安心できた
和:まずい…まだちょっと喉枯れてるかも
美:だから言ったのに
そんなに歌って大丈夫なのって
あの日から数日経った
私が◯◯ちゃんと会った翌日のカラオケで、和は学年末テストの鬱憤を晴らすように沢山歌を歌いすぎて、未だに声が少しガラガラ
のど飴を大量にブレザーの中に入れていて、事あるごとに取り出して舐めていることから
美空は表では心配しているけれど裏では、大阪のおばちゃんという名前をつけて笑っている
桜:まあまあ、和の気持ちもわかってあげようよ
美空だって、成績悪かったらカラオケで叫んでるじゃん
美:そうだけどさ、私は和とか桜の注意をきちんと聞いてるじゃん
でも、今回の和は…
和:そんな煽るような顔されても
声があまり出ないから怒る気もしないんだけど
ローテーションの和は、感情があまり読み取れないからほんとに怖い
美空はよくこの状態の和にあんなこと言えるなって、ある意味感心してしまった
美:別に煽ってないよ?
次からはちゃんと聞いてねってこと
和:はいはい、わかった
とりあえず今はスタバに早く行こ
テスト期間中の私の無理なお願いの交換条件だった
スタバの奢りは修了式の今日にすることになった
和の希望だからあまりとやかく言わないけど
もっと喉の状態良くなってからのほうが良かったんじゃないかな…
そんな言葉を胸にしまったまま、私は二人とスタバへ喋りながら向かった
☆
和:ねぇ、美空
桜がトイレに行っている間に、私は美空に話しかける
美空はスマホから私に目線を移す
和:少し気になったんだけどさ…
桜の許嫁の人、気にならない?
美:お、和もそう思う?
実はさ…私も何だよねぇ
甘い声でときめいた顔をしていて、何を考えているかは理解できる
けれど、私の気になるはその気になるじゃない
和:そっちじゃなくてさ
疑問の方の気になるだよ
そう言うと、美空は興味を失うがごとくスマホにまた視線を移す
和:あの桜だからさ、騙されたりしても信じ込んでそのまま…なんてことありそうでしょ?
美:否定はできないね
でも、そんな人じゃないように見えたけど
美空はそう言うと、私に目配せをした
桜が帰ってきたからだ
桜:ごめんね
あれ、あんまり減ってなさそうだけど飲んでなかったの?
美:いやいや、出費者を置いて先に飲むなんてできないよ
ね?和
うまいこと誤魔化した美空の言葉に頷く
こういうときばかりは、美空の話術には感謝しなくてはならない
桜:もう〜、そんなことしなくてもいいのに〜
笑って私たちを見る桜
よかった…バレていない
美:じゃあ、桜に感謝して
いただきま〜す
和:いただきます
桜:は〜い
飲みたかったものを飢えている喉に流し込んでいく
何となく、それが少し心地が良くて
和:んぅ…
桜:そんな美味しい?
あ、でも喉あれしてるからそうなるのかな?
美:ずっと飲みたかったからじゃない?
和すごく楽しみにしてたらしいから
声が漏れても、この二人といると気にしなくても済むのがいい
少し恥ずかしくなるのが常な気がするけど
和:美空、唇に付いてるよ
美:え?嘘、どこ
和:左のここ
笑えたり、盛り上がったり
そんなことをして居心地の良いメンツだから
それを壊すような人は許せない
美:で、桜のデートに付いてくと
和:桜のためだから…うん
スタバに行った2日後、桜は許嫁の人とデートと言っていたからそれを尾行してみることにした
美:何かストーカーしてるみたいで嫌なんだけど…
和:いつもしてるじゃん
美:してないよ!
私の他に親しい女子がいるか確かめてるだけ!
和:自覚あるんじゃん…
美空に突っ込んだりしながら、私は少し先にいる桜と許嫁の人を凝視する
美:怪しいことするタイプじゃないと思うけどね
顔優しいし、桜の話聞く限り頼りない人らしいし
和:装ってるだけかもしれないじゃん
桜の家のお金狙ってたりとか…
美:いやまあ、確かに桜の家お金持ちだけど…
そんな話をしていると、桜が動き出した
和:ほら、行くよ
美:人目が気になるんだけどなぁ
とは言いつつ、美空も興味があるらしく付いてきてくれる
さて、許嫁の人…私の目で確かめてあげる
☆
◯:何かさ、見られてる気がするだけど…
桜:え〜、誰に?
◯◯ちゃん、昔から人目を気にしすぎなんだよ
◯:ん〜…だと良いんだけど
僕は何となく後ろから刺さる視線を感じながら、桜ちゃんに呼び出されたショッピングモールを歩く
何でも、新しい服を買うのを手伝ってほしいらしく
僕としては、この前の心のモヤモヤがまだ晴れきれないままだから集中できるか不安だ
桜:昔と違って、桜も似合う服増えたんだからね?
◯:僕もそう思うよ
私服、すごいオシャレさんだから
僕がそう言うと、桜ちゃんは僕の方を向いて目をパチクリさせて止まってしまった
◯:さ、桜ちゃん?
