Le vent du début
漆黒の天井に、少量の光るものが視える
まあ、そんなものを気にしている暇なんてない
?:きた…
隣で筒を眺めた相棒が声を出した
○:右? 左?
?:私、左
○:はいはい、じゃあ右ね…
筒を眺める前に、親指から中指の三本を立てる
深く息を吐いて、片目で筒を眺める
?:どう?大きい?
○:あぁ、とっても
早く楽にさせてやらなきゃね
心中で、カウントする
1 ,2 , 3
人差し指で、突起を押し込む
弾はガラスを割り、頭までまっしぐら
?:うわ、きれいに殺すね〜
相棒のは喉にまっしぐらで
白色の壁が、濃く色付けられていた
○:回収…行くか
早くしてやらないと、苦しいだろうから
周りに人が集まってきていないか筒を覗いて回す
…誰もいないようだ
?:ほーい
てか、ほんとに楽にさせるって考えなんだね
○:悪い?
専用のカバンに愛器をしまう
それをしながら、質問が飛ぶ
?:もう少しさ、楽しまないと
○:そっちみたいに、これに喜びを感じないんだよ
?:もう〜言い方〜
立ち上がって、先に行く
追いつくときに肩を持って飛び乗るように抱きついてくるのは
…やめたほうがいいと思う
○:はぁ…神も残酷よ
俺を殺さないなんて、ね
俺が帰ってきたときには、もうその人たちは人じゃなかった
いや…
正確には人を辞めさせられた、の方が正しい気もする
酷かった…
中学に上がったばかりの俺からしたら
?:そんでそんで??
毎度俺の生い立ちを聞かせろと言い
それに食いついてくる
その目は輝いており、狂気にしか感じない
○:何度聞いても飽きないって顔だな
ビルの階段を降り、射殺した二人の男の元へ急ぐ
?:だって、スリルがあってさ
死体の酷さがあって、すごく好き!
○:サイコパスとかのレベルじゃねぇな
廃ビルには謎に鍵がかかっていた
まあ、開けるのは造作もない
?:はい、オッケー
ピッキングの天才がいるから
○:サンキュー
さて、何を取ればいいんだっけ?
相棒のために聞いてみる
俺は忘れてない
?:えっと、死体は回収班がくるとして
ライター、タバコ、判子、指紋、財布…
しっかりと覚えているようだ
○:よし。それが言えるならオッケーだ
さっさと済ませるぞ
?:了解っ!
遺体は6階
ライターとタバコ、指紋を先に取る
○:げっ、これダン・ヒルじゃんか
やっぱお偉いさん方は違うねぇ
ドロドロの沼から
指と腕を分けて、血だらけの銀の箱を眺める
?:そういうの盗まないでよ?
あんたが居なくなったら、私組めるのいないんだから
なんとも自分勝手な理由
まあ、そこまでこっちも馬鹿ではない
それに…
○:これくらいなら、言ったら貰えるし
箱の血を、スーツかなんかの布で拭う
と言っても、それも血だらけだからあまり意味はない
?:まあ、たしかにね
○:さて、指紋は取ったな
頷く相棒
○:んじゃ、連絡すっから
判子と財布頼む
相棒が静かに階下へ下っていたのを確認し
小型のディスプレイを弄る
○:あ、ボス?目標射殺完了…
頭と腕と足を掛橋がもぎました
回収班に迷惑かけるとお伝え下さい
ボ:わかった…
酒木、掛橋 帰還せよ
以上だ
プツっと切れた
流石は用件人間だ
○:おし、帰るぞ
あと、興味本位で遺体を弄るなって
沙:だって、十人十色だしさ
どうなるのかとか人によって違うじゃん
◯:ほんとサイコパスだな…
嬉々として語る相棒に背筋が冷えつつ廃ビルをあとにして
◯:はぁ…疲れた
早く寝るわ
沙:ん、じゃあ早く帰ろ〜
子供のような相棒と、俺は闇に溶け込んだ漆黒の単車に跨り
夜に溶けた