初めて会った日から何周か回って恋をした 4
夕ご飯を食べ終わり
2人は、どちらが皿を洗うか言い争いをしていた
◯◯:身重なんだから、やるよ
蓮加:いやいや、料理は◯◯にやてもらったんだし
お皿くらいはやらせてよ
◯◯:いやいや
体に負荷かけちゃダメだし
蓮加:少しくらいは手伝うの!
迷惑かけてばっかりだから
◯◯:う〜ん…
蓮加:ね、いいでしょ?
上目遣いで来られると、弱いことを蓮加は知ってやってきているのは知っている
それをわかっていても断れないのが俺なので
○○:じゃあ…
お願いしようかな
蓮加:ありがとっ
やっぱり○○と結婚してよかったなぁ〜
と微笑みながらお皿を流しへ持っていく
なんで食洗機がないかって?
いや、あるはあんるだけども
蓮加がその昔、食洗機を勢い余って壊したことがあり
お腹が大きい内は、足とか怪我するから手洗いにしようと二人で決めていたから
○○:これ多分バレたら母さんにこっぴどくだな…
内心、そんな思いもありつつ
蓮加の楽しそうな後ろ姿を見つめていた
洗い物も済んで、俺がカフェインレスコーヒーを二人分淹れた
○○:妊娠してから、あんまりコーヒー飲まなくなったから、減りが遅くなったよね
蓮加:○○が優しいからだよ
れんかが飲みたくならないように、自分も飲んでないでしょ?
○○:そんなの当たり前だよ
蓮加だけ辛くさせるわけにはいかないでしょ
蓮加:そういうところ
○○の好きなところの一つはね
ゆっくりと、話しながら
時々コーヒーをすする音が、静かな時間に響く
○○:そういえば
そろそろ、服とか選ばないとね
蓮加:あ〜、そうだね
クーハンはあるし、ベッドもあるけど
肝心な服がないか
流石に自分達が着ていたものなんてないから、新しく買わないとなわけで
○○:ま、日を改めて行こうか
蓮加:そうだね
焦ると良くないだろうし
蓮加がお腹を優しくさする
○○:ど?
なんか反応ある?
蓮加:柔らかく動いてる感じする
触る?
椅子を引いて、スペースを蓮加が作る
○○:それじゃ、失礼して
優しく、お腹を数回さすった
すると…
軽くお腹の浮き沈みを感じた
○○:おぉ…
なんか、生命宿ってますって感じ
蓮加:なにそれ…
苦笑いしながら、もう一回蓮加はお腹をさすっていた
蓮加:れんかみたいな元気な子かね
○○:そうでしょ
俺に似られたら困るよ
蓮加:ふふふ、れんかは○○に似てほしいけどね
○○:何でよ
蓮加:性別がどっちでも
れんかに優しくしてほしいから
○○:母と娘の絆って、大きいんじゃないの?
蓮加:さあ?
人によるんじゃない?
○○:それもそうか…
二人で微笑みながら、誕生する命に思いを馳せていた
二人の座る椅子の奥
木で作られたシェルフには、二人のいくつかの記念写真が飾られていた
微笑ましい、小学生の時もその一つ………
○○:かあさん!
とうさんまだおきないの!?
入学式の朝、○○は玄関で叫んでいた
○母:みたい!
もう置いていきましょ!
スーツを着た○○の母は、ヒールを履いて○○の背負った濃紺のランドセルを叩いた
○○:しょうがないなぁ、もう…
自分の記念の日に、父親が寝坊したことに○○はご立腹だ
○母:どうせ後で来るんだから
そんな顔しないの
笑顔よ、笑顔
歩きながら、○○の口角を上げる
○○:えがおっ
復唱した○○に、○○の母は頷き
学校に向かっていった
蓮母:蓮加!
まだ食べ終わってないの!?
一方蓮加は、○○親子が出発したときに
未だにご飯を食べていた
蓮加:だって、まだねむいんだもん…
蓮母:折角の入学式なんだから
遅れちゃだめでしょ!
怒りながら、蓮加の母は蓮加に食べさせるのを諦めて蓮加を着替えさせ始めた
蓮加:ねぇ、ママ
蓮母:何?
不機嫌な声で蓮加に返す
蓮加:○○くん、いるかな?
蓮母:早く行けば、会えるかもね
蓮加:ぶぅ…
ママいじわる
蓮母:蓮加が早くしないからでしょ?
蓮加:じゃあ、次からは早くする!
高らかに宣言した蓮加を、蓮加の母は半ば呆れた目で見ていた
どうせ三日坊主
いや
2日も続かないはずだと
なんとか準備をした蓮加親子は、早足で学校へ向かった
○○:かあさん
カメラはあとでにするの?
門に着いた○○親子
○○の母は、看板には目もくれずに中へ入っていた
○母:混んでると、大変だから
それに、早めにクラスに並んでおいた方がオトクなのよ
○○:かあさん、オトクだいすきだからね
○母:そんな大声で言わないの、
○○の手を軽く引っ張りながら、昇降口へと入っていた母だった
蓮加:おはなきれい〜
校門を入ってすぐの梅の木
その真下に蓮加は釘付けだった
蓮母:蓮加、遅れちゃうから早くしなさい
蓮加:むぅ…
ふくれっ面の蓮加は、トボトボ戻ってきた
蓮母:ほら、さっき○○くんいたわよ?
蓮加:ほんと!?
早く行こっ!
今度は思いっきり走る蓮加
蓮母:こらっ、待ちなさい!
○○の姿という嘘がバレないか、蓮加の母は内心ハラハラしながら蓮加を追った
大体、クラスに皆が集まって
席に座り面持ちはそれぞれに、先生の話を聞いている
○○:れんかちゃん、くるかなぁ
一番にクラスに入った○○は、ぞくぞくと集まるクラスメイトになる子たちを観察していた
そこへ…
蓮加:ここだ!
と甘い、高い声を発して後ろから入ってきた蓮加
○○は笑顔になり
蓮加の母は、まさか本当にいるとは思わず驚き
当の蓮加は、席の位置から○○には気づいていなかった
以前の○○ならば、ここで声を上げていただろう
しかし、母親からみっちりと仕込まれたマナーで声を上げることなく
微笑みながら先生の話に耳を傾ける程度であった
○母:やっぱり、できる子ね
○○の母は小声でつぶやき、○○の父を探しに外へ出た
先生:それじゃあ、体育館に行くので
そのまま廊下に出て〜
優しく言った先生の言葉に、皆が廊下へ一斉に出た
○○:あとで、ごあいさつしなきゃ
と○○は心に決めて、列に並んだ
蓮加:おへんじは…げんきに……
蓮加は、直前に母親から言われたことを繰り返し呟いていた
二人を含んだ1年2組の面々は、式のある体育館へと歩き始めた
それは同時に、○○と蓮加の物語が急速に回り始める始まりでもあった