桜:…あ!ごめんごめん
いきなりでびっくりしちゃったから
桜ちゃんは顔を赤くして、手をパタパタさせている
僕は変なこと言っちゃったかなと思って、大人しく付いていくことにした
少し歩くと桜ちゃんがお店の前で止まる
桜:とりあえずここ行ってみる?
◯:そうする?
僕は昔から桜ちゃんの言うことには基本的に肯定してきた
押しが強いっていうのもあるし、僕が優柔不断なのもある
けど、今そうする理由は色々な服を着た桜ちゃんを見てみたいという願望があるから
桜:あ、荷物持ちとかしてもらっちゃうかもだけど
ごめんね、先に謝っとく
◯:あ〜…慣れっこだよ
母さんの買い物もそんな感じだから
桜:◯◯ちゃんママも、お買い物長そう
そんな会話しながら、桜ちゃんは次々と服を取って鏡の前で合わせていく
時折、僕にどう?って聞いてくるけど基本的に似合うとしか答えられない
だって、どの桜ちゃんも綺麗だし、可愛いし
どれも似合いそうで決められない
桜:んぅ、◯◯ちゃんさっきから似合うしか言わないじゃん!
もう少し他の意見ないの?
◯:どれも似合うんだよね
桜ちゃんそもそも顔がいいからさ
桜:あ!そうだ
◯◯ちゃんが私に似合いそうなコーデ作ってみてよ
桜ちゃんはパッと突拍子もないことを言い出した
桜ちゃんに似合いそうな、コーデ
◯:どうしてもしなきゃダメ?
桜:うん!
◯◯ちゃんの趣向が知りたい
◯:…変な感じでも文句言わないでよ?
僕はとりあえず選んでみることにした
☆
◯◯ちゃんにコーデを選んでもらっている間
私は少し他のものを見て回ることにした
今日のデートで、◯◯ちゃんの趣向を掴んで
4月になったら桜を見に一緒に行こうって誘おうと決めているから
ここで◯◯ちゃんの意見をしっかりと知っておきたい
私がとりあえず◯◯ちゃんに差し入れる飲み物を買うためにフードコートに行こうとしたら
桜:ん?
あ、和がいる〜
靴紐を結んでいるっぽい和を見つけた
私が駆け寄っていくと、和は少し慌てていて
和:あ…さ、桜
何でここに?
桜:あのね、◯◯ちゃんとデートなの
和には言ってなかったけ
和:あ、聞いた…かも
桜:何か、今日の和は変だよ?
和が終始、目が泳いでいるというか、アタフタしているというか…
そんな感じで変だなとは思ったけど、◯◯ちゃんを一人にさせる時間を長くしたらまずいと思ってすぐにフードコートに向かった
和:危なかった…
美:今、桜とすれ違ったんだけどさ
もう辞めない?
和:でも、まだ全然見れてないし…
美:今度ちゃんと紹介してもらった時にじっくり観察すればいいでしょ
私が◯◯ちゃんの元へ帰る時に、和が誰かに引っ張られながら外に向かっているのが見えた
桜:◯◯ちゃん、レモネード買ってきたよ
◯:ありがと…
とりあえず、選んでみたんだけど着てもらっていい?
桜:もっちろん!
◯◯ちゃんの手からカゴを取って試着室に私は入った
カゴの中から服を取ってみると…
桜:へぇ…◯◯ちゃんはこういうのが好きなんだ
ふふふ
☆
桜ちゃんが試着室に入っている間、僕はすごくソワソワしていた
だって、変だなって思われたら嫌だし
桜ちゃんに似合ってないとなおのこと凹む
桜:こんな感じだよ〜
と前降り無しに桜ちゃんがでてきた
◯:うぉ…めっちゃ可愛い
桜:えへへ、似合ってる?
桜的には似合ってると思うんだけど
くるりと回転して桜ちゃんは全身を見せてくれた
けど、最早桜ちゃんに僕が選んだ服が気に入られてよかったという思いが強い
◯:桜ちゃん、ほんとに似合ってるよ
桜:やったー
というか、◯◯ちゃんセンスいいんじゃない?
◯:そう…かな
桜ちゃんに褒められると、誰に褒められるよりも嬉しい
ロングスカートとかワンピースとかも似合うと思ったけど
桜ちゃんはこういうのが好きそうだなと思ったのが当たってよかった
桜:じゃあ、これ着て今度さ桜見に行こうよ
お花見
◯:おぉ…いいね
僕一眼カメラ持ってくよ
桜:お、◯◯ちゃんカメラ趣味なの?
◯:うん、中学な頃からね
桜:へへ、じゃあ楽しみにしとこっと
さくっと決まった次のお出かけ
僕は高揚していて忘れていたけど、僕と桜ちゃんの関係性について
まだ答えは出ていなかった…
桜:あ、じゃあ次は雑貨見に行こうよ!
笑顔で手を引く桜ちゃんは、どう思っているんだろうか