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おこちゃま系彼女 Ⅵ

世の中のカップルたちがわんさか盛り上がるあの行事がやっと静まった頃


我が家のスイーツ大好き子兎は、チョコレートを溜め込んでおりまして…


◯:ねぇ、そのチョコを僕にくれようとかそういう考えはないの?

理:だって、◯◯ビターチョコしか食べないじゃん

◯:いや、まあ…それはそうだけども

理:じゃあいいじゃん


甘そうな白いチョコを幸せそうに頬張る子兎

その姿を見れば、少しは物申す気持ちは薄れていく


◯:あ、そういえば義理チョコの開封をしないと…
 賞味期限とか知っておかないとだし


僕は思い出して、寝室の傍らの机に積み重なった小さな袋たちをリビングまで持ってきた


理:え…そんなに貰ったの?


僕が貰った数が予想外だったのか、子兎は少し引いている


◯:ゆうて、両手で足りる数じゃんか
 高校の時はこの倍はあったよ?

理:うちの◯◯はモテたからねぇ

◯:全く…食べる身にもなってほしいわ
 ミルクとかホワイトばっかりで…


そういう甘いやつは、昔から子兎にあげている

…ほんとに甘いチョコレートは苦手だ


◯:毎度ながら、ミルクとかならあげますよ
 …あ、梅澤のはあげないけど

理:ケチめ…
 梅のとか絶対美味しいじゃん


とかなんとか憎まれ口を叩く子兎を横目に、僕は開封していく


仕事の同僚がほとんどだけど、古くからの知り合いのもあって…


◯:あ、蓮加ちゃんからだ

理:えっ!?


高そうな箱に入っている小さなチョコレートたちは、とても綺麗で美味しそうだった


◯:えっと…なになに
 甘さは控えめなので、◯◯さんでも食べられますよ…か

理:絶対に美味しいやつじゃん…
 それに…

◯:それに、なに?


子兎が何かを言いかけてやめたので、詰めて聞いてみようとしたが

何でもない、と言って何も言わなかった


◯:んまあ、いいや
 蓮加ちゃんへのお返し考えとかないと

理:…ハンカチとかポーチとかでいいんじゃない?

◯:ありだな
 梅澤には、いつも通りペンか手帳だけど


同僚からの貰った中で、ミルクとかのものを子兎に上納して

僕はビターのを食べる


◯:ん…美味い

理:ビターはただ苦いやつもあるから、あんま好きじゃないんだよね

◯:苦いやつは食べるからくださいな


こういうやり取りを毎年しているわけだけど

子兎からはチョコレート以外のものを毎年もらっている


◯:さてと、今年は何をくれるのかな?


料理を作るまでの少しのスキマ時間

僕は子兎に聞く、少しわざとらしく


理:…ちょっと待ってて


クローゼットの方へと歩いていき、大きめの袋を持ってきた


理:はい、ジンベエザメの抱き枕

◯:きたー!
 抱き枕だぁ


チョコレートとかの食べ物を貰うより、僕はぬいぐるみを貰うほうがよっぽど嬉しい

…できれば、ふわふわモフモフなのだとなおさら良き


理:ほんと、こういうところは子供だよね
 毛布とか大好きだしさ

◯:だから、りりあと一緒にいるのかもね





理:誰が抱き枕じゃ!

◯:いや、りりあが僕を抱き枕にするんじゃんか 
 朝とか起きるの大変なんですけど
  
理:…ごめんなさい






蓮:りりあどんな顔したのかな…
 4年ぶりくらいだからなぁ…先輩にあげるの
 喜んでくれたかなぁ


にひひ、と一人笑う乙女は

未だに心にいる彼のことを考えて体を火照らせるのだった


 

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